【城崎温泉】 源泉かけ流し |外湯めぐりのすすめ
この記事を書いた人
湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
「城崎温泉 源泉かけ流し 西村屋本館と外湯めぐり」という旅のテーマは、湯けむりの向こうに自分の歩幅を取り戻す時間でした。
柳が揺れる大谿川沿いを浴衣でそぞろ歩き、西村屋本館を拠点に七つの外湯へ。
さとの湯で肩の力をほどき、御所の湯や一の湯で景観と湯の温もりを重ねる。湯上がりの肌に夜風がやさしく、提灯の灯りに誘われて、思わずもう一往復したくなります。
目次
鴻の湯から温泉寺・ロープウェイへ—見どころをつなぐ朝の寄り道

出典:城崎温泉ロープウェイ
朝の「鴻の湯」は湯けむりの向こうに鳥の声が透けて、心がゆるみます。湯上がりの頬に触れる風に導かれて、静かな道を温泉寺へ向かいます。
石段を上がった境内は凜として、木々の間を抜ける光が気持ちを洗ってくれます。さらに城崎温泉ロープウェイで山上へ行けば、町並みと山並みの眺望がひらけて朝の空気が胸に広がります。
湯と祈りと景色が一本の線で結ばれる小さな行程は、写真よりも色濃い記憶を残します。帰り道にもう一度どこかの外湯に足を浸したくなるのが、この寄り道の余韻です。
城崎温泉の外湯めぐり——湯と町歩きが重なる心ほどける時間

出典:きのさき温泉観光協会
城崎温泉の外湯めぐりは、七つの湯がそれぞれ異なる趣を持ちながら、町全体の風景とひと続きになるようにつながっているところに魅力があります。「一の湯」は洞窟風呂が特徴で、光の揺らぎが湯面に映る静けさが心をゆるめてくれます。
「地蔵湯」は古くから子授け・安産の湯として親しまれ、やわらかな湯あたりが体の奥に静かに広がります。
「柳湯」は小ぶりながら湯の温度が高く、短い時間で体がすっと温まるのが特徴です。
「御所の湯」は天井の高い開放的な空間に滝の景観が重なり、湯と自然が溶け合うような心地よさがあります。
外湯めぐりの魅力は、湯上がりの体でゆっくり町を歩く時間にもあります。ゆかた姿で石畳を進むと、川沿いの柳や木造の宿が風景として立ち上がり、湯の余韻と混ざり合います。湯に浸かり、歩き、また湯へ向かう——その往復が城崎ならではの静かな旅のリズムをつくってくれます。
城崎温泉で味わう旅の余韻——海と山が育む城崎グルメ

出典:きのさき温泉観光協会
城崎温泉の食には、但馬の海と山が生んだ恵みが静かに息づいています。冬の味覚として名高い「松葉ガニ」は、茹で上がりの湯気からふわりと広がる潮の香りが印象的で、身を口に運ぶと甘みがほどけるように広がります。
湯上がりの体には、その繊細な旨みがいっそう深くしみわたり、旅の記憶を豊かにしてくれます。「但馬牛」は脂が軽やかで、焼き上がりの香ばしさと柔らかな食感が、ひと口ごとに体の奥まで温度を広げてくれるようです。
また、川沿いにはカフェや和菓子店が点在し、外湯めぐりの合間に立ち寄る休息としても心地よい存在です。地元の素材を使ったスイーツや、素朴な味わいの温泉まんじゅうは、湯上がりの余韻をそっとやわらげてくれます。
夜の城崎では、灯りに照らされた町並みの中でゆっくり味わう一品が、風景とともに旅の深さを静かに育てていきます。
西村屋本館の湯としつらえ—名旅館で味わう城崎の間

出典:きのさき温泉観光協会
西村屋本館の玄関をくぐると、木の温もりと庭の緑がやわらかく迎えてくれます。客室は畳と障子のしつらえが落ち着き、窓辺にひろがる庭の景色が旅の時間をゆっくりにします。
湯処は静かな雰囲気で、湯面に映る緑までもが眺めの一部のように感じられます。食事は但馬の海山の恵みを生かした会席で、冬は松葉ガニ、通年は但馬牛の滋味が印象に残ります。
浴衣に袖を通せば外湯めぐりへ自然に背中を押され、帰れば畳の匂いと湯上がりの一杯が芯から体をほどきます。宿の静けさとまちの湯めぐりが呼応する一日が描けること、それがここを拠点にする理由です。
城崎温泉の源泉かけ流し温泉の概要

出典:きのさき温泉観光協会
城崎温泉は複数の源泉から湧く湯を七つの外湯や宿へ配湯し、まち全体で湯を楽しむ文化が息づいています。各外湯は趣が異なり、滝を望む露天や洞窟風呂など個性をつなぐように巡るのが楽しいです。
営業時間や休業日は施設により異なるため、その日の開湯状況を確かめて順路を描くと安心です。川沿いを歩けば柳並木と湯けむりが重なる情景に出会い、湯上がりの散策が自然と深呼吸になります。
泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉(弱食塩泉)で、効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、冷え性、慢性消化器病、疲労回復、健康増進、切り傷、やけどです。源泉温度は約78℃で、pH値は中性〜弱アルカリ性(約7.0〜7.5)で、湧出量は総湧出量 約3,000L/分の塩分由来の保温・保湿性と湯冷めしにくさ、七つの外湯めぐり文化と柳並木の温泉街情緒が特徴の温泉です。
外湯の個性をつなぐように巡ると、湯の力とまちの空気が自然と記憶に染み込んできます。旅の計画はシンプルで十分です。
旅の余韻

出典:きのさき温泉観光協会
湯に浸かり歩き、また浸かる。城崎温泉 源泉かけ流しの旅は、その繰り返しのなかで体と心の輪郭がやさしく整っていきます。
西村屋本館でくつろぎ、七つの外湯で個性を重ね、気分に合わせて温泉寺やロープウェイへ。帰り際に駅前のさとの湯で温もりを一滴までたたえたなら、次の季節の柳並木がもう待ち遠しくなるはずです。



