温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#10 上の湯温泉-温泉旅館 銀婚湯-
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かっきー
江戸の玄関口と言われた宿場町に生まれ育った生粋の江戸っ子。還暦を迎えた今なお、旅とサーフィンをこよなく愛するアクティブシニア。某夕刊紙に勤務していた経歴を持つ。
マイナーな温泉から秘湯まで、気の向くままに温泉へ出かけることが大好きです。温泉の良さはもちろん、分かりやすく温泉や旅館などの良さをお伝えしてまいります。
世界には数多くの温泉が存在しますが、これほどまでに温泉を愛す民族はいないと言われるほど、日本人に愛されてきた温泉。旅先の風土や大自然、温泉文化や食文化に触れることはもちろん、旅の休息ポイントとなる温泉宿には特にこだわりを持って選ぶという方も多いでしょう。
本企画では、温泉経営者がプロ目線で選んだ「一度は泊まりたい温泉宿」をリレー形式でご紹介してお届けしてまいります。今回ご紹介するのは、温泉天国とも呼ばれる北海道・上の湯(かみのゆ)温泉にある温泉旅館「銀婚湯」です。経営者にインタビューしてお話を伺いした魅力の数々をお届けしてまいります。
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目次
第10回目は北海道二海郡八雲町にある上の湯温泉「温泉旅館 銀婚湯」
提供:銀婚湯
第10回となる今回は、前回インタビューさせていただいた秋田県の泥湯温泉「奥山旅館」の奥山さんがおすすめする、上の湯温泉「温泉旅館 銀婚湯」の経営者へインタビューしました。
上の湯温泉は北海道渡島(おしま)半島の北部、二海郡八雲町(ふたみぐんやくもちょう)に位置しています。
二海群は、太平洋の内浦湾と日本海に面することから「2つの海」という意味で名付けられたとされており八雲町は日本の市町村で唯一、太平洋と日本海に接している独特な環境にあります。
上の湯温泉は、海に囲まれた八雲町に流れる落部川(おとしべがわ)の上流の山あいに位置する温泉地です。川べりには野天風呂、周囲は手つかずの原生林に囲まれた大自然の中、広大な敷地をもつ温泉旅館銀婚湯があります。
広大なスケールの温泉宿と自然環境を継承して守り続ける上の湯温泉「温泉旅館 銀婚湯・川口洋平さん」
銀婚湯 代表取締役社長 川口 洋平さん
◇らくらく湯旅編集部(以降 編集部):特別企画の第10回は、上の湯温泉「温泉旅館 銀婚湯」の代表取締役社長である川口さんにお話を伺います。お忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
◆川口さん:よろしくお願いいたします。
日本海と太平洋の2つの海に面した温泉地・上の湯温泉
提供:銀婚湯(敷地内を流れる落部川)
◇編集部:銀婚湯のある北海道二海郡八雲町はどのようなところですか?
