まるで美術館!こだわり抜いた空間・モノに心奪われる温泉宿「伊香保温泉 香雲館」#26

更新日:2022年9月23日

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かっきー

江戸の玄関口と言われた宿場町に生まれ育った生粋の江戸っ子。還暦を迎えた今なお、旅とサーフィンをこよなく愛するアクティブシニア。某夕刊紙に勤務していた経歴を持つ。
マイナーな温泉から秘湯まで、気の向くままに温泉へ出かけることが大好きです。温泉の良さはもちろん、分かりやすく温泉や旅館などの良さをお伝えしてまいります。

本企画は、旅館・おもてなしのことを知り尽くす、旅館経営者が「素晴らしい!」と大絶賛するおすすめのお宿をリレー形式でご紹介してまいります。今回は、意匠を凝らし美しくデザインされた館内のなか、古くから知られる名湯と吟味されたお料理を心ゆくまで堪能することができるお宿。訪れる人の心を打つ、洗練された独自のおもてなしに注目です。

第26回は群馬県渋川市の伊香保温泉にある「香雲館」

提供:香雲館

第26回となる今回は、岳温泉「お宿 花かんざし」の二瓶さんがおすすめする、群馬県渋川市の伊香保温泉「香雲館」の経営者にインタビューしました。

香雲館のある伊香保温泉は、群馬県の榛名山(はるなさん)の北東山麓中腹に位置する群馬県を代表する名湯が湧く温泉地。万葉集にも、その名が登場するほど永い歴史があります。

香雲館は、歴史と伝統ある温泉地を象徴するかのような美しい造形の館と、今では希少な「黄金(こがね)の湯」と呼ばれる茶褐色の源泉を掛け流しで堪能できるお宿です。

インタビューのお相手は…香雲館6代目女将「塚越左知子さん」

6代目女将 塚越明子さん

◇編集部(以降 編集部):お忙しいところありがとうございます。よろしくお願いいたします。

◆塚越さん:よろしくお願いいたします。

純和風から西洋風のお部屋まで。美術館のような美しいモノに囲まれて過ごせるお宿

提供:香雲館(高さ8mもの城壁を思わせる石積みの大門)

◇編集部:まずはお宿について、歴史や歩み、こだわりなどをお伺いします。

◆塚越さん:江戸末期の文久年間に初代となる塚越七兵衛が、石段街に御本陣「塚越屋七兵衛」と「香雲館」を創業したのが当館の礎で、今年で創業159年、当代女将となる私で6代目となります。

伊香保の石段街は車が通れる場所がないので、昭和36年頃に石段街から別荘などがあった広い場所に、源泉ごと移動して、道路を整備してお車でお越しいただけるようになっています。

現在の場所に移転した当時は、ホテル伊香保ガーデンという屋号で、芝生の広い庭にはバラ園があり、パターゴルフができたり、プールのあるといったホテルのエッセンスを取り入れた旅館でした。

これを先代女将となる母が、平成6年に創業時にあった香雲館を復活させたのが、現在の当館です。

提供:香雲館(夜には篝火の灯る中庭には能舞台も備わる)

◆塚越さん:リニューアルは、10室すべてを異なるテーマとし、全てのお客様が人目を気にせず湯浴みを楽しめるよう、全室に露天風呂を設けるというコンセプトでデザインされています。

また、左官や畳、表具といった日本の匠の技を残し、将来的に美術品としても評価されるように、本物にとことんこだわり抜きました。

提供:香雲館(2尺の円柱や檜垣(ひがき)張りの廊下)

◆塚越さん:リニューアルして25年ほど経ちますが、本物の匠の技ならではの風格を醸すようになってきたと自負しています。

提供:香雲館(客室の一例:日本の伝統工芸である漆塗りで仕上げた”漆”の間)

◆塚越さん:見た目だけでなく、昨今のコロナ禍においても、漆喰の壁が息をして、抗菌や空気の通りが良くするという実用性にも優れた効果があり、昔の人の知恵はすごいなとつくづく感心します。

提供:香雲館(すべて漆喰が塗られるロビーの壁)

◇編集部:本当に素晴らしいですね。今ではあまり身近で感じられない物ばかりで、そういった昔の人の知恵や技術といった部分も感じながらゆっくりと過ごしてみたいですね。

◆塚越さん:異なる趣のお部屋は、日本の伝統的な建築様式だけでなく、国を超えて現在の生活様式にあった西洋の様式も取り入れた和洋折衷のお部屋もご用意しています。

提供:香雲館(客室の一例:慈照寺銀閣とエドワード朝の様式をイメージした”銀閣”の間)

◆塚越さん:西洋建築を取り入れたお部屋では、ダイニングやツインベッドルームを設え、家具調度品はフランスからイタリアまで買い付けに赴き、船で輸入したものを使用しています。

提供:香雲館(客室の一例:京都の聚楽第(じゅらくだい)とルイ王朝の様式をイメージした”金閣”の間)

◆塚越さん:造形だけでなく、香りや鼓の音色、味覚、肌触りなどに配慮して、ご滞在するお客様の五感で心地良さを感じ、幸せを味わっていただけるよう留意しています。

◇編集部:香雲館をご紹介いただいた花かんざしの二瓶さんからも伺った通り、人を幸せにするということを大切にされているのですね。