十勝最古の秘湯・シマフクロウが来る一軒宿【芽登温泉】源泉かけ流し|ヌカナン川の渓流に湧く「北海道一」のアルカリ硫黄泉


出典:芽登温泉ホテル
2026年07月06日更新

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湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

北海道足寄郡足寄町、大雪山系から流れ下るヌカナン川の左岸。
足寄市街から32キロ、最後の数キロはダートの山道を進んだ先に、明治34年(1901年)の開湯以来120年以上変わらない湯が湧き続けています。

「芽登温泉ホテル」は日本秘湯を守る会・日本源泉湯宿を守る会の双方に加盟する十勝地方最古の温泉の一軒宿です。

源泉から毎分230リットルが引湯されるアルカリ性の単純硫黄泉は「北海道一の良質なアルカリ性」とも評され、加水・加温・消毒を一切行わない源泉100%かけ流しを開湯以来貫き続けています。

露天風呂からエゾシカが湯を飲みに来て、夜にはシマフクロウの声が響く。

この一軒宿でしか体験できない大自然との共生が、遠くから旅人を引き寄せてやみません。

ヌカナン川の山奥へ 「山奥」を意味するアイヌ語の地・芽登の歴史

出典:芽登温泉ホテル

芽登温泉は、北海道足寄郡足寄町芽登のヌカナン川左岸に位置しています。

道東自動車道・足寄ICから国道241号・274号・道道88号を経由して車で約45分、帯広空港から車で約1時間40分、帯広市内からは車で約1時間というアクセスです。

JRを利用する場合はJR帯広駅から北海道拓殖バス・十勝バスで上士幌方面行きに乗車し終点でタクシーに乗り換えて約40分が目安です。途中約3キロのダート(未舗装路)があるため、車高の低い車では注意が必要です。

「芽登(めとう)」はアイヌ語の「メトッ(metot・山奥)」に由来する地名で、その名のとおり深い原生林に囲まれた山奥の集落です。

温泉の発見は明治34年(1901年)——その後明治37年(1904年)に旅館として開業し、十勝地方で最も古い温泉地としての歴史が始まりました。

以来120年以上にわたって自然湧出・源泉100%かけ流し・加温加水なしという姿勢を一度も変えることなく守り続けており、「開湯以来変わらぬ湯」という言葉が誇張でないことは、湯に浸かった旅人の口コミが証明しています。


シマフクロウ・エゾシカ・クマゲラ 原生林の野生動物と出会う旅

出典:芽登温泉ホテル

芽登温泉の露天風呂は、そのまま野生動物の観察場でもあります。

宿の周囲はトドマツ・エゾマツを中心とした広葉樹の原生林に覆われており、キタキツネ・エゾシカ・エゾモモンガ・シマリスなどの哺乳類が日常的に宿の周辺を行き来しています。