◆川口さん:渡島半島の北部、駅弁のいかめしで有名な森町と長万部町(おしゃまんべちょう)の間にあるのが八雲町です。
平成になって市町村合併があり、地名の”二海郡八雲町”の通り、日本海と太平洋の2つの海に面した町となりました。
八雲地域は尾張徳川家にゆかりのある地域で、明治時代に旧徳川尾張藩が、明治維新により職を失った旧家臣を移住させ、開拓されたと記録されています。
なお、この地を八雲と名付けたのは開拓以降ですが、北海道の地名は先住民族のアイヌに因んだものが多いです。上の湯温泉の周辺を流れる落部川の”べ(ペ)”は、アイヌ民族の言葉では川とか川の麓の村という意味だそうです。
また、八雲は北海道の観光土産として有名な木彫り熊発祥の地でもあります。
これは徳川家の徳川義親公が、大正時代に冬季に農家の人々が生計を立てられる様に奨励したことが始まりとされています。昭和時代の北海道観光ブームで爆発的に売れたことから、北海道全域で造られる様になったそうです。
◇編集部:とても興味深い歴史との関わりと成り立ちですね。この地にある上の湯温泉についても教えてください。
◆川口さん:上の湯温泉の開湯は、正確な年代はわかりませんが、数百年前と言われています。
先住民族のアイヌの人々が、落部川の中流中洲より湧出する湯で湯浴みや湯治など常浴していたのがはじまりと考えます。
提供:銀婚湯
歴史上に登場するのは、江戸時代後期の弘化3年(1846年)に探検家・松浦武四郎が浴し、蝦夷(えぞ)日誌によって全国に紹介されたとの記録があります。
上の湯温泉は、落部川沿い上流の10kmほど奥まったところに湧出していて、河口側には下の湯温泉もあります。
温泉地といっても、ほかの温泉街の様にお宿が密集しているわけではなく、温泉旅館がポツンポツンと当館とあわせて2軒のみ。周囲は手つかずの山に囲まれた温泉地です。
◇編集部:まさしく秘湯といった趣の温泉なのですね。
創業96年、大正天皇銀婚の佳日に因んで名付けられた「銀婚湯」
提供:銀婚湯
◇編集部:銀婚湯の歴史についてお伺いできますか?
◆川口さん:上の湯周辺では、古くから小規模に自然湧出していたとされています。
大正14年、そこに初代当主の川口福太郎が大量の湯が湧出される源泉を開掘することに成功したことが当館の創業の礎となります。
奇しくもこの日は、大正天皇銀婚の佳日でした。それに因んで当館を”銀婚湯”と命名したそうです。
以来、お宿を代々継承して創業から96年を経て、私で4代目の当主となります。
提供:銀婚湯
◇編集部:偶然重なったとはいえ何かの縁を感じますね。
和の風情や樹木の温もりを全身で感じられる、心地よい空間
◇編集部:旅館のつくりなどこだわりがありましたら教えていただけますでしょうか。
◆川口さん:現在の当館は、周囲を大自然の原生林に囲まれたなか、湯浴みやお食事のあとに四季折々の景観にふれて寛いでいただけるよう敷地内に散策路を整備しています。
提供:銀婚湯(敷地内の散策路)
お宿は、その自然の景観を邪魔せず調和するように純和風の造りとして、建物も樹木の葉が屋根にかかるくらいの程よい高さとして、和の風情や樹木の温もりを感じて頂けるよう配慮しています。
提供:銀婚湯
提供:銀婚湯
提供:銀婚湯
◇編集部:素晴らしいこだわりですね。緑が美しい季節には、旅館内から見える生い茂った木々の風景も絵になりそうですね。
ただ、これだけ広大な敷地の管理は、ご苦労もあるのではないでしょうか。
◆川口さん:この自然環境の景観を維持するため、周辺に人工物が建造されないよう先代から周辺の敷地を増やしています。
現在の敷地は、周囲の原生林の山林を含めると九万坪ほどとなります。
提供:銀婚湯
提供:銀婚湯
遊歩道の周辺は以前は桜の木が多かったのですが、春の一時の桜を愉しむ桜より、お客様をいつお迎えしても、四季折々の新緑や紅葉を愛でていただけるようにと、紅葉や楓、桂に植え替えをしています。
桂に関しては苗木ではなく種から植えて今では桂林になるまで育っています。
提供:銀婚湯(紅葉シーズンの散策路)
◇編集部:景観を維持するために周辺の敷地を増やすとは、すごい徹底ぶりですね。
お写真を拝見させていただくだけでも、心地よい風や生き物の鳴き声などを感じられそうです。
