“しゅわり”と静けさを巡る【長湯温泉】 源泉かけ流しの一日


出典:竹田市観光ツーリズム協会
2026年1月12日更新

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

御前湯の暖簾をくぐると、ふっと体の力が抜けました。

ここは大分県竹田市、芹川沿いに広がる長湯温泉の中心に位置し、古くから湯治場として親しまれてきた土地です。

湯面に近づくほど炭酸の香りがやさしく立ち、肌に細かな気泡がまとわりつく感覚が楽しい。熱すぎない温度が心地よく、呼吸も自然と深くなっていきます。

長湯温泉の源泉かけ流しは、高原の澄んだ空気と相まって、肩の力がゆるむまで待ってくれるような湯でした。
湯上がりに川風が通ると、体の内側から温まっているのがわかります。
そんな余韻を連れて、もう一度湯へ。小さな往復が、旅のリズムになっていきます。

「くじゅう花公園」 高原の色彩に身をゆだねるひととき

出典:くじゅう花公園

長湯温泉から車でほど近い高原に広がるくじゅう花公園は、阿蘇くじゅう国立公園内の雄大な自然を背景に季節ごとの花が静かに咲きそろう場所です。

春はチューリップやネモフィラ、夏はラベンダーやひまわり、秋にはコスモスが風に揺れ、視界いっぱいに色がひらきます。

園内を歩くと、標高のある土地らしい澄んだ空気が胸に入り、歩幅も自然とゆるやかに。

湯上がりの体で訪れれば、温泉の余韻と高原の風が重なり、感覚が少しずつ外へ開いていくのを感じます。

花を眺め、空を仰ぎ、立ち止まる。その繰り返しが長湯温泉の旅にやさしい奥行きを与えてくれます。

「御前湯」で味わう長湯温泉の源泉かけ流し


出典:竹田市観光ツーリズム協会

長湯温泉の中心に佇む御前湯はこの地の湯の性格をまっすぐに伝えてくれる存在です。

芹川のほとりに建つ湯屋へ足を運ぶと、川風とともに静かな空気が迎えてくれます。湯船に満ちるのは長湯温泉ならではの源泉かけ流し。
炭酸を含んだ湯が肌に触れると細かな刺激が心地よく、体の奥からゆっくり目が覚めていくようです。

御前湯では内湯や露天など異なる湯船で温度や外気の混ざり方を確かめながら浸かることができます。
湯は無色透明でやわらかく、長く浸かっても重たさが残りにくいのが印象的。
湯口から注がれる音、湯面に映る光、川の流れがつくる一定のリズムが、呼吸を自然に整えてくれます。

観光客にも地元の人にも親しまれてきた御前湯は特別な演出を施すことなく、湧いたままの湯を受け止めてきました。
長湯温泉の源泉かけ流しを知るなら、まずここへ。

御前湯で過ごす時間は湯そのものの力と、この土地が育んできた静けさを素直に体へ届けてくれます。

「ラムネ温泉館」の源泉かけ流しと“しゅわり”の瞬間


出典:ラムネ温泉館

長湯温泉を語るうえで欠かせないのが、ラムネ温泉館の存在です。

芹川沿いに建つ木造の湯屋に足を踏み入れると、ここが「浸かる前から体験が始まっている」場所だと気づきます。
湯船に満ちるのは、源泉かけ流しの低温炭酸泉。肩まで沈むと、肌の表面に細かな泡がまとわりつき、ほどなく“しゅわり”とした感覚が立ち上がります。

この泡は人工的なものではなく、自然に湧いた炭酸ガスによるもの。
ぬるめの湯温だからこそ、長く浸かることができ、血流がゆっくりと促されていくのがわかります。

湯から上がると、体は軽く、頭は不思議と冴えている。温まりすぎないのに、芯は整っている。その感覚こそが、ラムネ温泉館ならではの余韻です。
長湯温泉の源泉かけ流しが持つ多様な表情を知るなら、この“しゅわり”の瞬間はぜひ体で確かめておきたい体験です。

「大丸旅館」で寛ぐ長湯温泉の源泉かけ流し

出典:竹田市観光ツーリズム協会

長湯温泉の老舗として知られる大丸旅館は芹川の流れに寄り添いながら、この地の湯と静けさを受け止めてきました。

館内に足を踏み入れると、派手さを抑えた設えと落ち着いた空気が迎えてくれ、自然と呼吸が深くなっていきます。
客室から湯処までの動線も穏やかで、移動そのものが気持ちを整える時間になります。

湯船に満ちるのは長湯温泉ならではの源泉かけ流し。
炭酸を含んだ湯はやわらかく、肌に触れると細かな刺激が静かに広がります。
内湯では湯そのものに意識が向き、露天では川音や外気が重なり、同じ湯でも表情が変わるのが印象的です。
長く浸かっても重たさが残りにくく、体の芯からゆっくりと整っていきます。

湯上がりには川の気配を感じながらひと息。何かを足すのではなく、余分を削ぎ落とすような滞在が、大丸旅館の魅力です。
長湯温泉の源泉かけ流しと向き合い、静かに寛ぐ。その時間が、旅の余韻として穏やかに体に残っていきます。

長湯温泉の源泉かけ流し温泉の概要


出典:竹田市観光ツーリズム協会

長湯温泉は炭酸を豊富に含む湯で知られ、ぬるめの温度でゆっくり長く浸かるのが似合います。湯は肌当たりがやさしく、入浴後の血のめぐりの良さを実感しやすいのが魅力です。

湯面に浮かぶ気泡は見た目にも楽しく、湯上がりの心地よい余韻を長く引き延ばしてくれます。飲泉の文化が息づく土地柄で、湯と向き合う所作にもどこか落ち着きが漂います。

御前湯やラムネ温泉館、大丸旅館などで源泉かけ流しの湯に触れれば、それぞれの浴槽ごとに表情の違いを感じられます。いずれも掲示の作法に沿って無理のない入浴を大切にすることが肝心です。

歩いて巡れる温泉街のスケール感も、滞在の心地よさに拍車をかけます。小さな移動に小さな発見が宿るのが長湯の良さです。

泉質は含二酸化炭素―炭酸水素塩泉(炭酸泉)。
効能は血行促進、冷え性改善、動脈硬化症・高血圧症の改善、切り傷・やけど・慢性皮膚病の改善です。

源泉温度は約32℃前後の低温泉で、pH値は約6.5前後の中性寄りで、湧出量は自噴を伴う豊富な湧出の日本有数の高濃度炭酸ガスで肌に気泡が付く“ラムネの湯”と入浴・飲泉の温泉療養文化が特徴の温泉です。

旅の余韻

出典:竹田市観光ツーリズム協会

長湯温泉で過ごした時間を振り返ると、強く残るのは刺激ではなく、体の内側にゆっくり染み込んだ感覚です。

御前湯の落ち着き、ラムネ温泉館の“しゅわり”とした炭酸、大丸旅館での静かな湯時間。

それぞれ異なる表情の源泉かけ流しが、呼吸や歩幅を少しずつ整えてくれました。

湯から上がり、川の音や高原の風に触れるたび、温泉と風景がひと続きだったことに気づきます。

長湯温泉の旅は、終わったあともふとした瞬間に体が思い出す。そんな穏やかな余韻を残してくれます。