【木賊温泉】源泉かけ流しと南会津、時をほどく湯と宿場町の旅
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湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
山あいに分け入るにつれ、喧騒は少しずつ遠ざかり、代わりに川音と風の気配が旅人を迎えてくれます。
福島県南会津町に湧く木賊温泉(とくさおんせん)は、岩風呂に身を沈めることで自然と向き合う時間を思い出させてくれる場所です。
その周囲には、大内宿の茅葺きの町並みや塔のへつりが描く渓谷美など、長い歳月が育んだ風景が点在しています。
目次
大内宿。江戸の面影が息づく、茅葺きの宿場町

福島県南会津町にある大内宿は、江戸時代に会津若松と日光を結んだ下野街道の宿場町として栄えた場所です。
通りの両側には茅葺き屋根の民家が整然と並び、電柱や電線を極力排した景観はまるで時代を遡ったかのような静けさを湛えています。
現在も多くの建物が生活の場として使われながら、そば処や土産物店としても開かれ、名物の「ねぎそば」に代表される郷土文化を体感できます。
四季折々で表情を変える町並みは春の芽吹き、夏の深緑、秋の紅葉、そして雪に包まれる冬景色まで、それぞれに趣深く、木賊温泉を訪れる旅の途中に立ち寄れば、湯と歴史、両方の余韻を心に残してくれるでしょう。
塔のへつり。浸食が刻んだ奇岩と渓谷美
福島県南会津町にある塔のへつりは長い年月をかけて大川(阿賀川)の流れが削り出した奇岩群が連なる渓谷です。
「へつり」とは会津地方の方言で川岸や断崖を意味する言葉。
その名の通り、塔のようにそそり立つ岩が連続し、自然の力強さと造形美を間近で感じられる景勝地として知られています。
岩肌に沿って設けられた遊歩道や吊り橋を渡りながら眺める景色は迫力があり、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。
新緑が映える初夏、紅葉に染まる秋、そして雪と氷が静寂を深める冬の風景はいずれも印象的です。
木賊温泉で湯に浸かった後に訪れれば、温泉の余韻とともに南会津の雄大な自然を深く味わうひとときとなるでしょう。
大内宿の名産「ねぎそば」で土地の記憶を味わう、素朴な郷土の恵み

出典:大内宿 三澤屋
大内宿を訪れたなら、まず味わいたいのが名物として知られる「ねぎそば」です。
箸の代わりに一本の長ねぎを使ってそばを食べる独特のスタイルは見た目のインパクトだけでなく、ねぎの香りとそばの風味が重なり合う素朴な味わいが魅力です。
茅葺き屋根の民家を改装したそば処でいただく一杯は宿場町として栄えた当時の暮らしを想像させ、食事そのものが旅の体験となります。
ほかにも、会津地方の保存食文化を今に伝える栃餅や、地元産そば粉を使った乾麺、手作りの漬物や味噌など、どれも派手さはないものの土地に根ざした味ばかりです。
散策の合間に名産に触れることで、大内宿の風景はより立体的に心に残り、南会津の旅全体に静かな深みを与えてくれるでしょう。
木賊温泉 岩風呂。川音に身を委ねる、南会津屈指の野趣湯

出典:南会津町観光物産協会
島県南会津町に湧く木賊温泉を象徴する存在が、渓流沿いに設けられた岩風呂です。
大川のすぐそばに岩を組み上げて造られた浴槽は自然と一体化したような佇まいで、湯船に身を沈めると川音が静かに耳へ届きます。
源泉は高温でありながら、岩風呂では外気と混ざり合うことでやわらかな湯加減となり、長湯しやすいのも特徴です。
古くから地元の人々に親しまれてきた共同浴場で、現在も混浴という昔ながらの入浴文化が守られています。
開放感あふれる湯景色は秘湯と呼ぶにふさわしく、人工物の少ない環境が心身の緊張をほどいてくれます。
静かな山里で湯に浸かる体験は、木賊温泉ならではの記憶として旅の深い余韻を残してくれるでしょう。
木賊温泉の源泉かけ流し温泉の概要

出典:南会津町観光物産協会
木賊温泉は南会津町の山あい、渓流沿いに湧く湯どころです。湯は浴槽へたえず注がれ、溢れた分が川音にまぎれて消えていきます。
共同浴場には川に寄り添う露天風の岩風呂と、落ち着いた室礼の湯小屋があり、いずれも湯の鮮度が命です。
湯温は季節や湯口の近さで印象が変わり、体感の幅もまた楽しみの一部になります。湯上がりは肌がきゅっと整い、風が一段とやわらかく感じられます。
渓谷の緑や雪景色が湯気に重なり、五感がほどけるような寛ぎをもたらします。無理のない時間配分で自然のリズムに身を委ねてください。
泉質は単純硫黄泉(アルカリ性低張性温泉)を中心とする含硫黄泉系。
効能は神経痛、筋肉痛、関節痛、慢性皮膚病、切り傷、冷え性、疲労回復です。
源泉温度はおおむね40〜50℃前後で、pH値は弱アルカリ性からアルカリ性(概ねpH8前後)で、湧出量は源泉や施設ごとに差のある自噴主体の渓流沿いの岩間から湧く野趣あふれる共同露天と静かな湯治場風情、源泉かけ流し主体の湯使いが特徴の温泉です。
旅の余韻

茅葺きの町並みを抜け渓谷の岩肌に触れ、そして湯けむりの立つ岩風呂に身を委ねる。
南会津の旅はどれもが静かに心へ染み込む体験です。
華やかさよりも長い時間をかけて守られてきた暮らしや自然の気配が歩調を自然と緩めてくれます。
木賊温泉で火照った身体に山の風を受けながら振り返ると、景色や味、湯の感触がひとつの記憶として結びつき、旅は終わっても余韻だけが穏やかに残ります。その余韻こそが、またこの地を訪れたくなる理由なのかもしれません。




