【湯村温泉】 源泉かけ流し|荒湯で湯たまごを味わう朝時間


出典:湯村温泉観光協会
2025年12月20日更新

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

湯けむりが朝の空に溶けはじめる頃、湯村温泉の中心にある荒湯では、湯つぼの音が小さく弾けていました。
川沿いに立つと頬に当たる蒸気がやわらかく、手に持った卵が少しずつ温まっていくのがうれしい時間です。
源泉かけ流しのまちで迎える朝は、体の奥から目が覚めるように澄んでいて、ゆっくり深呼吸したくなります。
湯けむりの向こうに宿の灯りが揺れ、湯たまごの殻を割る小さな音まで、旅の始まりにふさわしい合図に聞こえました。

湯けむりの路地を歩く—夢千代館と荒湯周辺の見どころ

出典:山陰海岸ジオパーク推進協議会

荒湯のまわりは朝いちばんの湯けむりが路地を包み、石畳がほのかに温かく感じられます。欄干に手を置けば湯の熱がじんわり伝わり、思わず深呼吸したくなります。

夢千代館では湯村の歴史や文化にふれながら静かな時間を過ごせて、外に出ると湯気越しに街の輪郭が柔らかく見えます。川沿いの足湯に腰かける人の笑顔が揺れて、湯の音がBGMのように流れます。

橋の上から見下ろす川面は白い蒸気と朝日が混ざり合い、まるで幕が開く直前の舞台のようです。湯つぼから立ち上る音に誘われて歩けば、次の角でも写真に収めたくなる瞬間が待っています。

湯村温泉 源泉かけ流しの朝は視覚も嗅覚もくすぐられ、旅の体内時計がゆっくりと合っていきます。荒湯で温めた卵の殻を割る小さな音まで、記憶に残る一コマになります。

湯村温泉 源泉かけ流しを宿で味わう—朝野家と佳泉郷 井づつや


出典:朝野家

宿の湯処に身を沈めると、湧いたままの湯を活かしたかけ流しの肌あたりがまず印象に残ります。朝の光が湯面に揺れて、呼吸まで整うような静けさが生まれます。

朝野家では源泉を引いた湯が満ちる湯処で、ゆったりとした湯浴みがかないます。浴後の回廊を歩くと、館内にただよう湯の匂いが旅の心をやさしく落ち着かせます。

佳泉郷 井づつやでも湯村の湯を活かした入浴が楽しめ、朝のひとときにしみ入る心地よさがあります。館内の湯船をめぐれば、体の芯から目覚めていく実感が湧きます。

どちらの宿も湯村温泉 源泉かけ流しの魅力を素直に受け止められる舞台で、朝時間の一番風呂が似合います。窓を開ければ湯けむりの街が静かに呼吸し、次の一杯の白湯が恋しくなります。

季節で表情が変わる—湯村温泉 源泉かけ流しの楽しみ方

出典:山陰海岸ジオパーク推進協議会

冬は白い湯けむりが濃く街全体が湯のマフラーを巻いたように見え、朝の散策がいっそう温かく感じられます。湯上がりの頬に冷気が触れても、体の内側は火鉢のようにぬくもりが続きます。

初夏は川沿いの緑がまぶしく、石畳の反射まで軽やかに見えて足取りが自然と弾みます。木陰に腰かけて湯村温泉 源泉かけ流しの余韻を味わえば、風が肌を撫でてくれます。

秋は澄んだ空気が湯の匂いをくっきり運び、夕暮れの色が湯けむりに溶けていきます。荒湯で湯たまごを待つ数分さえ、季節の音や匂いに気づく小さな瞑想になります。

雨の日は石畳がしっとり艶めき、立ちのぼる蒸気がいつもより近く感じられます。どの季節も朝が似合う温泉地だから、旅の計画に少しだけ早起きを忍ばせたくなります。

湯村温泉 荒湯で蒸される朝の景色——湯たまごがほどく穏やかな始まり


出典:鳥取市観光コンベンション協会

城崎の朝は、湯気の立つ音が静かに空気へ溶けていき、町全体がゆっくりと目を覚ましていくようです。
荒湯の前に立つと、湯面から立ちのぼる温かな気配が頬をやさしく撫で、湯に手を伸ばすだけで胸の奥がふっと軽くなります。

この源泉でつくる湯たまごは、朝時間の小さなご褒美。網に入れた卵を湯へ沈め、待ちながら立ちのぼる湯気を眺めていると、旅先ならではの静かな贅沢を感じます。

出来上がった湯たまごは、殻を割ると白身はつるりとなめらかで、黄身はしっとりとやさしい温度を保っています。
口に運ぶと、湯のあたたかさがそのまま味の中に息づき、体の奥へゆっくり染み込んでいくようです。

川沿いの朝の風に当たりながら味わえば、湯気と光が重なり、城崎の一日の始まりがやわらかにほどけていきます。荒湯の湯たまごは、外湯めぐりへ向かう前の心を整える、小さな旅の儀式のような存在です。

湯村温泉の源泉かけ流し温泉の概要


出典:山陰海岸ジオパーク推進協議会

湯村温泉は高温の湯が街の中心から湧き、暮らしと旅を温めてきた湯のまちです。荒湯では湯がきの風景が今も息づき、立ちのぼる湯けむりが日常の背景をつくります。

宿や共同湯では湧いたままの湯を適温に整えて注ぎ、かけ流しのやわらかな肌ざわりを楽しめます。湯縁に耳を澄ますと微かな音がきらめき、湯が生きている気配に思わず笑みがこぼれます。

基本の性格を知っておくと、入浴のリズムや散策の時間配分が描きやすくなります。街の地図を広げれば水脈のように湯の恵みが張り巡らされ、人と湯の距離の近さに気づきます。

泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉(低張性・中性・高温泉)で、効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、ねんざ、慢性消化器病、痔疾、冷え性、疲労回復、健康増進、きりきず、やけど、慢性皮膚病です。源泉温度は約98℃で、pH値は約7.3(中性)で、湧出量は毎分約2,000リットル(荒湯は毎分約470リットル)の全国有数の98℃高温源泉と豊富な湯量が魅力です。

荒湯に立ちのぼる湯けむりと温泉で湯がきする暮らし、源泉かけ流し主体の湯使いがこの温泉の個性です。朝の一番風呂から路地散歩まで、湯とともに過ごす時間が旅の芯になります。

旅の締めくくり


出典:山陰海岸ジオパーク推進協議会

湯村温泉の朝は湯けむりと静けさが重なり、歩幅まで柔らかくなります。荒湯で湯たまごを頬ばり、宿のかけ流しに浸かるだけで旅の芯が温まります。

山陰海岸ジオパークで海風に当たり、季節の表情を一枚ずつ胸に重ねて街へ戻る循環が心地よいです。次はどの季節の朝を切り取りに行こうか、そんな余白を残して帰路につける場所でした。