伊達政宗が愛した秘湯【青根温泉】源泉かけ流し|開湯500年の御殿湯と蔵王の山景


出典:湯元不忘閣
2026年04月05日更新

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湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

宮城県川崎町、蔵王連峰の南麓、花房山の中腹に静かに湧く青根温泉。

仙台から車で1時間ほど、山あいの国道を分け入っていくと、標高500メートルの緑の中に小さな温泉街が姿を現します。

5〜6軒の宿と共同浴場が寄り添うように並ぶこの地は、戦国の世から今日まで500年近くにわたって人々の心と体を癒し続けてきました。

蔵王の山景と川崎の自然 四季を感じる旅

出典:宮城県

青根温泉は、蔵王連峰の懐に抱かれた温泉地です。

東方には展望が大きく開け、晴れた日には遠く太平洋や金華山まで望める眺望の良さも、この温泉地が持つ特別な魅力のひとつです。

すぐそばには峩々温泉へと続く濁川の渓谷があり、春の新緑、秋の紅葉と、季節ごとに山の表情が変わります。

蔵王エコーラインを登れば、エメラルドグリーンに輝く火口湖「御釜」の絶景へとたどり着くことができます。

山岳道路沿いの雄大な景色を眺めながらのドライブもまた、青根温泉の旅を豊かにしてくれます。

山あいの静けさの中で四季の移ろいを感じ、湯に浸かる。そのシンプルな時間こそが、青根温泉の旅の本質です。


蔵王の恵み 山と三陸の海が交わる食卓

出典:湯元不忘閣

青根温泉の宿の食卓には、蔵王の山と三陸の海、両方の恵みが並びます。

蔵王山麓で育まれた高原野菜は寒暖差がもたらす甘みを持ち、三陸産の新鮮な海の幸は、山の宿でありながら豊かな海の味を届けてくれます。

地元の旬の食材を丁寧に仕立てた会席料理は、品数も多く一皿一皿に手間がかかっています。

仙台名物の笹かまぼこが添えられた朝食や、伊達家の家紋「竹に雀」が施された器で供される椀物など、食卓のそこかしこに東北の歴史と文化が息づいています。

蔵王牛や地元産の山菜、きのこなど、里山の恵みをいただきながら、湯上がりの静かな夜がゆっくりと更けていきます。


開湯500年 伊達政宗が「忘れまじ」と讃えた名湯

出典:湯元不忘閣

青根温泉の歴史は、1528年(享禄元年)にさかのぼります。

在地の豪族がアオヌキという木の根元から湯が湧き出しているのを見つけたことが始まりとされ、「アオヌキの根元」から「青根」という名が生まれたと伝えられています。

開湯間もなく仙台藩伊達家の御用湯となり、歴代の藩主が湯治に訪れました。

なかでも伊達政宗は、この湯の素晴らしさに深く感激し「この地忘れまじ」と言い残したとされています。

それが後に「不忘」という言葉となり、この温泉地に残り続けています。

泉質は7か所の源泉をブレンドした弱アルカリ性単純泉で、無色透明・さらさらとした肌あたりが特徴です。

加水・加温なしの源泉かけ流しで、神経痛・リウマチ・疲労回復などに効能があるとされ、戦国の武将から現代の旅人まで、500年にわたって人々の体を整えてきた湯です。


湯元不忘閣 伊達家の御殿湯を今に守る宿

出典:湯元不忘閣

青根温泉を代表する宿が、創業1528年・21代続く老舗「湯元不忘閣」です。

慶長年間に伊達公から「湯別当」の役を授かって以来、代々にわたって藩主の保養所を守り続けてきた宿で、敷地内には国の登録有形文化財に指定された「青根御殿」が今も静かにたたずんでいます。

浴場は全部で6か所。なかでも伊達藩主の御殿湯として使われた「大湯 金泉堂」は総青森ヒバ造りの壮大な浴室で、源泉かけ流しの湯が静かに満たされています。

蔵の中に設けられた「蔵湯浴司(よくす)」は貸切で使用でき、神聖な空気の中でひっそりと湯に浸かれる特別な空間です。

伊達政宗が入湯したと伝わる「新湯」の石風呂は、400年前から変わらぬ石組みのまま今も湯を湛えています。

毎朝、チェックアウト前には女将の案内で青根御殿の見学が行われ、伊達家ゆかりの武具・調度品・古文書などに触れながら歴史の重みを感じることができます。

山本周五郎がここに逗留し、窓から見えるモミの巨木を眺めながら代表作「樅の木は残った」の一部を執筆したことも、この宿が刻んできた文化の深さを物語っています。


青根温泉の源泉かけ流し概要

出典:湯元不忘閣

泉質: 低張性弱アルカリ性単純泉(7か所の源泉をブレンド)

源泉温度: 30〜71℃(源泉により異なる)

湧出量: 複数源泉による豊富な湯量

pH値: 弱アルカリ性

効能: 神経痛・リウマチ・眼病・胃腸病・慢性消化器病・冷え性・疲労回復・健康増進

特徴: 開湯500年・伊達家御用湯の格式、7源泉をブレンドした珍しい6つ混合温泉、無色透明さらさらの肌あたり、共同浴場「じゃっぽの湯」(大人300円)で日帰り入浴も可能


旅の余韻

出典:湯元不忘閣

青根温泉を後にしても、湯のやわらかさがしばらく肌に残ります。

伊達政宗が「忘れまじ」と言い残したその湯に、500年の時を隔てて自分も浸かっている。そう思うだけで、湯の温もりがいっそう深く感じられます。

山あいの静けさの中で、時間がゆっくりと流れる場所。

蔵王の山景と歴史の重みが重なり合う青根温泉は、訪れるたびに何か大切なものを取り戻させてくれるような、そんな旅の場所です。