【鉄輪温泉】源泉かけ流し|レトロな街並みを楽しむ


出典:鉄輪ツーリズム
2026年1月10日更新

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

大分県別府市北部、別府八湯のひとつに数えられる鉄輪温泉は、町そのものが地熱とともに息づく温泉地です。

路地に立ちのぼる湯けむり、釜の音、硫黄を含んだ空気。源泉かけ流しの湯が日常に溶け込み、歩くだけで体の感覚がゆっくり整っていきます。

地獄めぐりや地獄蒸しといった鉄輪ならではの風景と文化が湯の時間と自然につながり、旅の始まりに静かな深呼吸をもたらしてくれます。

鉄輪温泉 そこは湯けむりが日常に溶け込む町


出典:鉄輪ツーリズム

鉄輪温泉は大分県別府市の北東部に広がる別府八湯のひとつで、町全体が湯の気配に包まれています。

路地に入ると、家々の間から立ちのぼる湯けむりが視界をやわらかく覆い、温泉が暮らしの延長にあることを実感します。

朝は空気が澄み、湯けむりが低く静かに漂い、夕方には灯りと混ざり合って表情を変える。
その移ろいを眺めているだけで、自然と歩調がゆるみ、体の緊張がほどけていきます。

観光地でありながら生活感が色濃く残り、洗濯物の揺れや釜の音が風景に溶け込む。
歩くほどに土地の呼吸が伝わってくる温泉町です。

歩いて巡る 地獄めぐりと鉄輪の朝

出典:別府市公式観光情報Webサイト編集部

鉄輪温泉の朝は湯けむりの層が低く町を包み、歩き出すだけで地熱の存在を感じさせます。

宿を出て路地を進むと釜の音や蒸気の吐息が一定のリズムを刻み、目覚めきらない感覚を静かに整えてくれる。
その流れのまま向かいたいのが、徒歩圏に点在する別府地獄めぐりです。

最初に立ち寄るなら、湯色の鮮やかさが印象に残る海地獄。
澄んだ青は視線を引き寄せ、湯が「沸いている」事実を静かに伝えます。

少し歩いて鬼石坊主地獄へ行けば、泥が呼吸するように盛り上がり、地表の下で続く営みを想像させる。

かまど地獄では温度や成分の違いを間近に感じ、地獄が単一ではないことを体で理解できます。

朝の時間帯は人も少なく、硫黄の香りや蒸気の揺れが、より濃く立ち上がります。

鉄輪から歩いて巡るからこそ、地獄は観光の点ではなく線としてつながる。
移動の合間に湯けむりの町並みが挟まり、地獄と温泉が地続きであることが腑に落ちるのです。

地獄を見て、匂いを吸い込み、音に耳を澄ませたあとに宿へ戻るとこれから浸かる湯の温もりが一段深く感じられる。
歩く速度で確かめる地獄めぐりは鉄輪の朝に最もよく馴染む過ごし方です。

鉄輪温泉の宿時間の過ごし方

出典:山荘 神和苑

鉄輪温泉の宿時間は、湯との距離感で印象が決まります。

たとえば「山荘 神和苑」は敷地に点在する湯処と庭の静けさが際立ち、湯へ向かうまでの動線そのものが気持ちを整えてくれます。

「おにやまホテル」では地獄に近い立地を生かし、外気と湯温のコントラストを楽しむ露天が心地よいです。

一方、「湯治柳屋」 のような昔ながらの湯治宿では、何度も浸かっては休む素朴なリズムが自然に身につきます。

規模や設えは異なっても共通するのは、客室から湯処までが近く、思い立ったときにすぐ湯へ向かえること。

夜は湯けむりに灯りが溶け、朝は静かな空気が戻る。
鉄輪温泉の宿は豪華さよりも、湯と向き合う余白を大切にする滞在を用意しています。

鉄輪温泉で味わう、地熱と食の時間


出典:鉄輪ツーリズム

鉄輪温泉を歩いていると、湯けむりとともに立ちのぼる香りに足が止まります。

地獄蒸しは、この町に息づく地熱をそのまま台所へ引き込んだ鉄輪ならではの食文化です。
湯治場として発展してきた背景から、蒸し釜は特別な設備ではなく、暮らしの延長として受け継がれてきました。

蒸し釜に食材を入れ、蓋を閉じると、あとは待つだけ。高温の蒸気が一気に包み込み、野菜や魚介の輪郭を崩さず、旨みだけを引き出していきます。
味付けは最小限でも、素材の甘みや香りがはっきりと立ち上がるのが印象的です。
湯と同じく、手を加えすぎないことが、地獄蒸しの良さを引き出します。

湯に浸かり、体がゆるんだあとに味わう地獄蒸しは胃袋まで温泉に包まれるような感覚があります。
湯けむりの町で、地熱を「食べる」という体験。
鉄輪温泉では、湯と食が切り離されることなく、同じ土地の力として静かにつながっています。

鉄輪温泉 源泉かけ流しの概要

出典:鉄輪ツーリズム

鉄輪温泉は、別府八湯のなかでも屈指の湧出量を誇り、「湯が湧き続ける土地」であることを日常の風景として感じられる温泉地です。

地下から噴き上がる蒸気は町のあちこちで利用され、源泉は宿や共同湯、地獄蒸し釜へと分かれ、循環することなく使われ続けています。そのため鉄輪では、源泉かけ流しという提供形態が特別ではなく、ごく自然な前提として存在しています。

泉質は主にナトリウム-塩化物泉で、塩分を含む湯は体を包み込むように温め、湯上がり後も熱が逃げにくいのが特徴です。
湯口から注がれる温度は高めですが、かけ流しによって湯船の中で自然に落ち着き、外気と混ざり合うことで、角のない浴感へと変わっていきます。硫黄の香りや湯の色合いも源泉ごとに異なり、宿や湯処によって微妙な個性が生まれます。

鉄輪温泉の源泉かけ流しの魅力は、「管理された湯」ではなく、「湧いた湯を受け止める」姿勢にあります。加水や循環に頼らず、湯の力をそのまま使うからこそ、日による温度差や香りの揺らぎも含めて温泉の表情になります。
湯に浸かるたび、地熱の存在を肌で確かめる。鉄輪温泉の源泉かけ流しは、火山と共に生きる町の時間そのものです。

旅の余韻

出典:鉄輪ツーリズム

鉄輪温泉で過ごした時間を思い返すと、強く残るのは湯の熱そのものより、町を満たしていた気配です。

朝の低い湯けむり、地獄めぐりで感じた地熱の息づかい、そして源泉かけ流しの湯に身を沈めたときの安堵。

歩いて、見て、浸かる。その繰り返しが、自然と旅の速度を整えてくれました。

帰り道、視界から湯けむりは消えても、体の奥に残る温もりはしばらく続きます。

鉄輪温泉の旅は、終わったあとにこそ、静かな余韻として日常に溶け込んでいきます。