【三朝温泉】 源泉かけ流し|「河原風呂」で湯に出会う
この記事を書いた人
湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
三朝温泉 源泉かけ流しはまず河原風呂へ。湯けむりが川霧と重なる朝、石の縁に腰をかけると、肌にやわらかな熱がじわりと広がります。
音はただ水音だけ、肩の力がするすると抜けていくようでした。
三朝の湯は、湯船に満ちてはこぼれ、また満ちる、その循環の気配に心が静まります。
最初の一湯を野趣あふれる河原風呂で受け止め、共同湯や老舗の宿へ歩を進めれば、旅の輪郭がはっきりしてくるはずです。
目次
山の気配に背筋が伸びる。三徳山三佛寺投入堂へ

三徳山の参道に一歩入ると、土の匂いと杉の葉が擦れる音が耳に届きます。岩肌に抱かれる投入堂を仰ぐまでの道のりは、呼吸のリズムさえ静かに整えてくれます。
受付時間や注意事項をあらかじめ確かめ、滑りにくい靴と軍手など歩きやすい装備で向かうと安心です。天候や路面の状態で所要時間が変わる日もあるので、無理はせず引き返す判断も大切です。
鐘の音が森に溶ける頃、胸の内側まで澄んでいくような感覚が芽生えました。戻ったら湯の町へ、足元の泥を流して体温を取り戻すひとときが待っています。
まずは川辺へ。三朝温泉「河原風呂」で湯に出会う

三徳川沿いに据えられた河原風呂は、川面の反射がきらきらと揺れ、自然の舞台に湯船が溶け込みます。流れの音と湯の音が重なると、まるで即興のBGMのようで心がほどけていきます。
朝夕のやわらかな光の時間帯は、人も少なく景色と温度が素直に味わえます。風がふっと背中を撫でる瞬間、立ちのぼる湯気にかすかな鉱物の匂いを感じました。
タオルを湯に浸さない、撮影は周囲への配慮を忘れないなど基本のマナーを守れば心地よさは続きます。湯上がりは川風でクールダウンし、火照った頬を撫でる空気までやわらかでした。
老舗の風格と一湯の力「旅館大橋」の源泉かけ流し

旅館大橋では、湯が静かに満ちて縁からあふれ、湯面のゆらぎが心を落ち着かせます。湯口に近い熱の層と離れた場所の穏やかさを行き来しながら、好みの温度を探す時間が楽しいものです。
石や木の素材感がやわらかな陰影を生み、湯気に包まれるたび体の輪郭がほどけていきます。湯上がりの一杯の水や、廊下に漂う木の香りまでが滞在の記憶を深くしました。
夜更けにもう一度湯へ向かえば、静寂の中で芯から温まり、何もしない贅沢と向き合えます。その余白の時間が、旅の体験をゆっくり定着させてくれるのだと感じました。
庭園に湯が巡る「依山楼岩崎」で浸る時間

出典:依山楼岩崎
依山楼岩崎は、庭と湯処が呼応するつくりで、湯けむり越しに緑が揺れる景色が広がります。複数の湯船を回遊するうちに、外気と湯温のリズムが心地よく整い、肌あたりの新鮮さが際立ちます。
岩や木々の表情が水面に映り、湯の香りに季節の風が重なる瞬間がたまりません。朝は鳥の声、夜は灯りの反射が水面に模様を描き、同じ湯でも時間ごとに表情が変わります。
館内の導線はわかりやすく、寄り道をするように湯を重ねれば、いつのまにか肩の力が抜けていました。湯上がりの休み処で深呼吸をひとつ、体の芯に残る温もりを確かめたくなります。
三朝温泉の源泉かけ流し温泉の概要

三朝温泉の湯は、湯船に満ちた分だけ新しい湯が注がれる源泉かけ流しが基本です。湯気に含まれる成分を呼吸とともに取り込む楽しみ方が根づき、湯治の時間がいまも息づいています。
手湯や足湯、気軽に使える共同浴場が町なかに点在し、温度や景色の違いを散歩のように味わえます。入浴前後の水分補給や長湯を避ける配慮を心に置けば、旅の体調は安定し湯の表情にも意識が届きます。
泉質は放射能泉(ラドン泉)で、効能は神経痛・関節痛・慢性消化器病・高血圧・糖尿病・痛風・慢性皮膚病・慢性婦人病への適応症です。源泉温度は高温域(概ね40〜50℃前後)で、pH値は中性域(約6.7〜7.0)で、湧出量は複数源泉合計で豊富な自噴量の世界屈指のラドン含有量とホルミシス効果が特徴の温泉です。
旅の余韻

川辺の一湯から始めた三朝の旅は、湯が日常の速度をそっと遅くしてくれました。河原風呂で肩の力を抜き、老舗や庭園の湯で奥行きを重ねるほど、体も心もほどけていきます。
山の気配と湯の温度が混ざり合う余韻は長く続き、帰路の足取りまでやわらかでした。次に訪れる季節の匂いを想像しながら、もう一度あの湯気を吸い込みたくなります。



