温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#9 泥湯温泉-奥山旅館-
この記事を書いた人
かっきー
江戸の玄関口と言われた宿場町に生まれ育った生粋の江戸っ子。還暦を迎えた今なお、旅とサーフィンをこよなく愛するアクティブシニア。某夕刊紙に勤務していた経歴を持つ。
マイナーな温泉から秘湯まで、気の向くままに温泉へ出かけることが大好きです。温泉の良さはもちろん、分かりやすく温泉や旅館などの良さをお伝えしてまいります。
世界に誇る日本文化のひとつとして、古来より親しまれてきた温泉。湯治や保養で温泉に浸かることはもちろん、その土地に佇む宿でゆっくりとした時間を過ごしたり、景観や食文化に触れることを通じて温泉を楽しんでいる方も多いのではないでしょうか。その中でも特に温泉宿は旅の要であり、こだわりたいものです。
本連載企画は、温泉経営者がプロの目線で選んだ至高の温泉宿をリレー形式でご紹介していきます。今回ご紹介するのは、秘湯が多い秋田県の泥湯(どろゆ)温泉にある「奥山旅館」です。経営者にインタビューして伺った魅力の数々をお届けします。
【国内旅行をもっとお得に!】目的別おすすめカード | ||
目的 | 飛行機・電車 | 宿泊 |
サービス | \空も陸もこれ1枚/
JALカードSuica |
\No.1人気の定番/
楽天カード |
おすすめ ポイント |
■搭乗ボーナスあり
・入会時 1,000マイル ・毎年初回 1,000マイル ・搭乗毎 10%プラス ■電車旅行がおトク ・新幹線 5%還元 ・グリーン券 5%還元 ■空港も駅もワンタッチ |
■楽天トラベルと相性◎
・楽天ポイントが2倍 ・1,000円割引クーポン └毎月1回使える └お盆や正月もOK ■海外旅行保険が付帯 ■年会費無料で高還元 |
年会費 | 2,200円
(初年度無料) |
永年無料 |
還元率 | 0.5~1.0% (200円=1マイル) |
1.0% (100円=1pt) |
ブランド | ||
入会特典 | 1年間年会費無料 | 最大5,000pt付与 |
公式HP | 詳細を見る | 詳細を見る |
目次
第9回目は秋田県湯沢市にある泥湯温泉「奥山旅館」
提供 奥山旅館
第9回となる今回は、前回インタビューさせていただいた山形県の湯田川(ゆたがわ)温泉「九兵衛(くへえ)旅館」の大滝さんがおすすめする、泥湯温泉「奥山旅館」の経営者へインタビューしました。
泥湯温泉は、栗駒(くりこま)国定公園の秋田側、湯沢市の山間に囲まれた谷間に佇む古くからある湯治場です。周辺は秋田、山形、宮城、岩手の4県にまたがる広大な栗駒国定公園となっており、どこをみても緑が生い茂る、まさに秘湯の趣きあるなかに奥山旅館があります。
手つかずの大自然に囲まれた静かで穏やかな場所にある泥湯温泉は「日本秘湯を守る会」の会員にも認定されており、湯治を目的に訪れる方も多いようです。
地域の文化を守り続ける泥湯温泉「奥山旅館・奥山晃弘さん」
奥山旅館 代表取締役 奥山 晃弘さん
◇らくらく湯旅編集部(以降 編集部):特別企画の第9回は、泥湯温泉「奥山旅館」の代表取締役である奥山さんにお話を伺います。お忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
◆奥山さん:よろしくお願いいたします。
約1200年前に開湯、肥沃な大地に恵まれた温泉地・泥湯温泉
提供:奥山旅館
◆奥山さん:泥湯温泉は秋田県南部の湯沢市にある温泉地です。周辺は鎌倉時代には城下町として発展、江戸時代以降は鉱山として栄えてきた歴史があります。
現在の湯沢市の特長は、周辺を自然と肥沃な大地に恵まれており美味しい食材が豊富なことです。
夏頃であれば品質日本一の「三関のさくらんぼ」、泥湯温泉周辺で採れる「じゅんさい」、食べ物では日本3大うどんと称される「稲庭うどん」などがあります。
※じゅんさい:沼や池に自生するスイレン科の植物。ゼリー状の透明な粘膜に覆われおり、つるんとした独特の食感で、ビタミンが豊富な食材。
また地熱資源にも恵まれています。あちこちで湧出する温泉の他に、地熱発電も2箇所で稼働中、さらに2箇所が調査中となっています。
◇編集部:古くは湧出する温泉であった自然の恵みが、現代では地熱資源としても利用されているのですね。
◆奥山さん:温泉自体は、約1200年前の平安時代には当時の村人等がこの地で湯浴みや湯治をしていたという文献が残こされていますのでこの時代が開湯となります。それから800年ほど経過した西暦1680年に湯宿が開かれたと伝わっていいます。
◇編集部:1200年も続いている歴史ある温泉なのですね。泥湯温泉の規模はどの位なのでしょうか?
