北海道遺産・太古の植物が育む【帯広温泉郷】源泉かけ流し|世界希少なモール温泉と豚丼・十勝スイーツの旅
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湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
北海道・十勝平野の地下深くに、300万年以上前の植物の記憶が眠っています。
北海道帯広市とその周辺に広がる「帯広温泉郷」の湯は、太古の葦や針葉樹が地中に堆積した亜炭層を通って湧き出る「モール温泉」。
植物性の有機物(フミン酸・フルボ酸)を含む琥珀色の美肌湯で、2004年(平成16年)に北海道遺産として認定された世界的にも希少な温泉です。
驚くべきことに帯広市内だけで約20か所の温泉施設が点在し、街の銭湯でも当たり前のようにモール温泉が湧き出す。
そんな「温泉が生活に溶け込んだ街」は、全国でも類を見ません。
目次
十勝平野の温泉の街へ モール温泉が生まれる仕組み

帯広温泉郷は、北海道十勝総合振興局管内・帯広市を中心に、音更町・十勝川温泉地区まで広がる温泉地域です。
とかち帯広空港から車で約10〜40分、札幌から道東自動車道を利用して車で約3時間20分、JR特急「とかち」「おおぞら」で新千歳空港から約2時間30分というアクセスです。
モール温泉が生まれる仕組みはユニークです。
十勝平野の地層は上から火山灰土・泥炭層・亜炭層・岩盤層と続いており、300万〜1500万年前の針葉樹や葦などが堆積した亜炭層を、地殻変動による摩擦熱で温められた地下水が通過することで「モール温泉」が生まれます。
亜炭・泥炭に含まれる腐植物質(フミン物質)が溶け込んだこの湯は、湧き出た時点からすでに琥珀色。
ほかの多くの温泉が空気に触れてから変色するのと異なり、モール泉は生まれながらにして色を持っています。
帯広市街では地下1,000メートル以上から50℃前後の湯が、十勝川温泉では地下500〜700メートルから55〜60℃の高温泉が湧出しており、豊富な湯量が街全体の生活に浸透しています。
ばんえい競馬・六花亭・ガーデン街道 帯広・十勝の観光

帯広・十勝を訪れると、ほかのどの地域にもない体験が待っています。
「ばんえい十勝」は帯広競馬場で開催される世界で唯一の競馬です。
200〜1000キログラムの鉄製ソリを引いた競走馬が砂の直線コースを力と速さで競い合う迫力は、初めて見る旅人を必ず虜にします。
3月下旬〜4月中旬を除く毎週末開催で、隣接する「とかちむら」では地元農産物の買い物や食事も楽しめます。
「六花亭」「柳月」「クランベリー」「マルカツ」など全国に知られる菓子店が多数生まれた十勝は、北海道スイーツの聖地でもあります。
大地の恵みである小麦・乳製品・小豆・ビートなどが一級品のスイーツを生み出し、各店の本店や工場見学は甘いもの好きの旅人の憧れです。
また帯広市近郊には「真鍋庭園」など北海道ガーデン街道の名園が点在しており、花と緑と温泉を組み合わせた旅が楽しめます。
豚丼・十勝スイーツ・乳製品 大地の恵みを食べる

帯広を語るとき、食を抜きにすることはできません。
「豚丼」は帯広発祥のB級グルメです。
甘辛いたれで焼いた豚肉を白飯に乗せたシンプルな一品は、帯広の豚肉文化が生んだ名物で、市内の専門店がそれぞれ独自のたれと調理法で競い合います。
地元ライターが選ぶ豚丼ベスト店をはしごする旅人も少なくありません。
十勝は北海道一の農業地帯でもあり、じゃがいも・小麦・てん菜・大豆・小豆の生産量は国内トップクラス。
乳牛の頭数も多く、十勝の新鮮な牛乳・バター・チーズは日本の食卓を支えています。
帯広駅近くの屋台村「北の屋台」では約20店舗が軒を連ね、十勝の食材を使った料理と地酒で夜の帯広を楽しむ旅人で連夜賑わっています。
銭湯でも非日常 琥珀色のモール泉・源泉かけ流し体験

