野口雨情・種田山頭火も愛した【京町温泉】源泉かけ流し|霧島連山の麓に湧く「雷温泉」の里
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湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
宮崎県えびの市、霧島連山の北西、川内川の流れに沿って広がる京町温泉。
九州自動車道えびのインターから5分ほど走ると、住宅街の中に湯けむりが立ちのぼる小さな温泉街が現れます。
歓楽色はなく、地元の常連客が普段着で暖簾をくぐるような、ほのぼのとした風情。
かつては野口雨情や種田山頭火もこの地を訪れ、詩情豊かな湯の里として文学碑を残していきました。
目次
霧島の大自然 えびの高原と火口湖を巡る旅

京町温泉から車を走らせると、すぐそこに霧島錦江湾国立公園の壮大な自然が広がっています。
標高1,200メートルのえびの高原は、霧島連山に抱かれた火山が生み出した景観の宝庫です。
春から初夏にかけては、世界中でここだけに自生する天然記念物のノカイドウと、高原一面を鮮やかなピンク色に染めるミヤマキリシマが見頃を迎えます。
秋はススキの草原と紅葉が山を染め、冬には枝を美しく飾る樹氷が現れます。
不動池・六観音御池・白紫池など点在する火口湖は、日によって湖面の色が変わる神秘的な景色を見せてくれます。
韓国岳をはじめとするトレッキングコースも充実しており、高原の澄んだ空気の中で大地の息吹を全身で感じたあと、京町温泉の湯に浸かる。その流れが、えびの旅の王道となっています。
えびの・霧島の恵み 南九州の食が集まる食卓

出典:農林水産省
えびの市は、霧島連山のふもとに広がる肥沃な土地です。
宮崎牛をはじめとする上質な畜産物、川内川で育まれた川魚、そして宮崎が誇る地頭鶏の炭火焼きなど、南九州の豊かな食材が揃います。
地頭鶏の炭火焼きは宮崎を代表する郷土料理で、独特の香ばしさと噛むほどに広がる旨みが特徴です。
川内川で水揚げされるうなぎの蒲焼きも、この地ならではの味わいで、宿の夕食に並ぶと思わず箸が進みます。
また、宮崎の夏の定番「冷や汁」も忘れられない一品です。
きゅうりや豆腐、みょうがを合わせた味噌仕立ての冷たい汁を白飯にかけていただくこの料理は、農山漁村の郷土料理百選にも選ばれた滋味深い味です。
霧島の焼酎とともに、えびのの夜をゆっくりと過ごすのもまたよいものです。
落雷で湧き出した伝説の湯 「雷温泉」から始まる百年の歴史

出典:えびの市役所
京町温泉の開湯は大正初期のことです。
掘削工事中に落雷が起き、その衝撃で突如として温泉が噴き出したといわれています。
あまりに劇的な出来事だったため、当初は「雷温泉」と呼ばれていました。その後、大正から昭和にかけて掘削が進み、温泉街として形成されていきました。
温泉街には野口雨情と種田山頭火の文学碑が立っています。
「シャボン玉」や「赤い靴」で知られる野口雨情も、この素朴な湯の里に詩情を感じ、足を運んだ一人です。
種田山頭火もまた、放浪の旅の中でこの地の湯に浸かり、句を詠んだと伝えられています。
派手さのない昔ながらの温泉地の風情が、詩人や俳人たちの心を引きつけたのでしょう。
やわらかく肌に馴染む湯は「美人の湯」としても親しまれており、湯上がりの肌がしっとりと整います。
京町温泉玉泉館 神秘の洞窟風呂が宿る老舗

出典:京町温泉 玉泉館
京町温泉を代表する宿のひとつが、大正4年(1915年)創業の「京町温泉玉泉館」です。
創業100年を超える老舗宿として、地元に愛され続けてきました。
この宿の最大の名物が「洞窟風呂」です。まるで森の中へ続くような小道を抜けた先にある神秘的な空間で、「すっぽんぽん風呂」とも呼ばれる源泉かけ流しの洞窟の湯を24時間楽しめます。
泉質はアルカリ単純泉で、筋肉痛や美肌への効果が期待できます。
過剰なサービスよりも「のんびり落ち着ける庶民的な宿」として長年親しまれてきた玉泉館は、えびのの肥沃な土地で育まれた食材と活魚を使った会席料理も自慢です。
旅の疲れをゆっくり癒したい方に、ふさわしい一軒です。
京町温泉の源泉かけ流し概要

出典:京町温泉 玉泉館
泉質: 弱アルカリ性単純泉・アルカリ性炭酸泉(源泉により異なる)
源泉温度: 45〜68℃
源泉数: 43か所
湧出量: 平均60リットル/分
pH値: 弱アルカリ性〜アルカリ性
効能: 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・冷え性・疲労回復・切り傷・やけど・慢性消化器病・美肌
特徴: 大正初期の落雷により湧出した「雷温泉」の歴史、43か所の源泉を持つ宮崎県随一の温泉街、野口雨情・種田山頭火の文学碑が立つ詩情豊かな湯の里、飲用も可能、えびの高原・霧島の観光中継地として便利なロケーション
旅の余韻

京町温泉の湯上がりに外へ出ると、霧島の山々の稜線が夕空に浮かびます。
落雷という偶然から生まれ、百年以上にわたって人々を癒し続けてきた湯。
詩人が立ち止まり、旅人が足を休め、地元の人々が普段着で通う、飾らない温泉地の風情は今も変わりません。
えびの高原の大自然を歩き、南九州の食を味わい、弱アルカリの湯にゆっくり浸かる。
霧島連山の麓に湧くこの小さな湯の里は、特別なものが何もないからこそ、心に残る場所です。