北海道の大自然を独り占めするように楽しめる、森を散策しながらの隠し湯巡り
◇らく湯旅:銀婚湯をご紹介いただいた奥山さんから、広い敷地内に隠し湯と呼ばれるいくつかの野天風呂があると伺っています。
◆川口さん:散策路は全て巡ると1時間ほどなのですが、途中”隠し湯”と呼ぶ源泉掛け流しの野天風呂を設けています。
野天風呂は、もともとは先代が個人的な楽しみで湯浴みしていた源泉でした。
また、宿から徒歩10分ほど離れ、途中敷地内を流れる落部川に架かる吊り橋を渡るなど、ご滞在のお客様をご案内するのもいかがなものかと思いご提供しておりませんでした。
提供:銀婚湯(敷地を流れる落部川に架かる吊り橋)
たまたま常連のお客様にご案内したところ、大自然に触れて心身を癒す素晴らしい温泉なので一般解放すべきと叱咤激励の言葉をいただいたことから、時間をかけて整備しました。
整備後、一般のお客様にご利用いただいたところ大変ご好評をいただき、現在では巨岩や丸太をくり抜いた浴槽など、それぞれ趣向を凝らした5箇所の隠し湯めぐりを愉しんで頂けるようになっています。
提供:銀婚湯(隠し湯:トチニの湯)
提供:銀婚湯(隠し湯:奥の湯・トチニの湯)
◇編集部:露天風呂ではなく野天風呂というのは北海道らしいスケールの大きな贅沢なお話ですね。お宿に備わった内湯や露天風呂と併せると相当な数の温泉施設があり、様々な楽しみができそうですね。
◆川口さん:当館には、5本の源泉が自然湧出していて、湯船は男女別の大浴場と野天風呂、家族風呂など全部で11ヵ所ご用意しています。
源泉の泉質はアルカリ性ですが、それぞれ泉質は微妙に異なり、この源泉を混合して配湯しています。混合した温泉は循環や濾過・塩素殺菌などせずに自然のまま源泉掛け流しの湯を楽しんでいただけます。
湯は、わずかに白くアルカリ性の柔らかい湯で、神経痛・肩こり・腰痛や皮膚病にもよく効くと言われています。特に美肌の湯として特に女性の方には喜んでいただいています。
また、5本の源泉の中には炭酸水素塩泉もあるので保温効果が高く、野天風呂で湯浴みして、湯ざましに散策しながら隠し湯巡りされるのにも良いですね。
提供:銀婚湯(隠し湯:かたらいの湯)
◇編集部:11ヶ所もの源泉掛け流しの温泉とは贅沢ですね。とても一泊では回りきれそうにありませんね。
◆川口さん:そうですね、本州からお越しのお客様は大体連泊でご滞在されます。
提供:銀婚湯(隠し湯:かつらの湯)
地産地消の旬な食材で一品一品丹精を込めて作られるお食事
◇編集部:お食事でのこだわりなどありましたら教えていただけますでしょうか。
◆川口さん:四季折々の旬な地産地消の食材を使用して、一品ごとに丹精込めて手作りしたお料理をご提供することにこだわっています。
提供:銀婚湯
当館のお料理には既製の惣菜などは使用していません。食材は鮮度にもこだわっていて、半径30km以内のところから仕入れるようにしています。
冬の鶏鍋のほか、二つの海から獲れる魚介類、春のわらびやフキなどの山菜、特に山菜は塩漬けして年間を通してご提供できるようにするなど工夫をしています。
提供:銀婚湯
提供:銀婚湯
また、地元八雲町の特産として取り組んでいる海面養殖の北海道二海サーモンを使用したお料理をご用意しています。
他にも、お米には北海道で生まれたゆめぴりかを使用しています。
◇編集部:恵まれた自然環境のなか、新鮮な旬の食材を使用して作られたお料理、一度味わってみたいです。
温泉、お食事、散策とゆったりとした時間を過ごすための環境づくりも徹底
提供:銀婚湯
◇編集部:そのほか、こだわっているサービスなどはありますか?
◆川口さん:ご滞在中は、ゆっくりと過ごしていただけるように、13:00チェックイン〜11:00チェックアウトと余裕を持たせています。
またご要望があれば、お食事後にももう一度ゴロっとされたいお客様のために、お布団の上げ・下げの札などもご用意しています。
提供:銀婚湯
◇編集部:お客様に寛いでいただくことに、徹底したこだわりがあるのですね。
お客様の中には宿の名前に因んで銀婚式の記念に訪れる方も多い
◇編集部:最後に、銀婚湯にはどのようなお客様のご利用が多いですか?
