温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#5 鷺の湯温泉-さぎの湯荘-


提供:さぎの湯荘
更新日:2021年5月17日

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かっきー

江戸の玄関口と言われた宿場町に生まれ育った生粋の江戸っ子。還暦を迎えた今なお、旅とサーフィンをこよなく愛するアクティブシニア。某夕刊紙に勤務していた経歴を持つ。
マイナーな温泉から秘湯まで、気の向くままに温泉へ出かけることが大好きです。温泉の良さはもちろん、分かりやすく温泉や旅館などの良さをお伝えしてまいります。

温泉大国日本において、温泉の楽しみ方は千差万別ですが、旅の中でも要となるのはやはり温泉宿ではないでしょうか。
本企画は、温泉経営者がプロの目で教える「おすすめ温泉宿」をリレー形式でご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、島根県「鷺の湯温泉 さぎの湯荘」です。経営者の方にインタビューして伺った魅力の数々をお届けします。

第5回目は島根県安来市にある鷺の湯温泉の旅館「さぎの湯荘」

提供:さぎの湯荘

第5回となる今回は、前回インタビューさせていただいた岡山県の奥津(おくつ)温泉「奥津荘」の鈴木さんがおすすめする、鷺(さぎ)の湯温泉「さぎの湯荘」の経営者の方へインタビューしました。

鷺の湯温泉は島根県の東端に位置する安来(やすぎ)市にあり、月山(がっさん)の麓、飯梨(いいなし)川の側に広がる温泉地です。

また、安来市と言えばどじょう掬い(すくい)踊りで有名な民謡「安来節」発祥の地でもあります。

自然と田園に囲まれた静かで穏やかな場所にある鷺の湯温泉は、国民保養温泉地のひとつに認定されており、湯治に訪れる方も多いようです。


安来の文化を伝え続ける鷺の湯温泉「さぎの湯荘・田辺大輔さん」

さぎの湯荘 代表取締役社長 田辺 大輔さん

◇らくらく湯旅編集部(以降 編集部):特別企画の第5回は、鷺の湯温泉「さぎの湯荘」の代表取締役社長である田辺大輔さんにお話を伺います。お忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

◆田辺さん:よろしくお願いいたします。


さっそくお話を伺いました!

さぎの湯荘がある鷺の湯温泉はどのような温泉地でしょうか。

提供:さぎの湯荘

◆田辺さん:鷺の湯温泉のある安来市は、島根県の出雲地方東部で鳥取県との県境にあり、周辺は清水月山県立自然公園に指定されていて、月山の麓、近くには飯梨川が流れている温泉地です。

◇編集部:鷺の湯温泉の歴史を教えていただけますでしょうか?

◆田辺さん:開湯伝説となると、奈良時代の神亀年間(しんきねんかん:西暦724年〜729年)に、白鷺がこの地に湧く湯で傷を癒したことから「鷺の湯温泉」と呼ばれるようになったとの話が残っています。

実際に歴史上で登場したのは戦国時代に入ってからで、月山富田城(がっさんとだじょう)を居城とした尼子氏(あまこし)の御殿湯とされていました。

◇編集部:400〜500年も続いている温泉なのですね。

◆田辺さん:鷺の湯温泉の側を流れる飯梨川は、現在では一級河川としてしっかりと治水されていますが、これまで幾度か氾濫しています。その都度温泉も土砂で埋まってしまい、途中歴史が途絶えていたこともあるようです。付近からは当時のお風呂の遺跡なども発掘されています。

明治42年、さぎの湯荘初代当主 田辺 才五郎の父である六左衛門が現在の場所で再発見したことが今日の礎になり、いまに至っています。

◇編集部:鷺の湯温泉の規模はどの位でしょうか?

