金の湯と銀の湯めぐり 【有馬温泉】源泉かけ流し入門


出典:有馬温泉観光協会
2025年12月18日更新

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

街道の石畳に朝日がさして、金泉の香りがふっと鼻をくすぐる瞬間があります。
そんな町にあるのが「金の湯」と「銀の湯」。赤褐色の金泉と無色透明の銀泉、ふたつの個性に触れると、有馬温泉 源泉かけ流しの奥行きがぐっと近づきます。
湯上がりに湯本坂を歩き、温泉寺の静けさに息を整える。太閤の湯殿館で古の湯の記憶に耳を澄ませば、次の一湯が待ち遠しくなるはずです。

歩いて出会う有馬の見どころ 湯本坂・温泉寺・太閤の湯殿館

出典:フォトAC

湯本坂は石畳の坂道が続く温泉街の背骨のような通りで、木格子の家並みと湯けむりが混じり合います。朝の空気に混ざる金泉の鉄の香りがふっと鼻をくすぐり、歩幅が自然とゆっくりになります。

坂の途中から小路に入れば温泉寺へ、境内の静けさに肩の力が抜けるひとときです。太閤の湯殿館では湯井跡や出土品に触れ、有馬の湯が古くから大切にされてきたことを実感します。

さらに足をのばして鼓ヶ滝公園へ、水音が涼しい外気浴のような休憩になります。天候がよければ六甲有馬ロープウェーで山上へ、眺望の抜け感に思わず深呼吸です。

どれも温泉街から歩いて巡れる距離感で、湯上がりの散策にちょうどよいリズムです。雰囲気や眺めの良さを評価する声も多く、写真に収めたくなる場面が次々に現れます。

金の湯で金泉を体感 有馬温泉の源泉かけ流し入門


出典:有馬温泉観光協会

有馬温泉の中心に湯の色が印象的な外湯「金の湯」があります。赤褐色の金泉は塩分と鉄分を含み、湯面から立ちのぼる香りが旅心を一気に温泉モードに切り替えます。

浴室はシンプルで入りやすく、温度の異なる湯に交互に浸かると体がゆっくり目覚めていきます。肌に当たる感触は重たく、上がってからもしっとりとした保温感が長く続きます。

館内の案内に従えば動線はわかりやすく、はじめてでも迷いにくいのがうれしいところです。湯上がりは湯本坂方面へ歩けば、石畳の余韻をそのまま散歩に連れていけます。

有馬温泉 源泉かけ流しに触れる入門にぴったりな一湯で、短時間でも満足感が高いと感じました。タオルに残る金泉の香りを胸いっぱいに吸い込み、次の一湯へ向かいたくなります。

銀水荘 兆楽の湯どころ 有馬温泉の金泉と銀泉を宿で


出典:銀水荘 兆楽

宿でじっくり湯に向き合うなら「銀水荘 兆楽」が心強い拠点です。広さの異なる湯船や露天、プライベート感のある湯の設定があり、滞在の時間割に合わせて選べます。

湯上がりに腰を落ち着けられるラウンジなど館内の居場所も整い、余白の時間をそのまま抱きしめられます。アクセスや入浴の案内はわかりやすく、はじめての宿泊でも流れがすっと体に馴染みます。

宿泊や入浴の案内が丁寧で、旅程に合わせた組み立てがしやすいのも安心です。有馬温泉の源泉にこだわる人にも響く湯処で、夜は湯気が灯りに溶けていくようでした。

ふと耳を澄ますと、湯が縁から静かにこぼれる音が心地よい子守歌になります。そんな夜は早起きして朝湯へ、露天の空気が肌に冷たく当たり湯のぬくもりが一層濃く感じられます。

季節で選ぶ有馬温泉 源泉かけ流しの楽しみ方


出典:有馬温泉観光協会

有馬は四季の移ろいがはっきりしていて、温泉の心地よさも季節で少しずつ表情を変えます。春は山裾に花色が差し、やわらかな風にのって湯の香りが町を包みます。

新緑の頃は六甲の稜線がくっきりして外気浴が気持ちよく、湯から上がっても足取りが軽くなります。秋は紅葉が石畳の影を濃くし、金泉の色と相まってまるで絵の具を溶いたような景色です。

冬は澄んだ空気と湯けむりのコントラストが冴え、湯あがりの頬に夜風が心地よく触れます。時間帯は朝の静けさか夕暮れの柔らかさか、どちらを選ぶかで旅の印象はがらりと変わります。

有馬温泉 源泉かけ流しを味わう日は、混み合う時間を少し外すだけで落ち着きが戻ってきます。そんな小さな工夫が、記憶に残る一湯の濃度をそっと上げてくれるのだと思います。

有馬温泉の源泉かけ流し温泉の概要

出典:銀水荘 兆楽

有馬温泉の湯は大きく金泉と銀泉に分かれ、見た目も体感もはっきり異なります。金泉は赤褐色で塩分と鉄分を多く含み、包み込まれるような温まりが続きます。

銀泉は無色透明の炭酸系や放射能系の湯で、さらりとした肌ざわりと軽い浴感が魅力です。源泉かけ流しは湧いた湯を循環ろ過に頼らず浴槽へ供給し、湯が溢れて新しい湯に入れ替わる運用を指します。

表記には加温や加水の有無などが示されるため、掲示を見て体調や好みに合う湯を選ぶのが安心です。メタルアクセサリーの変色や長湯ののぼせに注意し、掛け湯やこまめな休憩を挟むと気持ちよく過ごせます。

飲泉場が設けられている箇所もあり、香りや味を確かめると湯の個性が一段と立ち上がります。旅の一幕として、有馬の湯の多様性と向き合う時間を静かに確保したいものです。

泉質は金泉(含鉄-ナトリウム-塩化物強塩泉/含鉄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉)と銀泉(炭酸泉/単純放射能泉〈ラドン泉〉)の二系統で、効能は保温・保湿効果、創傷・やけど・慢性皮膚病、筋肉痛・関節痛・神経痛・冷え性、疲労回復、高血圧・痛風・糖尿病・自律神経不安定症・貧血 への適応症です。源泉温度は概ね約20〜98℃のレンジで、pH値は弱酸性〜中性の範囲(概ねpH5.5〜7.3)で、湧出量は泉源ごとに毎分数L〜数十L規模の日本三名泉・日本三古泉に数えられる古湯、非火山性の深層由来泉、赤褐色で塩分と鉄分が濃い金泉と無色透明の炭酸泉・単純放射能泉から成る多泉質、強い温まりと発汗持続、炭酸泉の飲泉場の存在が特徴の温泉です。

旅の締めくくり


出典:銀水荘 兆楽

金の湯と銀の湯を軸に町を歩くと、有馬温泉 源泉かけ流しの魅力は自然と体に染み込んできます。湯本坂や温泉寺、太閤の湯殿館で歴史の層に触れ、湯けむりの匂いを胸にしまう時間が好きです。

宿に腰を据えて湯に向き合う夜も、朝靄の中で軽く浸かる一番湯も、どちらも旅の記憶をやわらかく照らします。混み合う時間を少し外し、体調に合わせて湯を選ぶだけで、旅はもっと心地よくなります。

次の季節にはどんな湯の景色が待つのか。そんな想像が、またこの町へ向かう背中をそっと押してくれるのだと思います。