知床の秘湯【岩尾別温泉】源泉かけ流しの時間


出典:秘境知床の宿 地の涯
2026年1月28日更新

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

北海道の北東、世界自然遺産・知床半島の奥へ。

斜里町の市街地から山道を進み、岩尾別川に沿って辿り着く先に、ひっそりと湯けむりを上げているのが岩尾別温泉です。

原生林に囲まれ人工の気配が薄れていくにつれ、旅の速度は自然と落ちていきます。

ここは整えられた観光地の延長ではありません。

川の音、湿り気を帯びた空気、森の匂い。そのすべてが前に出て、人はただ受け取る側に回る場所。

源泉かけ流しの湯は、知床という土地の力を静かに映し、浸かるほどに感覚を内側へと導いてくれます。

岩尾別温泉での時間は目的地に着くことではなく、自然と向き合う姿勢そのものからゆっくりと始まっていくのです。

世界自然遺産・知床。人の手が届かない自然が残る半島へ

出典:公益社団法人 北海道観光機構

北海道の北東端に突き出す知床は手つかずの自然が今も濃く残る場所です。

2005年に世界自然遺産に登録された理由は単なる景観の美しさだけではありません。

海から山へと連なる地形、流氷がもたらす豊かな海、原生林と野生動物が共存する生態系。そのすべてがひとつの循環として保たれている点にあります。

半島を歩くと自然の距離感がはっきりと感じられます。

整備された場所とそうでない場所の境界が明確で、人が踏み込みすぎない余白が守られている。

ヒグマやエゾシカ、キツネといった野生動物の気配も日常の延長線にあり、ここでは人もまた自然の一部として存在していることを思い知らされます。

知床は楽しませるために用意された自然ではありません。厳しさと美しさが同時にあり、訪れる側に姿勢を問う場所です。

その空気に身を置くことで、風景を見るという行為が自然と向き合う体験へと変わっていく。

岩尾別温泉や地の涯での滞在と合わせて訪れれば、知床という世界自然遺産の本質がより深く身体に刻まれるでしょう。

岩尾別温泉 秘境知床の宿「地の涯」。知床の奥で湯と向き合う、秘境の宿

出典:秘境知床の宿 地の涯

知床半島の奥深く、森と渓流に抱かれるように佇むのが地の涯です。

世界自然遺産・知床の核心部に近い岩尾別温泉に位置し、宿へ向かう道のりそのものが日常から切り離されていく感覚を強めてくれます。

人工の気配が薄れ、聞こえてくるのは川の音と風の通り道だけ。到着した瞬間から時間の質が変わるのを覚えます。

地の涯の湯は自然と真正面から向き合うための湯です。

源泉かけ流しの湯に身を沈めると外気の冷たさと湯のぬくもりがくっきりと対比され、感覚が研ぎ澄まされていきます。


快適さや利便性を競う宿ではありません。地の涯は知床という土地の力を受け止め、湯を通して身体と心を整えるための場所。

旅の目的地というより、自然の懐に身を置くための拠点として深く記憶に残る一軒です。

 

岩尾別温泉・三段の湯。渓谷に連なる湯壺で、知床の息遣いを感じる

出典:秘境知床の宿 地の涯

知床半島の奥、岩尾別川の渓谷沿いに現れるのが三段の湯です。

名前のとおり段状に連なる湯壺が特徴で、川のせせらぎと湯気が交差する場所。

舗装路や施設的な整えは最小限に抑えられ、自然の中に“湯がある”という関係性がそのまま保たれています。

湯に身を沈めると外気の冷たさと源泉のぬくもりがくっきりと対比され、感覚が一気に研ぎ澄まされます。

上段・中段・下段で湯の深さや温度の印象が微妙に異なり、体調や気分に合わせて居場所を選べるのも三段の湯ならでは。
視線の先には渓谷の緑や雪景色が広がり、季節ごとに風景は大きく表情を変えます。

三段の湯は快適さや安全性を過度に担保する場所ではありません。

自然の変化を受け止め、自己判断で向き合う。その姿勢が求められます。
だからこそ、湯に浸かる時間は濃密で、知床という土地の力が静かに身体へと伝わってくる。

岩尾別温泉を訪れたなら、この野趣あふれる一湯は知床の本質を感じ取るための重要な一章となるでしょう。

岩尾別温泉・滝見の湯。大自然に包まれる、渓谷の野湯

出典:ニフティ温泉

知床半島の奥、岩尾別川沿いにひっそりと湧くのが滝見の湯です。

名前に「滝」とありますが、湯船から滝を直接望む場所ではありません。この湯の魅力は視覚的な演出ではなく、周囲に満ちる水音や渓谷の空気感そのものにあります。

湯に身を沈めると、外気の冷たさと源泉のぬくもりがはっきりと対比され、意識は自然と内側へ向かっていきます。

滝見の湯は整えられた露天風呂ではありません。自然の中に“湯がある”という関係性をそのまま受け止める場所です。

三段の湯と同様に、安全や快適さよりも自然と向き合う姿勢が求められます。

だからこそ、この一湯は知床という土地を身体で理解するための貴重な体験として深く記憶に残るでしょう。

岩尾別温泉の源泉かけ流し温泉の概要


出典:秘境知床の宿 地の涯

岩尾別温泉 源泉かけ流しは北海道斜里町の知床山麓に湧く温泉地で、旅人は素直な湯の力に出会えます。宿泊の拠点となるホテル地の涯で源泉かけ流しの湯が供され、自然の息づかいに寄り添う湯浴みが叶います。

静けさの中で聞こえる川音や鳥の声が、源泉かけ流しの心地よさをそっと際立たせます。

泉質は含硫黄泉(ナトリウム-塩化物系、硫化水素型)。
効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性皮膚病、慢性婦人病、糖尿病、冷え性、疲労回復です。

源泉温度は62.4℃で、pH値は7.1で、湧出量は非公表の硫黄の香りと白い湯の花、原生林と滝を望む野趣あふれる源泉かけ流し露天、川沿いの野天三段の湯を含む知床山麓の秘湯感が特徴の温泉です。

冬季は温泉までのアクセス道路が閉鎖されるため、営業は4月末頃から10月末頃までの期間限定となります。

旅の余韻

出典:公益社団法人 北海道観光機構

湯を離れ、岩尾別の森へ一歩戻ると知床の空気がゆっくりと身体に戻ってきます。

三段の湯や滝見の湯で感じた源泉のぬくもりはすぐには消えず、呼吸の深さや歩幅の変化として残ります。

水音と風の気配に包まれていた時間が静かな余白となって胸の内に沈んでいく感覚です。

岩尾別温泉は景色を“見る”よりも、自然の圧を“受け取る”場所でした。

整えられすぎない環境の中で湯と向き合った記憶は強い刺激ではなく、あとから効いてくる確かさとして立ち上がってきます。

日常へ戻ったあとも、ふとした瞬間に思い出されるのは渓谷の湿った空気や、湯気の向こうにあった静けさでしょう。

岩尾別温泉で過ごした時間は旅の終わりに静かな重みを残し、また知床の奥へと足を向けたくなる理由として心の奥に息づいていきます。