湯と祈りが重なる里|【別所温泉】源泉かけ流し


出典:別所温泉旅館組合
2026年02月17日更新

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湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

長野県上田市にある別所温泉は、信州最古の湯と伝わる歴史ある温泉地。

北向観音をはじめとする古刹が点在し、湯治と信仰が自然に寄り添ってきました。

慈覚大師や木曽義仲、北条氏といった人物の名が今も湯に残り、共同浴場には時代を超えた物語が息づいています。

湯に浸かり、寺社をめぐる。別所温泉は、静かな時間の中で歴史と向き合える大人の旅先です。

北向観音・安楽寺・常楽寺へ|湯の町の寺社めぐり

 
出典:安楽寺

 

別所温泉は、信州最古の温泉地として知られ、湯と祈りが寄り添う町です。

温泉街を歩けば、坂道の先々に歴史ある寺社が点在し、穏やかな時間が流れています。

中心となる北向観音は、現世利益を願う場として親しまれてきた古刹。全国的にも珍しい北向きの観音堂が、別所温泉らしい信仰の形を伝えています。

日本唯一の木造八角三重塔を持つ安楽寺では、国宝の塔が山あいの静けさの中に佇み、時を超えた美しさを感じさせます。

続く常楽寺は、素朴な境内に北条氏ゆかりの歴史を残す古寺です。

湯に浸かり、寺社をめぐる。別所温泉の散策は、心を整える静かな旅へと導いてくれます。

映画やドラマに映る 長野県・別所温泉のロケ地


出典:松竹

別所温泉は、古い町並みや温泉街の雰囲気が評価され、多くの映画やドラマのロケ地としても使われてきました。
昭和の旅情を感じさせる情景が、スクリーンの中で何度も蘇っています。

代表的な作品には、渥美清主演の国民的シリーズ映画『男はつらいよ 第18作 寅次郎純情詩集』(1976年)があり、別所温泉駅や町の風景が作品の一部として登場しています。

また、1986年の恋愛映画『彼のオートバイ・彼女の島』でも温泉街の佇まいが背景として使われました。

さらに、1998年のコメディ映画『卓球温泉』では、別所温泉の街並みや共同浴場などが舞台となり、温泉地らしい空気感が作品に彩りを添えています。

こうした作品を思い浮かべながら町を歩くと、湯けむりの向こうに映画の一場面が重なる。

別所温泉ならではの“物語を感じる散策”が楽しめます。

 

真田幸村隠しの湯と伝わる 別所温泉「石湯」


出典:別所温泉旅館組合

石湯は、別所温泉に残る共同浴場のひとつで、戦国武将・真田幸村が戦傷を癒やした「隠しの湯」と伝えられています。

北向観音の参道近くに位置し、湯治と信仰が結びついてきた別所温泉の歴史を今に伝える存在です。

浴槽や床に使われた石造りの造りが名の由来で、こぢんまりとした空間ながら、湯の力強さをじかに感じられるのが魅力。

源泉かけ流しの湯に身を沈めると、観光地のにぎわいから切り離された、素朴で静かな時間が流れます。

物語を秘めた湯に触れることで、別所温泉の奥行きをより深く味わえる一湯です。

慈覚大師ゆかりの湯 別所温泉「大師湯」


出典:別所温泉旅館組合

大師湯は、平安時代の高僧・慈覚大師円仁が開いたと伝わる、別所温泉を代表する共同浴場です。

湯治と信仰が結びついた温泉地の歴史を象徴する存在で、古くから人々の心身を癒やしてきました。

浴室は素朴で落ち着いた佇まい。源泉かけ流しの湯はやわらかな肌触りで、じんわりと体の芯まで温めてくれます。

華やかさよりも、湯そのものと向き合う時間を大切にしたい人にこそふさわしい一湯。

静かな湯けむりの中で、別所温泉の原点に触れるようなひとときを味わえます。

木曽義仲ゆかり葵の湯〜北条氏ゆかりの湯 別所温泉「大湯」


出典:別所温泉旅館組合

大湯は別所温泉を代表する共同浴場で、源氏の武将・木曽義仲ゆかりの「葵の湯」と、北条氏ゆかりの湯の伝承をあわせ持つ歴史深い一湯です。

湯の名に刻まれた幾重もの物語が、この温泉地が歩んできた時代の厚みを物語ります。

広めの浴槽を備えた大湯は共同浴場の中でも開放感があり、旅人や地元の人が自然と集う場所。

源泉かけ流しの湯は力強く、しっかりとした温まりを感じさせてくれます。

戦乱の世を生きた武将たちも癒やされたと伝わる湯に浸かることで、別所温泉が育んできた歴史と、人々の営みの連なりに静かに思いを巡らせることができます。

別所温泉の源泉かけ流し温泉の概要


出典:別所温泉旅館組合

信州最古級の湯の里と親しまれる別所温泉は、肩肘張らずに湯と町を行き来できる心地よいスケールです。中心部には大湯・石湯・大師湯の外湯が点在し、歩きやすい路地が湯めぐりの背中を押してくれます。

宿の湯でも源泉かけ流しを大切にする姿勢が息づき、湯が素直な温度と香りで満ちています。朝湯から夜の一浴まで、旅の呼吸に合わせて何度でも湯へ戻れるのがこの町のいちばんの魅力です。

泉質はアルカリ性単純温泉を主とする単純泉系、源泉により単純硫黄泉を含む構成。

効能は神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・打ち身・冷え性・慢性消化器病・疲労回復・健康増進・美肌、硫黄泉適応として慢性皮膚病・慢性婦人病・糖尿病・切り傷です。

源泉温度は概ね45〜52℃の高温泉で、pH値は弱〜強アルカリ性域のpH約8.5〜9.3。

湧出量は各源泉で毎分数十〜数百リットル規模の自噴・動力揚湯。

なめらかな肌ざわりの“美人の湯”の浴感、硫黄香を帯びる源泉の点在、外湯文化と源泉かけ流しを掲げる宿の多さ、信州最古級の温泉地としての歴史的街並みが特徴の温泉です。

旅の余韻


出典:別所温泉旅館組合

別所温泉の湯はただ体を温めるだけでなく、時代を超えて受け継がれてきた物語をそっと伝えてくれます。

武将や僧、名もなき湯治客が浸かってきた湯に身を沈めると、この土地が歩んできた時間の厚みが静かに胸に残ります。

寺社をめぐり、共同浴場を巡る一日を終えたあとに残るのは、派手さではなく、穏やかな充足感。

別所温泉は、湯と歴史が溶け合うことで生まれる、深い余韻を大切に味わえる温泉地です。