400年前アイヌが発見した「中標津の奥座敷」【養老牛温泉】源泉かけ流し|標津川の清流に湧く石膏食塩泉とシマフクロウの一軒宿
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湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
北海道標津郡中標津町、標津岳南麓のカラマツ原生林に囲まれた養老牛温泉は、ナトリウム・カルシウム-塩化物硫酸塩泉の源泉が80℃以上の高温で湧出し、湯量が豊富なため源泉かけ流しを実現している温泉地です。
現在は「湯宿だいいち」の一軒宿として、木の香り漂う大浴場・岩造りの露天風呂・丸太風呂・寝湯など多彩な浴槽すべてに源泉かけ流しの湯が惜しみなく注がれています。
標津川の渓流沿いに佇む宿で、川の流れを聞きながら入る露天風呂が旅人を魅了し、夜にはシマフクロウの声が森の奥から届く。
映画「男はつらいよ」のロケ地としても知られるこの秘湯は、道東の旅に静かな深みを加えてくれます。
目次
標津川の山奥へ 400年の歴史とアイヌの薬湯

出典:湯宿だいいち
養老牛温泉は、北海道標津郡中標津町の標津川上流・標津岳南麓に位置しています。
中標津空港から車で約30分、釧路市内から車で約90分、摩周温泉(弟子屈)から車で約50分というアクセスです。
最寄りのJR駅は釧網本線・標茶駅ですが、標茶駅より阿寒バスで約60分、その後計根別にて養老牛行きの中標津町営バスに乗り継いで約15分という経路で公共交通機関でのアクセスも可能です。
「養老牛」の地名はアイヌ語の「エ・オㇿ・ウㇱ(頭=山鼻がいつも水についているもの)」または「イ・オㇿ・ウㇱ(それをいつも水に漬けているもの)」に由来するとされており、標津川の中に大きな岩が突き刺さる地形を表現した言葉です。
温泉の発見は1600年代とされており、表温泉と裏温泉の2か所の泉源が知られ、アイヌの人々が古くから利用していました。
1874年(明治7年)にはアメリカ人地質学者ヘント・ライマンが温泉の温度・成分・泉源数などを調査しています。
1921年(大正10年)に西村武重がようやく温泉使用の許可を受けて温泉旅館「養老園」を開業し、その後昭和にかけて標津原野の開拓とともに湯治客が増加してきました。
最盛期には6軒の宿が建ち並んでいましたが、2019年(令和元年)6月にホテル養老牛が廃業し、現在、宿泊施設は湯宿だいいちの1軒のみとなっています。
開陽台・神の子池・標津岳 中標津の絶景と自然を巡る

出典:中標津町役場
養老牛温泉を拠点にすると、中標津・道東を代表する絶景体験が日帰りで楽しめます。
「開陽台(標高270メートル)」は中標津市街から車で約20〜30分の展望台で、牧草地と酪農風景が360度のパノラマで広がります。
「地球が丸く見える」と表現されるほど視界を遮るものがなく、なだらかな丘陵と牧場が続く北海道らしい圧倒的なスケール感は道内でも随一です。
バイク乗りの聖地としても知られており、夏のシーズンには全国からライダーが集まります。
「神の子池」は摩周湖の伏流水が湧き出す直径約220メートルの神秘的な池で、摩周湖のカルシウムイオンが原因で湧き出す透明な水がコバルトブルーに輝き、倒木がそのまま池底に沈む光景が幻想的です。
養老牛温泉から車で約35〜40分、斜里岳から知床への道東周遊ルートとの組み合わせが定番コースです。
温泉地のすぐそばには「養老の滝」があり、温泉街から1キロほどの散策路を歩いてたどり着ける道東の隠れた名瀑です。
また「標津岳(1,061メートル)」の登山口まで車で約5分と近く、山頂から望む知床連山・根室海峡のパノラマは登山愛好家の目標になっています。
山菜・ヤマベ・根室の海の幸 養老牛の食卓

出典:湯宿だいいち
標津川ではヤマベが釣れ、付近で取れるフキ・ワラビ・キノコ・ウドなどの山菜も温泉宿の料理に使われています。
湯宿だいいちの食事は、こうした大自然の恵みを活かしたシンプルで誠実な料理で評判が高く、「食事が美味しい」という口コミが絶えません。
中標津・標津エリアは道東でも特に豊かな農業・酪農地帯で、新鮮な乳製品・野菜が食卓を支えています。
また根室海峡に面した標津町では鮭・北海シマエビ・花咲ガニ・コンブなど根室・道東の海の幸が水揚げされており、宿の夕食には道東の山と海の両方の恵みが並びます。
開陽台周辺の酪農家が作る新鮮なミルクを使ったソフトクリームは、この地域を訪れた旅人が必ず立ち寄る一品です。
岩露天・丸太風呂・シマフクロウ 多彩な源泉かけ流し体験

出典:湯宿だいいち
湯量が多く源泉温度が80℃以上と高温のため、掛け流しにしている養老牛温泉の湯は、泉質がナトリウム・カルシウム-塩化物硫酸塩泉(旧泉質名・含石膏食塩泉)。
無色透明のやわらかな湯は塩化物の保温効果と硫酸塩の血行促進作用が重なり、神経痛・リウマチ・腰痛・婦人病・疲労回復などへの効能が期待されています。
木の香りが漂う大浴場をはじめ、岩造りの露天風呂・丸太風呂・寝湯など種類も多彩で、豊富な湯量を誇る源泉かけ流しの湯を満喫できます。
中でも標津川に面した岩造りの露天風呂は川のせせらぎが間近に聞こえる開放的な造りで、四季の原生林の木々が眺められます。春の新緑・秋の紅葉のシーズンには特に美しく、訪れた旅人が息をのむ光景が広がります。
夜には原生林からシマフクロウの「ポッポ―」という低い声が届くことがあります。
環境省の絶滅危惧種に指定された日本最大のフクロウで、芽登温泉と同様にこの地域での生息が確認されており、源泉かけ流しの露天風呂に浸かりながら耳を澄ませると、野生の声が静寂を破る瞬間が訪れます。
映画「男はつらいよ夜霧にむせぶ寅次郎」のロケ地としてもこの温泉地は記録されており、寅さんが「一度は来てみたかった」と語る昭和の秘湯としての風情が今も変わらず残っています。
養老牛温泉の源泉かけ流し概要

出典:湯宿だいいち
泉質: ナトリウム・カルシウム-塩化物硫酸塩泉(中性低張性高温泉・旧泉質名:含石膏-食塩泉)
源泉温度: 80℃以上(高温自然湧出)
湯色: 無色透明・やわらかな肌触り
源泉かけ流し: 湯量豊富・高温のため加水調整あり・循環なし・かけ流し100%
効能: 神経痛・筋肉痛・リウマチ・腰痛・婦人病・打撲・冷え性・きりきず・末梢循環障害・皮膚乾燥症
旅の余韻

出典:湯宿だいいち
標津川のせせらぎが岩露天の縁を越えて届く夜、80℃の源泉を適温に調整した湯に体を沈めながら森の奥に耳を澄ませています。シマフクロウの低い声が、静寂を破るように一度だけ響きました。
400年前にアイヌの人々が「薬の湯」として体を癒したこの温泉が、今日も変わらず標津川のほとりで湧き続けています。
開陽台で地球の丸みを感じ、神の子池のコバルトブルーに息をのみ、ヤマベの塩焼きを食べてから岩露天に浸かる。
養老牛温泉は、道東の旅を一段と深くしてくれる、中標津の奥座敷です。



