【白浜温泉】 源泉かけ流し|万葉の時代から受け継がれる湯


白浜温泉旅館協同組合
2025年12月22日更新

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

崎の湯と牟婁の湯で巡る白浜温泉 源泉かけ流し——水平線がほどける朝、海霧の向こうから湯けむりが立ちのぼります。石段をくだれば潮の香り、肌に海風が触れた次の瞬間、湯の温もりが体の芯に届くのを感じます。

外湯文化の息づく白浜では、海際の「崎の湯」とまちなかの「牟婁の湯」を歩いてつなぐだけで、湯の表情がくっきり変わります。

塩のやわらかな膜に包まれ、湯上がりの汗がすっと引くのも心地いい。朝の光の角度、波の音、湯口から落ちる水音までが旅のリズムになっていきます。そんな一歩目にふさわしい源泉かけ流しの町歩きへ。

万葉の時代から湯気を上げ続ける「崎の湯

出典:南紀白浜観光協会

荒々しい岩場に寄せる波音と、湯船から立ちのぼる白い湯気。その対比こそが、崎の湯の原風景です。

万葉集にも詠まれた白浜の湯は、千年以上前から人々の身体と心を温め続けてきました。
崎の湯はその象徴ともいえる存在で、海と湯がこれほど近く、自然と一体になった温泉は他に多くありません。

湯に身を沈めると、太平洋の潮騒が間近に響き、風が肌をなで、視界いっぱいに水平線が広がります。

この場所では、温泉に「入る」という行為そのものが、古代から続く営みの延長線にあるように感じられます。

時代が変わり、旅の形が変わっても、湯のぬくもりは変わらない。
崎の湯は、白浜温泉が“万葉の時代から受け継がれてきた湯”であることを、今も静かに語り続けています。

共同湯「牟婁の湯」で味わう、源泉かけ流しの素直な熱

出典:南紀白浜観光協会

扉を開けると、湯気の向こうに凛とした静けさが立ち上がります。湯口の近くに腰をかければ、湧いたばかりの源泉かけ流しの熱がまっすぐ届くのがわかります。

浴槽ごとに肌触りや体感温度の違いがあり、好みの居場所が自然と見つかります。湯の息づかいに耳を澄ますと、余計な音が遠のくようです。

長湯はせず、短い出入りを繰り返すと体が軽くまとまっていきます。湯あがりの肌はつるりと整い、衣服を通る風が少し甘く感じられます。

ベンチで一息つくと、足先までぽかぽかが巡っているのに気づきます。そんな素直な熱が、旅の基準をひとつ上げてくれる気がします。

源泉かけ流し温泉宿ナビ|海舟・湯崎館・三楽荘・白良荘の個性


出典:南紀白浜観光協会

白浜の宿は海辺の景色を手に入れた佇まいが多く、湯船から水平線を望む時間が待っています。大浴場や露天に加え、プライベートに浸れる湯処もそろい、滞在の組み立てがしやすいのが魅力です。

海舟は海と湯の一体感に浸れる演出が光り、移ろう空の色が湯面に映ります。客室でのくつろぎと湯めぐりの動線を両立させ、時間の使い方に余裕が生まれます。

湯崎館は穏やかな空気が流れ、外湯との行き来も思いのままです。素朴な温もりに肩の力が抜け、旅の基点にちょうどいい居心地です。

三楽荘は白良浜へ伸びる眺めが心地よく、湯あがりの散歩が楽しくなります。白良荘は浜辺との距離が近く、窓の向こうの海が一日の背景になります。

いずれも食の満足度が高く、海の恵みを中心にした献立が旅の締めくくりを彩ります。どの宿を選んでも、白浜温泉ならではのやわらかな湯の余韻が、眠りにつくまで続きます。

白浜温泉の源泉かけ流し温泉の概要


出典:南紀白浜観光協会

白浜の湯は、海と陸の境い目で呼吸するように湧き続けています。湯の個性を知ってから巡ると、同じ一日でも手触りが変わるのが面白いところです。

はしご湯の計画を立てる前に、泉質や湯温の輪郭だけは頭に入れておくと安心です。無理のない入り方で、いい余韻を長く持ち帰れます。

泉質はナトリウム-塩化物泉を中心とした塩類泉(所により炭酸水素塩泉を含む)で、効能は神経痛・筋肉痛・関節痛・冷え性・きりきず・やけど・慢性皮膚病・慢性消化器病などです。

源泉温度は高温(高温泉)で、pH値は中性〜弱アルカリ性で、湧出量は豊富な湧出量の海に臨む露天と歴史ある外湯文化、塩類成分による高い保温・保湿性が特徴の温泉です。

白良浜・円月島・三段壁へ、湯上がりに出会う名景


出典:白浜温泉旅館協同組合

白良浜の白砂は、素足で歩くとさらさらと音を立てて季節を教えてくれます。湯上がりの肌に海風が触れると、体温がすっと整い、景色の色が一段澄んで見えます。

夕方は円月島へ。丸い穴に沈む太陽が海面を金色に染め、波の拍子がゆるやかな拍手のように耳に残ります。

日が落ちたら三段壁へ移り、荒々しい岩肌と砕ける飛沫のコントラストに息をのむ時間です。潮の匂いが濃くなり、胸の奥に残った湯のぬくみと混ざり合います。

歩いて見上げる空は思いのほか近く、星の気配が早足でやってきます。写真では拾いきれない温度や匂いが、旅の最後にそっと刻まれます。

旅の余韻


出典:白浜温泉旅館協同組合

白浜の源泉かけ流しは、朝の一番風呂から夜の潮騒まで一筆書きのようにつながります。湯の熱と海風の冷たさが交互に巡り、体にやさしいリズムを残してくれます。

外湯では素直な熱に心がほどけ、宿ではそれぞれの個性が夜を満たします。最後に白砂の上で深呼吸すれば、次の旅の種がまたひとつ芽を出します。