柳生の庄で浸る【修善寺温泉】の源泉かけ流し


出典:伊豆市観光協会修善寺支部
2025年12月10日更新

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

庭に風が通り、灯りが淡く落ちる夕刻、柳生の庄で湯気の向こうに修善寺の時間がほどけていきます。
肌になじむ「修善寺温泉 源泉かけ流し」は、湯舟に身を沈めるだけで旅の緊張をほどく不思議な力がある。
すぐ近くで回廊の先に湯が待つ湯回廊 菊屋、石畳に湯の記憶を留める筥湯や独鈷の湯へ、散策の足も自然と軽くなります。

修禅寺・竹林の小径・虹の郷へ。周辺観光で深まる旅


出典:伊豆市観光協会修善寺支部

修禅寺の伽藍に朝の光が差すと、杉木立の香りと土の匂いが混じり合い、胸の奥がすっと静まります。境内に重なる朱と苔の緑、流れる読経のような水音が、湯上がりの体をやさしく包み直してくれます。

桂川に沿って歩けば、竹林の小径で風が青い葉を揺らし、足音まで竹に吸い込まれるように柔らかく響きます。石畳に落ちる笹の影は時刻ごとに形を変え、ファインダーを覗けば自然と構図が整うのがうれしいところです。

少し足を延ばして修善寺虹の郷に向かえば、季節の花壇や英国風の街並みと山並みが重なり、色彩の層が何枚も増えていきます。園内を抜ける風はさらりとしていて、湯の余韻を保ったまま歩ける軽やかさが続きます。

柳生の庄で浸る「修善寺温泉 源泉かけ流し」

出典:伊豆市観光協会修善寺支部

門をくぐると苔の緑と土塀の陰影が視界を落ち着かせ、小さな砂利の音とともに呼吸がゆっくりに戻っていきます。庭に面した湯処では修善寺温泉の源泉かけ流しが穏やかに満ち、湯面に映る空の色や枝葉の影が刻々と表情を変えます。

湯に身をあずけると、なめらかな湯ざわりが肌をほどき、張りつめた肩の力がふっと抜けていくのが分かります。立ち上る湯気の向こうで揺れる行灯の灯りが、時間の歩幅を半歩ずつ緩めてくれるようで、思わず目を細めます。

客室から湯へ、湯から庭へと続く動線は迷いがなく、履物の音まで静けさに溶けていく心地よさがあります。浴後の肌はさらりとして、外の空気に触れると一層やさしくなじみ、袖口の感触まで柔らかく感じます。

湯回廊 菊屋で感じる回廊の時間と湯の余白

出典:伊豆市観光協会修善寺支部

回廊の木目を踏むたびにわずかな温かさが足裏へ伝わり、湯へ近づくにつれて胸の内に期待の波が静かに広がります。名のとおり館内を結ぶ回廊はゆるやかに伸び、角を曲がるごとに庭や水の景色が少しずつ顔を変えます。

湯船では源泉かけ流しの温泉が惜しみなく注がれ、湯のやわらかな香りが鼻先をかすめ、頬に湯気が心地よく触れます。肩まで沈めれば呼吸が深くなり、胸の奥の緊張がほどけ、鼓動がゆるやかなテンポに落ち着いていきます。

湯あがりは川風が通る場所で一息つくのがうれしく、指先まで涼しさが巡るのを確かめながら目を閉じたくなります。館内の明かりは柔らかく、夜の回廊は足音さえ控えめに響き、影の輪郭が穏やかに滲んで見えます。

外湯散歩 筥湯と独鈷の湯で温泉情緒を愛でる


出典:伊豆市観光協会修善寺支部

修善寺温泉の中心で湯気の息遣いを感じるなら、公衆浴場の筥湯へ向かうのが近道です。木の香りがする素朴な佇まいで、湯に浸かった後の肩の軽さと頬の紅が心地よく続きます。

桂川沿いに下ると、河原に佇む独鈷の湯が目に入り、修善寺の歴史を静かに語る存在として旅情を深めます。川面を渡る風と水音が重なり、橋の欄干に寄りかかるだけでも、流れのリズムが呼吸を整えてくれます。

石畳の道は歩幅を合わせやすく、湯上がり散歩でも負担が少ないやさしい距離感です。途中で橋の上から川の流れや緑の映り込みを眺めれば、写真の一枚が自然と決まります。

修善寺温泉の源泉かけ流し温泉の概要


出典:伊豆市観光協会修善寺支部

修善寺温泉は同じ湯脈をまち全体で分け合い、湯口から新鮮な湯が静かに注がれ続けています。肌あたりはやわらかく、湯上がりはさっぱりとした軽さが残り、散策へ出る足も自然と軽くなります。

数字の裏にあるのは、無色透明の湯が持つやさしいぬくもりと、ふっと肩が落ちる瞬間の確かさです。季節や時間帯で体感の温度差が変わるのも、山と川に寄り添う温泉地ならではの自然な表情です。

泉質は単純温泉(弱アルカリ性)で、効能は神経痛・筋肉痛・関節痛・冷え性・疲労回復です。源泉温度は概ね50〜60℃台で、pH値は約8.5〜8.6で、湧出量は豊富な湧出量の弘法大師ゆかりの伊豆最古の温泉地に湧く、無色透明でなめらかな湯ざわりが特徴の温泉です。

旅の余韻


出典:伊豆市観光協会修善寺支部

湯のやわらかさに身を委ね、回廊や庭を歩き、川風に当たるだけで、修善寺の時間は不思議と自分の速度に寄り添ってくれます。柳生の庄と湯回廊 菊屋、それぞれの余白を残し、もう一泊したくなる気持ちを静かに育てます。

筥湯や独鈷の湯、そして修禅寺や竹林の小径へと歩を進めれば、旅の記憶に水と緑の層が増えていきます。次に訪れる季節の色を想像しながら、今日の湯の温度だけを覚えて帰る、そんな終わり方も悪くありません。