◆田辺さん:鷺の湯温泉には、旅館が3軒、自治体が運営する立ち寄り湯が1軒、地域住民が利用する施設が1軒あります。

その全ての施設がひとつの源泉から配湯されています。鷺の湯温泉の源泉は、湧出量が毎分600Lと豊富なので、どの温泉においてもいつでも源泉掛け流しのお湯を楽しんでいただけます。

◇編集部:すべての温泉施設で掛け流しのお湯が楽しめるとは素晴らしいですね。

次に、温泉について教えてください。

◆田辺さん:温泉の泉質は硫酸塩泉に若干のラジウムが含まれていて、薬効に優れています。以前は、さぎの湯荘のそばの病院の保養施設としても運用していたことがあるほどです。

お湯は、無色透明・無臭。入りやすいお湯となっているので、皆様に湯浴みしていただけます。

また、鉄分も含まれていることから保温効果が高く、身体が芯から温まります。

提供:さぎの湯荘

さぎの湯荘では、露天風呂、大浴場のほか、貸切の露天風呂と広めの内湯にて温泉をお楽しみいただけます。

その他、客室露天風呂と、庭園を眺めて湯浴みのできる露天風呂付きのお部屋も用意しています。

提供:さぎの湯荘

お宿についてのこだわりなどはありますか?

提供:さぎの湯荘

◆田辺さん:お宿でゆったりと寛いでいただけるよう心がけています。例えば、敷地の約1/3に庭園を設け、その庭園を美しく眺めていただけるようなお部屋の作りになっています。

庭園は、大名庭園とされていた出雲地方を形成する風土をイメージした「出雲式庭園」の他、枯山水の様式のお庭もあります。

提供:さぎの湯荘

宿全体としても、ゆとりある空間で、私たちが田舎時間と呼んでいるゆっくり流れる時間を堪能していただきたいと考えています。

また本館の離れに別邸として、出雲大社付近の古民家と蔵を移築して、古民家をラウンジに、蔵を客室としてご提供しています。

提供:さぎの湯荘「別邸 鷺泉(ROSEN) 外観」

提供:さぎの湯荘「別邸 鷺泉(ROSEN) 内観」

離れの別邸(2室)と客室露天風呂付きの客室(本館に3室)は、お庭を眺めるお部屋となっています。

提供:さぎの湯荘「離れ蔵一棟」

◇編集部:バリアフリーの対応などはございますか?

◆田辺さん:ご要望があれば和室の段差にスロープを配置し、寝具もベッドをご用意するよう対応しています。お食事も、車椅子で利用できるお食事処やテーブル席の準備がございます。

お食事についてですが、特別こだわりがあるとお伺いしました。

◆田辺さん:さぎの湯荘は、代々当主が料理人を務める慣わしとなっています。私もそれに倣って大阪で7年ほど修行してまいりました。

いまでも専門の料理人と一緒に、地産地消の食材と季節の食材をとりいれた献立を自ら考案して料理に腕をふるっています。

提供:さぎの湯荘「カニづくし会席プラン」

提供:さぎの湯荘「しまね和牛会席プラン」

◇編集部:周辺には日本海で採れる海の幸や山の幸が沢山ありそうですね。

◆田辺さん:山陰の味覚を代表する松葉蟹や白いか、島根和牛、のどぐろ、宍道湖(しんじこ)のしじみなど、恵まれた食材を活かして、煌びやかさや奇を衒う(てらう)ような見栄えではなく、地産の特産品で美味しい料理をご提供することを心がけています。

提供:さぎの湯荘「日本海の幸プラン のど黒の田舎風煮つけ」

◇編集部:どじょう掬い踊りでの安来節発祥の地だけに、どじょうも特産品ですよね。

◆田辺さん:はい、安来のどじょうは他に比べても柔らかくいただけると好評で、浅草の有名などじょう料理専門店にも出荷されています。

提供:さぎの湯荘「どじょう料理」

◇編集部:現地で産地ならではの新鮮などじょうを味わってみたいですね。

◆田辺さん:その他にも、冬場にご提供しているぼたん鍋は、天然物なので脂の質が良く胃もたれしません。通常は臭みをとるために味噌鍋で食しますが、当館では猟師を指定し、処理をきちんと行ったうえで調理を行うため、臭みなくいただけるので、水炊きにてご提供しています。