◆奥山さん:以前は泥湯温泉に旅館が4軒ほどありましたが、廃業されて現在では奥山旅館ともう1軒の2軒だけの静かな温泉地となっています。
自然のままに温泉を楽しめる、秘湯と呼ばれるにふさわしい温泉
◇らく湯旅:泥湯温泉は、日本秘湯を守る会の会員でもある秘湯と呼ばれていますが、どのような泉質なのでしょうか。
◆奥山さん:当館は、自然湧出している3種類の泉質の異なる源泉を持っています。それぞれの源泉から宿の温泉までは落差を利用して湯を引いていますので、ポンプなどで組み上げることなく自然のまま温泉を楽しんでいただけます。
◇編集部:一軒の温泉宿で3種類の泉質を楽しめるのは嬉しいですね。
提供:奥山旅館(大露天風呂)
◆奥山さん:それぞれの泉源には泉質ごとに泉源名を付けており、透明で湯の花が舞うような単純泉の「新湯」、硫黄泉で鉄分を多く含み白色や茶色の湯などその日によって変化する「天狗の湯」、単純硫黄泉で硫化水素型のため真っ白な湯の「川の湯」となっています。
新湯は男女別の「大露天風呂」、天狗の湯は「混浴露天風呂」と「男女別の内風呂」、川の湯は「女性専用露天風呂」で、全て掛け流しとなってます。
提供:奥山旅館(混浴露天風呂)
提供:奥山旅館(内湯)
提供:奥山旅館(女性専用露天風呂)
◇編集部:女性は3種類の泉質すべてが楽しめるのですね。立ち寄り湯でも全ての温泉が利用できるのでしょうか。
◆奥山さん:ご滞在のお客様以外でも、立ち寄り湯で全ての温泉をご利用可能です。
立ち寄り湯については、当旅館の付近にある川原毛(かわらげ)地獄に訪れた方などが疲れを癒すためにご利用いただいていることが多いです。ただ、現在はコロナ禍の対応のため大変ご不便をおかけして恐縮なのですが、10:30〜13:30の受付で14:30終了と時間を大幅に短縮してご提供させていただいております。
◇編集部:それぞれの温泉の特長を教えていただけますでしょうか。
◆奥山さん:硫黄泉においては、これぞ温泉という硫黄の匂いがしますが、泥湯温泉の周辺は硫黄の匂いが立ち込めていて、場所によっては立ち入り禁止となっているほど。そのため、温泉それぞれの湯の匂いはあまり気になりません(笑)。
その一方で、硫黄の成分が強いため、電化製品がすぐに故障してしまいますね。テレビなどは早くて3ヶ月ほどで、急にボリュームが上がったりなど故障してしまいます…。そのことから、お客様にご迷惑をおかけしないよう、当館ではお部屋にテレビを置いていません。
テレビを置いていない分、周辺の自然を感じながらゆったりとおくつろぎいただけます。
提供:奥山旅館
◇編集部:3ヶ月ほどで家電製品が壊れてしまうとはすごいですね。その分、いろいろな効果効能が期待できそうですが、いかがでしょうか。
◆奥山さん:一般的には、打身やリュウマチ、肩こりに良く効くと言われていますが、湯浴みをされた方からは「疲れを湯船に置いてこられる」と仰って、疲労回復にも良いと伺っています。疲れが取れるのは、泥湯温泉の手つかずの大自然に囲まれた景観などから心もほぐしてくれる補助的な効果があるのだと思います。
◇らく湯旅:大自然の恵みを感じながらゆったりと温泉に浸かれるのは贅沢ですね。
秋田県の自然をふんだんに使った温かな空間が広がるお部屋
提供:奥山旅館(玄関前の飲泉場)
◇編集部:奥山旅館をご紹介いただいた大滝さんから、大変なご苦労をされて歴史ある旅館を再建されたと伺いました。
◆奥山さん:奥山旅館の創業は1912年(明治45年/大正元年)で、私で5代目当主となります。現在の宿は2016年に火事で全焼したものを、2019年に再建したものです。
実は宿が全焼した時には正直に言って廃業するつもりでした。しかし、地域の皆様や再建を望むお客様のお声に励ましていただき、また生まれ育った故郷である泥湯温泉の歴史と文化を継承するためにも、宿を再建することを決意いたしました。
おかげさまでリニューアル後には、地域の皆様をはじめリピーターのお客様にご愛顧賜り、昨年のコロナ禍で休館した後でも、何とか宿を継承することができています。
◇編集部:再建される際にこだわったところがありましたら、お教えいただけますでしょうか。
◆奥山さん:宿の再建にあたっては、この地の歴史と大自然の景観と融合することにこだわり、コンクリート造ではなく木造建築が良いと考えました。
そこで同じ秋田県内の日本秘湯を守る会会員である鶴の湯温泉さんに、県内の古民家専門の建築家をご紹介いただき「秋田県の古材を使用して古民家風の宿を建築して欲しい」と相談し、設計していただきました。
提供:奥山旅館
◇編集部:歴史ある秘湯の趣を損なわないように徹底してこだわったのですね。懐かしい雰囲気、温かみのある空間で自然と心が穏やかになりそうですね。
◇編集部:お宿の規模はどのくらいなのでしょうか?