帯広温泉郷で最も驚くべきことのひとつが「街の銭湯がモール温泉」という事実です。
「天然温泉アサヒ湯」(帯広市東3条)は昭和23年創業の小さな銭湯で、銭湯価格のまま敷地内に源泉を持つ源泉100%かけ流しのモール温泉が楽しめます。
浴槽の中から直接源泉が注がれるため空気に触れることなく、体に無数の気泡が付着するほどの鮮度。
琥珀色の湯にぬるりと体を沈めると、肌が天然のトリートメントに包まれる感覚が広がります。
「帯広に住む人が羨ましい」とリピーターが口を揃える、地元に根付いた名湯です。
モール温泉の泉質はナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉(弱アルカリ性低張性高温泉)が主体。
弱アルカリ性の成分が肌の角質をやわらかく落とし、フミン酸・フルボ酸といった植物由来の有機成分が皮膚の再生を促し保湿します。
化粧水のような保湿効果と浸透性が「美人の湯」と呼ばれる所以です。
十勝川温泉と帯広市内の湯めぐり

出典:帯広リゾートホテル
帯広温泉郷には2つの顔があります。
帯広市街の銭湯・ホテル温泉では、アサヒ湯・オベリベリ温泉 水光園・丸美ヶ丘温泉・自由ヶ丘温泉・ひまわり温泉 森の郷・北海道ホテルなど約20か所が点在し、いずれも銭湯価格に近いリーズナブルな料金でモール温泉を楽しめます。
豚丼や十勝スイーツを楽しんだ後に気軽に立ち寄れる温泉が徒歩圏内にあるという体験は、帯広でしか味わえません。
十勝川温泉(音更町)は帯広市街から車で約20分、十勝川沿いに旅館・ホテル18軒・公共施設4か所が集まる道東を代表する温泉地です。
大正2年(1913年)に本格開発が始まり、昭和29年(1954年)には昭和天皇・皇后両陛下の行幸の地にもなった格式ある温泉郷で、十勝川温泉 第一ホテル豊洲亭・観月苑・湯元富士ホテルなど個性豊かな宿が源泉かけ流しのモール泉を提供しています。
道の駅「ガーデンスパ十勝川温泉」では日帰りでモール温泉と十勝の食材マルシェを楽しめ、冬には幻想的なイルミネーションイベント「彩凛華(さいりんか)」が開催されます。
帯広温泉郷の源泉かけ流し概要

出典:温泉ホテルボストン
泉質: ナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉(弱アルカリ性低張性高温泉)/アルカリ性単純温泉(施設により異なる)
湯色: 琥珀色〜茶褐色(モール温泉は湧出時から色づく)
特徴: フミン酸・フルボ酸などの植物由来有機成分を含む世界希少の植物性温泉
源泉温度: 帯広市街50℃前後(地下1,000m)/十勝川温泉55〜60℃(地下500〜700m)
源泉かけ流し: アサヒ湯・丸美ヶ丘温泉・十勝川温泉 湯元富士ホテルほか多数
効能: 神経痛・筋肉痛・関節痛・慢性皮膚病・冷え性・婦人病・疲労回復・美肌
旅の余韻

豚丼のたれの甘辛い香りが漂う屋台村を後にして、街の小さな銭湯の暖簾をくぐります。
銭湯価格で受け取った下駄箱の鍵を握りしめながら脱衣所に向かうと、琥珀色の湯が浴槽から惜しみなく溢れています。
300万年前の植物が地中でゆっくりと変容し、今日のこの湯になった。
その途方もない時間を思いながら、化粧水のような湯に体を浸ける。
フミン酸が肌を包み、気泡が全身に付着する。
ばんえい競馬の馬たちの息遣いと十勝の大地の広さが、この一杯の琥珀色の湯に凝縮されているような気がします。



