【肘折温泉】源泉かけ流し湯治旅|開湯1200年の歴史と棚田の癒し体験


出典:旅東北
更新日:2025年10月30日

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湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

山形県最上郡大蔵村に位置する肘折温泉は開湯1200年の歴史を誇る山あいの湯治場です。

出羽三山の主峰・月山の麓、銅山川沿いに約20軒の旅館が軒を連ねる静かな温泉郷は今なお湯治場の風情を色濃く残しています。

すべての宿が源泉かけ流しの温泉を提供し、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉の良質な湯が心と体を癒してくれます。

温泉街では4月下旬から12月上旬頃まで名物の朝市が開催され、地元のお母さんたちとの温かな交流が旅の思い出を彩ります。

周辺には「日本の棚田百選」に選ばれた四ヶ村の棚田や地蔵倉などの見どころも点在し、懐かしい日本の原風景に出会える温泉地です。

開湯1200年の歴史ある肘折温泉と源泉かけ流し|湯治場として愛される温泉郷の魅力

出典:山形県観光物産協会

肘折温泉の歴史は平安時代の大同2年(807年)にまで遡ります。

伝説によると、豊後の国から来た源翁という老人が山中で道に迷った際、光り輝く老僧に出会いました。

その老僧こそが地蔵権現とされ、自らの肘をこの湯で癒したことから「肘折」の名が付いたと伝えられています。

以来、療養や外傷治癒を期待される湯治場として1200年以上にわたり人々に親しまれてきました。

温泉街は直径約2キロメートルの肘折カルデラの東端に位置し、銅山川沿いに情緒あふれる旅館が立ち並びます。

全ての宿で源泉かけ流しの温泉が提供されており、加温や循環をせずに自然の恵みそのままの湯を楽しめるのが魅力です。

1989年には「国民保養温泉地」に、1991年には「国民保健温泉地」に指定され、その泉質の高さは公的にも認められています。

また、肘折温泉は日本有数の豪雪地帯としても知られ、冬季には積雪が4メートルを超えることもあります。

この厳しい自然環境の中で受け継がれてきた湯治文化は今も変わらず息づいています。

地蔵倉や源泉公園など温泉にまつわる史跡も点在しており、歴史散策を通して温泉街の深い魅力を感じることができます。

上ノ湯共同浴場で源泉かけ流しの湯治体験|肘折温泉由来の「冷え湯」を堪能

出典:大蔵村観光協会

温泉街の中心にある上ノ湯共同浴場は肘折温泉発祥の湯として知られるシンボル的存在です。

地元住民や宿泊客に長年愛され続けており、浴槽の脇にはお地蔵様が祀られています。

源泉が湯船にそのままかけ流されており常に新鮮な湯を楽しめます。

入浴料は大人400円、小人300円とリーズナブル。宿泊者は無料で利用できる旅館もあります。

上ノ湯の特徴は、湯上がりのさっぱりとした「冷え湯」体験。

ナトリウム-炭酸水素塩泉の泉質により、古い角質を乳化・洗浄して肌をつるつるに導く美肌効果があり、「美人の湯」としても知られます。

湯治客の中には宿の温泉と上ノ湯を交互に入って泉質の違いを楽しむ人も見られ、温泉街ならではの湯巡り文化が息づいています。

時間帯によっては湯温が高めになることがあります。

入浴前には温度を確認し、必要に応じて埋め水をして調整しましょう。

朝市や散策の合間に立ち寄るのにも最適な共同浴場です。

丸屋旅館・大穀屋・松井旅館の源泉かけ流し|湯治場の伝統を受け継ぐ温泉宿

出典:大蔵村観光協会

肘折温泉には源泉かけ流しの湯にこだわる個性豊かな宿が並びます。

明治元年創業の「丸屋旅館」は150年以上の歴史ある木造建築を活かしたレトロモダンな宿。

2つの源泉からの引湯を合わせて使用し、露天風呂や「月山」客室の檜葉箱湯で100%源泉かけ流しの湯を楽しめます。

2018年にリニューアルされた「ひのきの湯」は、ひのきの香りが心を癒します。

「大穀屋」は貸切風呂が人気の老舗宿。「高砂の湯」や「離れ岩風呂」など、全てが源泉かけ流しです。

泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉で、肌ざわりが柔らかく体の芯まで温まります。

平均80℃の高温泉を加水・自然冷却で適温に調整しており、湯上がりのぽかぽか感が長く続くと評判です。

「松井旅館」は江戸時代に町医者を営んでいた家系が始めた宿で、明治期の建物が今も残ります。

24時間入浴可能な源泉かけ流しの湯を楽しめるほか、旅館の目の前が朝市会場という好立地も魅力。地元の人々との交流を楽しみながら、湯治場の原風景を肌で感じられる宿です。

