四季の気配に包まれて|【旭岳温泉】源泉かけ流しの湯時間
この記事を書いた人
湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
北海道のほぼ中央、大雪山連峰の主峰・旭岳の山麓に位置する旭岳温泉は、標高およそ1,100メートルの高所に湧く温泉地です。
東川町の市街地から山へ分け入るように進むと、次第に空気が澄み、景色の輪郭が静かに変わっていきます。その行き止まりにあるのが、登山口と温泉宿が寄り添うこの場所です。
旭岳ロープウェイや山上散策の拠点として知られる一方で、旭岳温泉の本質は山の時間に身を委ねることにあります。
観光地として賑わうというより、自然の気配を間近に感じながら源泉かけ流しの湯で身体を整える。
その静かな流れが、この地で過ごす旅の基調となっていきます。
目次
旭岳ロープウェイと山上散策—姿見の池へ、五感を開く時間
大雪山連峰の主峰・旭岳の麓から伸びる旭岳ロープウェイに乗り込むと、視界は一気に原生の世界へと引き上げられます。
樹林帯を抜け、標高を上げるにつれて空気の温度や匂いが変わり、身体の感覚が静かに切り替わっていくのを覚えます。
山麓と山上、そのわずかな移動のあいだに、日常の輪郭が少しずつ遠のいていきます。
山上駅から続く散策路を辿れば、やがて現れるのが姿見の池です。風のない日には、池の水面に旭岳の姿が映り込み、周囲の音が吸い込まれたような静けさが広がります。
足元に目を向ければ高山植物が季節ごとに小さな彩りを添え、視線を上げれば噴気を上げる山肌が大雪山の鼓動を伝えてきます。
急ぐ必要はありません。歩みを緩め、立ち止まり、深く息を吸い込む。その一つひとつの動作が、自然と五感を開いてくれます。
旭岳ロープウェイと山上散策は、山頂を目指すための手段というよりも自然の中に身を置き、自分の感覚を取り戻すための時間。
姿見の池へと続く道は旅の目的地であると同時に、その過程そのものが記憶に残る体験となるでしょう。
ラビスタ大雪山で叶える、旭岳温泉 源泉かけ流しの山麓ステイ

出典:ラビスタ大雪山
旭岳の山麓、深い森に抱かれるように佇むラビスタ大雪山は山の時間に身を委ねるための静かな拠点です。
ロープウェイで高所の景色を味わったあと、あるいは早朝の澄んだ空気に触れたあと、再びこの場所へ戻ると山の余韻が自然と身体に戻ってくるのを感じます。
館内で楽しめる旭岳温泉は源泉かけ流し。
外気と一体になる露天に身を沈めると、湯のぬくもりとともに山の匂いや風の気配がゆっくりと重なっていきます。
刺激を主張する湯ではなく、長く浸かっていられるやわらかな感触が歩き疲れた身体を静かに整えてくれます。
山麓に泊まるという選択は景色を“見る”旅から、自然のリズムに“同調する”滞在へと感覚を切り替えてくれます。
ラビスタ大雪山で過ごす一夜は旭岳の雄大さを外から眺めるのではなく、その懐に身を置く時間。源泉かけ流しの湯とともに過ごす山の夜が旅の記憶をより深く、穏やかなものへと導いてくれるでしょう。
湯元 湧駒荘で味わう 旭岳温泉の源泉かけ流し

出典:湯元 湧駒荘
湯元 湧駒荘の浴場には、源泉かけ流しの恵みを生かした湯が満ちています。内湯でじんわり温まり露天に出ると、外気との対比で体の輪郭がくっきりしていきます。
湯面から立つ香りはやわらかく、肩の力がほどけて視界が少し広がるように感じました。時間帯を分けて入ると湯の表情が変わり、滞在のリズムが自然と整っていきます。
食事前のひと湯と就寝前のひと湯、そのメリハリが余韻の長さを確かなものにします。旭岳温泉の力強さを宿のしつらえが受け止め、心身の芯まで温まる体験へ導いてくれます。
旭岳温泉の四季。山の表情とともに湯に浸かる時間
大雪山の主峰・旭岳の山麓に湧く旭岳温泉は、季節ごとに表情を変える山の気配をそのまま湯の時間に映し出す温泉地です。
春は残雪と新緑が交差し、山が目覚める気配を感じさせます。
夏には高山植物が咲き、涼やかな空気の中で散策と温泉を楽しめます。
秋は山全体が色づき、湯に浸かりながら眺める紅葉が印象に残ります。
冬は深い雪に包まれ、音の消えた世界で湯と向き合う時間が訪れます。
旭岳温泉の四季は、景色だけでなく湯に浸かる感覚までも変えてくれます。どの季節に訪れても、山と温泉が寄り添う静かな時間が、旅の記憶に残っていくでしょう。
旭岳温泉の源泉かけ流し温泉の概要

出典:湯元 湧駒荘
旭岳温泉は大雪山国立公園の山麓、東川町に抱かれた高原の湯処です。清冽な外気と火山の熱が交わり、湯あがりの冴えが印象を一段くっきりさせます。
宿ごとに引き込む湯の趣があり、かけ流し主体の湯使いが息づいています。標高による冷えが温もりを引き立て、しばらく歩いても体の芯が心地よく温かいままです。
泉質は酸性・含硫黄(硫化水素型)−カルシウム・ナトリウム−硫酸塩・塩化物泉。
効能は慢性皮膚病・湿疹・にきび・アトピー性皮膚炎・切り傷・やけど・冷え性・神経痛・関節痛・筋肉痛・高血圧・糖尿病・動脈硬化・慢性婦人病に対する浴用適応症です。
源泉温度はおおむね40〜60℃台の高温で、pH値はおおむねpH2.1〜2.7の強酸性。
湧出量は毎分数十〜数百リットル規模の硫黄の香りと白濁、強酸性による肌の引き締め感と高い保温性、源泉かけ流し主体の湯使い、火山性温泉特有の湯色変化と金属の黒変を伴う硫化水素型の個性が特徴の温泉です。
旅の余韻

湯から上がり、外の空気に触れると旭岳の山麓には静かな気配が満ちています。
風の匂いや、遠くに感じる雪や草の気配が、身体の内側へゆっくりと戻ってきます。
旭岳温泉で過ごした時間は強く印象を刻むというよりも、呼吸の深さや歩幅の変化としてあとから現れます。
山の景色と湯のぬくもりが重なり合い、心の奥に静かに残っていく感覚です。
日常へ戻ったあとも、ふとした瞬間に思い出されるのはあの山の静けさかもしれません。
旭岳の湯で整えた感覚がまた歩き出すための余白として、そっと寄り添い続けてくれるでしょう。