中でも特筆すべきがシマフクロウの存在。

環境省の絶滅危惧IA類に指定された日本最大のフクロウで、この地域に生息するシマフクロウが夜になると「ポッポ―」という低い声で鳴きながら川沿いを飛び回ります。

クマゲラ・エゾライチョウなどの希少な鳥類も多く観察でき、野鳥愛好家が温泉と鳥観察を組み合わせて訪れるケースも珍しくありません。

夜には宿の前を流れるヌカナン川の川岸がライトアップされ、自然湧出の温泉を飲みにエゾシカが集まってくる光景が湯船から観察できます。

野生のシカが何頭も川沿いに集まり、温泉の湯気に包まれながら湯を飲む光景。

露天風呂の縁から静かにそれを眺める体験は、温泉だけでなく大雪山麓の原生林全体が宿の主役であることを実感させてくれます。


足寄・松山千春・ラワンブキ 十勝東部の食と文化

出典:NPO法人 あしょろ観光協会

芽登温泉から最寄りの足寄町には、北海道が誇る個性豊かな文化と食が詰まっています。

足寄町が生んだシンガーソングライター・松山千春は、代表曲「大空と大地の中で」が道内のあらゆる場所で流れる「北海道の顔」とも言うべきアーティストです。

足寄市街には松山千春の生家跡と松山千春の歌碑が建ち、記念グッズを販売する店も点在しています。

食の面では「ラワンブキ(螺湾フキ)」が足寄の誇りです。足寄町螺湾地区で栽培される特産のフキで、成長すると人間の背丈を超えるほどの大きさに育つ品種。
その圧倒的なスケールは北海道の大自然を象徴する光景です。

炒め物・甘辛煮・味噌炒めなどで食べる素朴な郷土料理は、山奥の温泉で体を整えた後に最もふさわしい食卓の主役です。

宿の食事は新鮮な食材を使った山の幸中心の素朴な家庭料理で、山菜・川魚・きのこなど大雪山麓の旬の恵みが食卓を彩ります。


髪の毛が凍る冬の露天風呂 四季の源泉かけ流し体験

出典:芽登温泉ホテル

芽登温泉の泉質は単純硫黄泉(アルカリ性)。

毎分湧出量120リットル・源泉温度約60℃の自然湧出泉で、加温は一切行わず源泉かけ流しを守っています。

無色透明でほのかに硫黄の香りが漂う湯は弱アルカリ性の成分が肌の古い角質をやわらかく落とし、「北海道一とも言われる良質なアルカリ性」という評判にふさわしいつるつるの美肌効果が湯上がりに実感できます。

浴場は男女別の内湯(各高温・標準温度の2槽)、大きな岩を配した混浴の大露天風呂、女性専用の露天風呂、そして2015年(平成27年)に新設された「巨岩の湯」(混浴露天風呂・湯浴み着対応・貸切利用可)で構成されており、ヌカナン川の清流を眺めながら多彩な浴槽が楽しめます。

四季それぞれの露天風呂体験が旅人の記憶に深く刻まれます。春の新緑・夏の深緑・秋の紅葉が川沿いに広がる季節も美しいですが、なかでも特筆すべきは厳冬期の体験です。

マイナス20度以下になる冬の夜明け、露天風呂に浸かると体は温かいのに湯面のすぐ上で髪の毛が凍りつき、温泉の蒸気が周囲の木々に付着して樹氷を作り出す。

この北海道の秘湯でしか体験できない「髪が凍る入浴体験」を求めて、真冬にわざわざ訪れる温泉マニアが後を絶ちません。


芽登温泉の源泉かけ流し概要

出典:芽登温泉ホテル

泉質: 単純硫黄泉(アルカリ性・旧泉質名:単純硫黄泉)

源泉温度: 約60℃(自然湧出)

湧出量: 毎分120〜230リットル(自然湧出)

湯色: 無色透明・ほのかな硫黄臭

源泉かけ流し: 自然湧出・源泉100%かけ流し・加水加温消毒なし・開湯以来120年以上継続

効能(浴用): アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・慢性湿疹・表皮化膿症・神経痛・筋肉痛・関節痛・慢性消化器病・冷え性・美肌・自律神経不安定症・不眠症


旅の余韻

出典:芽登温泉ホテル

マイナス20度の夜明け、露天風呂の湯に体を沈めると、体は温かいのに湯面から出た髪の毛がみるみる凍りついていきます——温泉の蒸気が木々に付着して樹氷の白い花を咲かせ、ヌカナン川が静かに流れています。

シマフクロウの低い声が森の奥から届き、川岸ではエゾシカが湯を飲みに来ています。

「山奥」を意味するアイヌ語から名付けられたこの地で、120年以上一度も加水も加温もせずに源泉を守り続けてきた宿が、今夜も変わらない湯を注いでいます。

足寄の松山千春が「大空と大地の中で」と歌った北海道の原点が、この一軒宿の露天風呂にあるような気がします。