加賀藩主との密接なつながりも!石川屈指の名湯・和倉温泉の歴史に迫る


更新日:2021年2月26日

日本海が広がる石川県の七尾市にある、石川屈指の名湯として知られる「和倉(わくら)温泉」。日本有数の高級温泉街としても知られており、長い歴史を持っていることでも有名です。今回はそんな和倉温泉が、いつ頃できた温泉地で、どんな歴史があるのかについて迫っていきます。

開湯は約1,200年前!日本でも珍しい「海の温泉」

「和倉温泉」は石川県の七尾市に湧く温泉

和倉温泉は、石川県七尾市に湧く温泉です。

能登半島中央部の七尾湾に面するため、日本海を眺めながら温泉に浸かることができます。

和倉温泉の泉質は、ナトリウム・カルシウム塩化物泉であり、海の塩分が豊富に含まれているのが特徴です。

リウマチや痛風、神経痛、貧血、慢性婦人疾患、アトピーなど、さまざまな疾患に効用があることで知られています。

源泉が地殻変動により移動?円山の湯の谷で湧いたのが始まり

和倉温泉は、国内でも珍しい「海の温泉」としても有名です。

806年~810年頃に円山の湯の谷から湧き出てましたが、その後地殻変動によって海中に湧き口が移動したと伝えられます。

海中から湧き出ていたことを「湯の湧きいづる浦」と表し、”湧浦(わくうら)”として知れ渡っていたと言われています。

◇地殻変動後は白鷺が傷を癒していたという伝説も

地殻変動によって湧き口が移動した源泉は、一羽の白鷺によって発見されたという伝説があります。

地殻変動した後の源泉は、1046年~1053年頃、和倉に暮らす漁師を営む夫婦によってその湯脈が発見されたと言われています。

一羽の白鷺が傷ついた足を癒しているのを漁師夫婦が不思議に思い近づいてみたところ、温泉が湧き出ているのを発見したのだそうです。

海の温泉「和倉温泉」その名の由来

元々は、和倉温泉という名ではなく「湧浦(わくうら)温泉」として知られていました。その後、加賀藩からの命により1674年に「和倉温泉」に名を改めたと言われています。


火付け役はあの加賀藩主の息子?和倉温泉は「湯治の湯」として評判に

白鷺伝説によって改めて発見された和倉温泉は、どのようにして日本、そして世界に知られるようになったのでしょうか。

和倉温泉は世界も認める泉質として有名

和倉温泉の泉質には、豊富な塩分が含まれます。

この塩の恵みには、傷や皮膚病に作用する「殺菌効果」、汗の蒸発を抑えて湯冷めを防ぐ「保温効果」、そして毛穴を引き締めながら肌をなめらかにする「美肌効果」の三大効果があると言われています。

明治13年には、ドイツで開催された万国鉱泉博覧会にて、「世界三等鉱泉」の栄誉に輝いており、世界的にも泉質の高さが認められています。

和倉温泉の湯は「前田利長」の腫物治療に使われていた

和倉温泉は、豊臣秀吉とともに織田信長に仕えた前田家との関わりが強いことでも有名です。

前田利家の息子に当たる二代目藩主「前田利長」は、腫物ができ困っていた折に、涌浦の湯(和倉温泉)を取り寄せて治療したと言われています。

そのことがきっかけで和倉の湯の評判が高まり、「湯治の湯」として人気に火がついたようです。


和倉温泉が人気温泉地へと変貌を遂げるまでの時代の流れ

加賀二代藩主である前田利長が火付け役となって全国的に知れ渡った和倉温泉は、そこからどのようにして人気温泉地へと変貌を遂げたのでしょうか。時代の流れとともに見ていきましょう。

1641年、三代藩主「前田利常」によって湯島が造られた 

1641年に三代藩主「前田利常」によって周囲を埋め立てや湯口の整備が行われ、湯島が造られました。また岸と橋を結ぶことで賑やかさを増し、和倉村として名を広めたと言われています。

1654年には人気の温泉地として「湯座屋」や「内湯宿」が建てられる

1654年になると「宿方稼(しゅくがたか)」が許可されたことで、「湯座屋(ゆざや)」や「内湯宿(うちゆやど)」などの宿や共同施設が増えていきました。

宿などの施設が増えたことをきっかけに旅行地としても知名度を上げ、温泉街へ発展していったのです。

和倉温泉の歴史に浸るならココへ!おすすめ歴史スポット3選

和倉温泉には、歴史に浸ることができるスポットが点在しています。

 大正ロマンを感じさせる「和倉温泉渡月橋」 

大正時代にタイムスリップしたかのようなレトロな造りの「和倉温泉渡月橋(とげつばし)」。

大正4年に建てられた「渡月庵(とげつあん)」に掛かる橋です。夜には明かりが灯り、宿のライトアップが素敵な空間を演出します。夜には海面にゆらゆらと電灯の明かりが映り、幻想的な雰囲気を作り出します。 

<施設情報>
・住所:石川県七尾市和倉町96
・電話番号:0767-62-1788    

白鷺の銅像が目印の「湯元の広場」

和倉温泉の中心とも言える「湯元の広場」は、和倉温泉の開湯伝説を思わせる白鷺の銅像が目印の広場です。

和倉温泉の由来などが刻まれた記念碑も置かれており、その歴史に触れることができます。

白鷺像の真ん中には、源泉が湧いており、温泉卵を作ることもできます。

<施設情報>
・住所:石川県七尾市和倉町
・電話番号:0767-62-1555

和倉の外れに佇む癒しの空間「青林寺」

和倉温泉の山奥にある曹洞宗の「青林寺(せいりんじ)」は、1892年に後醍醐天皇の600回忌大法要が修された際、記念事業として開創された寺院です。

1909年には、皇族を初めて和倉に迎えるための御便殿が建てられました。

格式を感じさせる造りが素晴らしいという声も多く、人気の高い観光スポットとなっています。

2017年には国の登録有形文化財に登録され、本堂では座禅や写経などを体験することができます。

<施設情報>
・住所:石川県七尾市和倉町61
・電話番号:0767-62-2836
・営業時間:9:00~16:00

世界も認める和倉温泉へ歴史を辿る旅へ出かけよう

和倉温泉は、世界が認める泉質の良さと懐かしさが色濃く残る温泉街が連なる人気の温泉地です。

加賀藩主との関係や人気温泉地になるまでの流れを知ることで、より深みのある旅を楽しむことができるでしょう。

ぜひこれを機に、温泉と歴史を辿る旅へ出かけてみてはいかがでしょうか。