◆川口さん:ご利用いただくお客様は、季節によって異なりますが、夏場は6〜7割が本州からのお客様です。冬場には札幌からお越しになる方が多くなります。
お陰様でリピーターのお客様にも、季節ごとにご利用いただいています。コロナ禍以前には、インバウンドの函館観光と併せて海外のお客様のご利用がありました。
他にも、お宿の名前に因んで銀婚式の記念にご滞在いただくご夫婦の方も多くいらっしゃいます。銀婚式記念でご滞在のお客様には、記念写真の撮影や記念品をプレゼントさせていただいています。
温泉旅館 銀婚湯 川口 洋平さんがおすすめする温泉宿
◇編集部:「らくらく湯旅」ではリレー形式で温泉宿を紹介していきます。川口さんがおすすめする一度は泊まりたい温泉宿をご紹介いただけないでしょうか。
◆川口さん:私がおすすめする温泉は、北海道の支笏湖(しこつこ)にある丸駒(まるこま)温泉にある「丸駒温泉旅館」です。
◇編集部:なぜそちらの旅館がおすすめなのでしょうか。
◆川口さん:こちらのお宿は、国立公園支笏湖の湖畔にあり、現在は陸路でもアクセスできるようになっていますが、陸路が開通するまでは船でしか行けなかった温泉宿です。何と言ってもお湯が素晴らしいのです。
奇跡の湯とも言われて、日本全国でも数少ない足元湧出湯の天然露天風呂があり、眼前に広がる支笏湖の景観とともに、一度も大気に触れることなく湧出した自然の恵みで湯浴みを愉しめる素晴らしい温泉です。
<施設情報>
丸駒温泉 支笏湖丸駒温泉旅館
・住所:北海道千歳市支笏湖幌美内7
・電話:0123-25-2341
・アクセス:
<電車>JR千歳駅より、北海道中央バスで44分
<飛行機>千歳空港より、北海道中央バスで54分
<車>苫小牧中央 I.Cから約35分
温泉好き「らくらく湯旅」ユーザーへのコメント
◇編集部:らく湯旅:最後に、「らくらく湯旅」ユーザーへ一言おねがいします。
◆川口さん:当館は日常とかけ離れた大自然の中、広大な敷地を散策しながら湯巡りを愉しんでいただける恵まれた環境にあります。
秋の紅葉や新緑の淡い緑といった四季折々の悠久の大自然のなか、澄んだ美味しい空気を吸い湯浴みをしてのんびりとすごしていただけます。
当館では、代々伝わるおもてなしの作法として「お客様を銀の心でお迎えする」ことを心がけております。
最高級の金ではなく、銀の心でおもてなしすることで、お客様にも普段着で肩肘をはらずに実家に帰ったようにゆっくりとご滞在いただき、心身ともに癒すお手伝いが出来るようにおもてなしさせていただきますので、是非ともお越しくださいませ。
◇編集部:本日はお忙しい中、お時間を頂戴いたしましてありがとうございました。
北海道ならではの雄大なスケールを持つ広大な敷地に広がる大自然のなか、文化を継承して自然を活かして調和することに徹底したおもてなしの精神はとても素晴らしいものですね。
日常から離れて佇む野天風呂を巡り、四季折々にうつろう悠久の大自然を散策しながら、のんびりと心を休めてみてはいかがでしょうか。
<基本情報>
上の湯温泉 「温泉旅館 銀婚湯」
・住所:北海道二海郡八雲町上ノ湯199
・電話:0137-67-3111
・ホームページ:http://www.ginkonyu.com/
・アクセス:
<電車>JR函館本線 落部駅から送迎車で約15分。
<車>道央道落部 I.Cから約15分