いずれの宿も伝統を守りながら現代の快適さを提供し、長期滞在の湯治客にも人気です。

肘折温泉朝市で山菜とグルメ巡り|源泉かけ流し温泉旅で味わう旬の食材

出典:山形県観光物産協会

肘折温泉の名物といえば、4月20日から12月上旬頃まで毎朝開かれる「朝市」。

早朝、下駄の音が響く温泉街には四ヶ村地区の農家のお母さんたちが集まり、採れたての山菜や野菜、きのこ、笹巻き、しそ巻きなど地元の味覚がずらりと並びます。

浴衣姿の湯治客で賑わう光景は、肘折ならではの風物詩です。

春は山菜、夏は新鮮な野菜、秋はきのこと、季節ごとに旬の味覚を楽しめます。

中でも肘折の山菜は雪深い土地ならではの太さと柔らかさが自慢。

お母さんたちとの会話を楽しみながら買い物ができるのも魅力です。

自炊できる宿では購入した食材を調理して楽しむことも可能。

地産地消の文化を支える朝市は、肘折温泉の湯治文化とともに受け継がれています。

肘折温泉の源泉かけ流し温泉の概要|泉質と特徴を知る

出典:山形県観光物産協会

肘折温泉の魅力は温泉街すべての宿が源泉かけ流しを実現していること。

3つの源泉を有し、それぞれ湯の色や香り、肌ざわりが異なります。

泉質はナトリウム‐塩化物・炭酸水素塩泉で、塩分による保温効果・重曹による美肌効果・炭酸ガスによる血流促進作用という3つの特性を併せ持ちます。

源泉温度は高温で、pH 約6.9の中性で肌にやさしく、長湯にも適しています。

低張性の泉質という性質をもつ温泉では代謝促進や排出促進を期待でき、湯治目的の長期滞在にも最適。

肘折いでゆ館内には「温泉療養相談所」が設けられており、現代湯治のアドバイスを受けることも可能です。

1989年の国民保養温泉地指定、1991年の国民保健温泉地指定はその泉質の高さを示す証といえるでしょう。

肘折温泉の源泉かけ流し温泉の概要

項目 詳細
泉質 ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(低張性中性高温泉)
効能 切り傷、火傷、慢性皮膚病、リウマチ、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、骨折などの外傷、慢性消化器病、痔疾、冷え性、慢性婦人病、病後回復、疲労回復、健康増進
源泉温度 約80〜87℃
pH値 約6.9(中性)
湧出量 豊富(各旅館・施設で源泉かけ流し可能)
特徴 ・塩分による高い保温効果「あたたまりの湯」
・重曹による角質除去・洗浄作用「美人の湯」
・炭酸ガス(約400mg/kg)による血流促進
・低張性によるデトックス効果
・3つの源泉(1号・2号・5号)の違いを楽しめる
・全宿が源泉かけ流し
・1989年「国民保養温泉地」、1991年「国民保健温泉地」指定
参考 肘折温泉公式サイト:https://hijiori.jp
大蔵村観光協会:https://ohkura-kanko.com

肘折温泉の魅力

出典:山形県観光物産協会

肘折温泉は開湯1200年の歴史を誇る山形県の名湯。

全ての宿で源泉かけ流しの温泉を楽しめ、ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉の湯が心身を芯から温めてくれます。

上ノ湯共同浴場での「冷え湯」体験や、丸屋旅館・大穀屋・松井旅館などの老舗宿での滞在、朝市での人情あふれる交流、日本の棚田百選・四ヶ村の棚田など、見どころも満載。

塩分・重曹・炭酸ガスの相乗効果による保温・美肌効果を持つ肘折の湯で、都会の喧騒を離れ心まで癒される湯治の時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。