◆奥山さん:宿には9つのお部屋をご用意しています。1部屋の定員は2名様なので、全部で18名様がご滞在いただけます。
提供:奥山旅館
また、常にお客様と会話をするということを徹底しており、お客様のお声に耳を傾けてサービスに反映するよう心がけています。
地産地消の新鮮な食材を使用し、秋田を心ゆくまで堪能できるお食事
◇編集部:お食事にもこだわりがあるとお伺いしました。
◆奥山さん:地域の皆さまとお客様の励ましとお力添えで再建できたということもあり、ご滞在いただくお客様に優れた地産の特産品を知っていただきたいと思い、地元のものをご提供することにこだわっています。
湯沢は酒どころでもあるので、食前酒として地元のお酒をお出ししてお食事を楽しんでいただいています。
また、豊かな土地・湯沢の地産地消の食材を使用して、手作りで手間をかけてお料理することにこだわっています。
食材としては例えば、知る人ぞ知る秋田の高級和牛「三梨(みつなし)牛」や「皆瀬(みなせ)牛」があります。ブランド牛として出荷数自体が少ないため県外に出ることが少ない幻の牛肉とも言われており、大変ご好評いただいています。
そのほかにも、旬の食材を山菜採りの名人に依頼して、春の山菜、夏のじゅんさいや夏野菜、秋のきのこ、冬はひろっこと呼ばれるあさつきの新芽などを収穫し、お料理にふんだんに取り入れ提供しています。お米も地元の「あきたこまち」を使用しています。
提供:奥山旅館(皆瀬牛リブロースステーキ)
提供:奥山旅館(山菜の揚げ物)
提供:奥山旅館(湯沢特産のひろっこの酢の物)
提供:奥山旅館(三関セリと岩手鴨のすき焼き)
提供:奥山旅館(りんごグラタン)
提供:奥山旅館(ご飯:秋田小町)
お酒も、湯沢市にある蔵元の両関(両関酒造)、爛漫(秋田銘醸)、福小町(木村酒造)を飲み比べできる「湯沢セット」、少し地域を広げて秋田県内の蔵元さんのお酒を飲み比べできる「県内セット」をご用意しております。
提供:奥山旅館(飲み比べセット)
◇編集部:見事なまでに地産地消ですね。すべて産直の食材ですとご苦労もあるのではないでしょうか。
◆奥山さん:収穫にバラ付きがある旬の山の幸などは、鮮度を落とさないように食材を上手く保存する方法も研究する必要がありますね。
提供:奥山旅館
◇編集部:大変なご苦労の中、手間暇をかけて作り出されるお料理一品一品を、ゆっくりと味わってみたいものです。
大自然の中に佇む奥山旅館周辺は散策スポットも数多い
◇編集部:奥山旅館、泥湯温泉周辺のロケーションについて教えていただけますでしょうか?