水炊きのぼたん鍋は、他ではなかなか味わえない料理なので、この味を求めてくるリピーターが多くいらっしゃいます。

提供:さぎの湯荘「ボタン鍋」

◇編集部:ぜひ一度味わってみたいですね

温泉までのアクセスについてお伺いできますでしょうか。

◆田辺さん:関西圏からは車で来られる方が多いですね。関東圏他の遠方からとなると飛行機をご利用する方もいらっしゃいます。

飛行機や電車でお越しいただく場合は、JR安来駅から温泉地までの無料シャトルバスを利用いただけるので、全国各地からお越しいただいています。

また鷺の湯温泉には、日本庭園が有名な足立美術館があるのですが、そこを目当てに海外から来られる方もいらっしゃいます。

◇編集部:足立美術館は、長年にわたりアメリカの日本庭園専門誌で日本庭園ランキング1位に選ばれている美術館ですよね。雄大な庭園は毎日細部まで手入れが行われ、どこをみても絵画のような景観が広がっていると伺ったことがあります。ぜひ一度訪れてみたいものです。

足立美術館の他にもおすすめのスポットがあれば教えていただけますでしょうか。

◆田辺さん:徒歩圏でいいますと安来節演芸館があります。

車を使えば、月山富田(がっさんとだ)城址、清水寺(きよみずでら)、松江城といった史跡もあります。また、出雲大社も1時間半ほどのところなので、おすすめです。

他にも観光名所として、堺港や大山(だいせん)、西に石見銀山(いわみぎんざん)東に鳥取砂丘があります。

◇編集部:気になるスポットばかりですが、お話を拝聴しないと読めない地名が沢山ありますね。

◆田辺さん:出雲地方は難読漢字が多いですね。(笑)

さぎの湯荘 田辺大輔さんがおすすめする温泉宿

◇編集部:「らくらく湯旅」ではリレー形式で温泉宿を紹介していきます。田辺さんがおすすめする一度は泊まりたい温泉宿をご紹介いただけないでしょうか。

◆田辺さん:既に泊まってしまっているお宿が多いのですが、おすすめするのであれば、阿蘇内牧(あそうちのまき)温泉の蘇山郷(そざんきょう)をおすすします。

◇編集部:そちらの旅館がなぜ、おすすめなのでしょうか。おすすめするポイントをお伺いできますか?

◆田辺さん:阿蘇山のカルデラの中にある温泉地で、周囲を外輪山に囲まれた雄大な景観は通常の温泉地と異なる空間を醸しています。与謝野鉄幹(よさの てっかん)・晶子夫妻ゆかりの温泉宿でもあります。

この温泉街のある内牧は、熊本地震や豪雨で被災し、蘇山峡にも被害がでました。しかし、御当主である永田社長をはじめとする宿のみなさんが一丸となって、おもてなしの伝統を継承しつつ、レベルアップして復興しています。その点でも、おすすめのお宿です。

<施設情報>
阿蘇内牧温泉 蘇山郷
住所:熊本県阿蘇市内牧145
電話:0967-32-0515
アクセス:
<電車>JR阿蘇駅より内牧温泉行きバスで商工会前バス停下車、徒歩2分
<車>熊本I.CよりR57を阿蘇方面へ70分(ミルクロード経由)

温泉好き「らくらく湯旅」ユーザーへのコメント

◇編集部:最後に、「らくらく湯旅」ユーザーへ一言おねがいします。

◆田辺さん:海やテーマパークなどといったレジャーではなく、日常の喧騒から離れて、読書や美術鑑賞、日本庭園の散策など、ゆっくりとくつろぐ方に空間を提供することが大切だと考えています。

さぎの湯荘の周辺は自然や史跡、豊かな食材に恵まれた環境にあります。自然の景観のなかで24時間流れ続ける温泉で贅沢に湯浴みし、身も心も癒すお手伝いができるようおもてなしさせていただきます。

悠久の時を刻むこの出雲地で、私どもが「田舎時間」と呼んでいるスローライフで心のゆとりを感じに、是非ともお越しくださいませ。

◇編集部:本日はお忙しい中、お時間を頂戴いたしましてありがとうございました。

出雲地方の大自然と文化に恵まれた、さぎの湯温泉のゆったりと流れる時間を満喫するための徹底した演出とおもてなしの精神は素晴しいですね。日常の喧騒から離れて美しい日本様式の庭園で、心を休めてみてはいかがでしょうか。

<基本情報>
鷺の湯温泉 さぎの湯荘
住所:島根県安来市古川町478-1
電話:0854-28-6211
ホームページ:https://www.saginoyusou.com/
アクセス:
<電車>
JR安来駅より無料送迎バスで約15分
JR米子駅より車で約20分
<車>
山陰道「安来I.C」から約20分