◆奥山さん:泥湯温泉は周辺を山に囲まれていて、山奥の小さな盆地にあります。ちょうどすり鉢の底に宿があるようなイメージです。
泥湯温泉までの途中には蒸気が吹き出て、周囲を硫黄臭が漂っていて日本とは思えない異空間の雰囲気に触れていただけます。
提供:奥山旅館(川原毛地獄)
泥湯温泉から車で5分(歩いて30分程度)のところには、日本三大霊地の「川原毛(かわらげ)地獄」があります。川原毛地獄には霊場としての往来のほか、観光地としても訪れる方も多くいらっしゃいます。
川原毛地獄からさらに15分ほど歩くと「川原毛大滝湯」があります。ここは滝そのものが温泉という珍しい湯の滝です。
滝の上流で湧く天然の温泉が20mの高さから流れ落ちてきて、滝つぼや渓流が天然の露天風呂になっています。無料で楽しんでいただけるスポットです。
提供:奥山旅館(川原毛大滝湯)
◇編集部:まさしく大自然の中に佇む秘湯といった趣きのあるロケーションですね。
お客様は「秘湯」を求め、そして「旬の食材」を楽しみに訪れる
提供:奥山旅館(秋の三途川)
◇編集部:奥山旅館をはじめ、泥湯温泉にはどちらからお越しになる方が多いのでしょうか?
◆奥山さん:日本全国からお越しいただいています。なかでも関東圏からお越しいただくお客様が7割ほどと多くご利用いただいています。
コロナ渦以前にはインバウンドのお客様も月に1〜2組みほどご利用いただいていました。
泉質や秘湯としてロケーションのほか、旬の食材を楽しみにリピートいただくお客様も多くいらっしゃいます。
◇編集部:泥湯温泉までのアクセスはどういった方法があるのでしょうか?
◆奥山さん:公共交通機関でお越しいただく場合には、JR湯沢駅から2通りの方法があります。
ひとつは、直通のシャトルバスをご利用いただく方法で、こちらは片道2,000円かかります。
もう一つは、駅から途中まで路線バスに乗って、そこから乗合タクシーでお越しいただけます。乗合タクシーは、湯沢市からの補助もあり片道1,200円とリーズナブルな料金で地元の方もこちらを利用しています。
JR湯沢駅からは約45分ほどかかりますが、道中も三途川の渓谷や四季折々の大自然の景観をお楽しみいただけます。
奥山旅館 奥山 晃弘さんがおすすめする温泉宿
◇編集部:「らくらく湯旅」ではリレー形式で温泉宿を紹介していきます。奥山さんがおすすめする一度は泊まりたい温泉宿をご紹介いただけないでしょうか。
◆奥山さん:私が一度は泊まってみたい温泉として以前からとても興味があるのが、北海道の上の湯(かみのゆ)温泉にある「銀婚湯(ぎんこんゆ)」です。
◇編集部:なぜそちらの旅館がおすすめなのでしょうか。
◆奥山さん:こちらはお宿には、なんと4種類の源泉が湧出しているそうです。さらにお宿の温泉の他に広い敷地内には隠し湯と呼ばれるいくつかの野天風呂があります。
また、秘湯の宿巡りのスタンプ帳というものがあるのですが、当館にご滞在いただくお客様の多くが「銀婚湯」に滞在されています。秘湯と呼ばれる温泉愛好家の多くに選ばれるお宿として、おすすめのお宿です。
<施設情報>
上の湯温泉 銀婚湯
・住所:北海道二海郡八雲町上ノ湯199
・電話:0137-67-3111
・アクセス:
<電車>JR函館本線 落部駅から送迎車で約15分。
<車>道央道落部 I.Cから約15分
温泉好き「らくらく湯旅」ユーザーへのコメント
◇編集部:最後に、「らくらく湯旅」ユーザーへ一言おねがいします。
◆奥山さん:当館はアクセスが不便なところにございますが、周辺は自然や豊かな食材に恵まれた環境にあります。
日常とかけ離れた空間で、恵まれた風土から自然湧出し続ける3種類の温泉と、最高の食材を丹精込めてつくるお料理で、心身ともに癒すお手伝いが出来るようにおもてなしさせて戴きますので、是非ともお越しくださいませ。
◇編集部:本日はお忙しい中、お時間を頂戴いたしましてありがとうございました。
秋田県の南の玄関口として古くから栄えてきた秋田県湯沢市の豊富な食材と、地元の文化を徹底して継承していくコンセプトは素晴らしいと感じました。四季折々にうつろう悠久の大自然のなか、日常の喧騒から離れてひっそりと佇む秘湯で、のんびりと心を休めてみてはいかがでしょうか。
<基本情報>
泥湯温泉 奥山旅館
・住所:秋田県湯沢市高松字泥湯沢25
・ 電話:0183-79-3021
・ホームページ:https://www.doroyu.com/
・アクセス:
<電車>JR湯沢駅からシャトルバスで45分
<車>東北自動車道 古川ICから160分、秋田自動車道 須川ICから25分