温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#4 奥津温泉-奥津荘-


提供:奥津温泉 奥津荘
更新日:2021年4月5日

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かっきー

江戸の玄関口と言われた宿場町に生まれ育った生粋の江戸っ子。還暦を迎えた今なお、旅とサーフィンをこよなく愛するアクティブシニア。某夕刊紙に勤務していた経歴を持つ。
マイナーな温泉から秘湯まで、気の向くままに温泉へ出かけることが大好きです。温泉の良さはもちろん、分かりやすく温泉や旅館などの良さをお伝えしてまいります。

泉質・場所・周辺の名所や史跡など、温泉好きには興味が尽きない湯めぐりの旅。そんな湯めぐりの旅の要となるのが温泉宿ではないでしょうか。温泉経営者に聞く、一度は泊まりたい温泉宿を数珠つなぎでご紹介している特別企画第4弾は、第3弾でご紹介した「尾上(おのえ)温泉 紅鮎(べにあゆ)」を営む山本さんのおすすめの宿「奥津(おくつ)温泉・名泉鍵湯 奥津荘」のご当主にインタビューしました。

老舗旅館の若きご当主!奥津温泉「奥津荘・鈴木 治彦さん」

奥津荘の代表取締役社長 鈴木治彦さん

◇らくらく湯旅編集部(以降 編集部):特別企画の第4回は、奥津温泉 奥津荘の代表取締役のご当主でいらっしゃる鈴木治彦さんです。お忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

◆鈴木さん:よろしくお願いいたします。


さっそくお話を伺いました!

奥津温泉はどのような温泉地でしょうか?

◆鈴木さん:はい、奥津温泉は、岡山県の最北端の鏡野(かがみの)町、中国山地の山あいの中にある人口約1万3千人の街にあります。

鳥取県との県境に位置し、鏡野町から車で7分ほど走ると鳥取県にある三朝(みささ)温泉があります。

奥津温泉は、岡山県の三大河川の一つ吉井川沿いから温泉が湧いており、動物が湯治をしている姿を村人が見て、湯浴びを始めたとされています。

奥津温泉の泉質について教えていただけますでしょうか?

◆鈴木さん:奥津温泉の泉質は、ph9.1ととても強いアルカリ性で、肌についている脂質や汚れを根こそぎ落としてくれます。

そのことから、奥津温泉の湯は「美人の湯」として親しまれています。

奥津温泉の湯に日々浸かる地元の方は、実年齢よりも若く見える方が多いですよ。

また、泉質の良さから、奥津温泉の温泉水を使った化粧品がつくられています。

他にも、アルカリ性の温泉は汚れを落とす効果が高いことから、日常生活にも温泉のお湯が使われています。

なお、奥津温泉のお湯には、微量ですが放射能が含まれています。放射能は、自然治癒力を高める効果があるとされており、長寿の湯とも呼ばれています。

日常生活にも温泉が使われているとはどういうことですか?

◆鈴木さん:先ほどもお伝えしましたが、奥津温泉の湯はアルカリ性が強く、汚れが落ちやすいとされています。

そのためこの地に住む人たちは、古くから奥津温泉の湯が湧く川沿いにに洗濯物を持ってきて、洗濯をしていました。

現在は熊や狼が出没することはありませんが、昔は川で洗濯する際は付近に生息する野生動物に襲われないように、周囲を確認しながら立ったまま足で洗濯を行っていたようです。

当時の風習は今も残っており、毎朝6時~7時くらいに川沿いへ行くと足踏み洗濯をみることができます。ご年配の方々は、奥津温泉地域へ嫁いできた際に、お姑さんから洗濯はこうやるものだと習ったそうです。

提供:奥津温泉 奥津荘(観光用に実演される「足踏み洗濯」の風景)

奥津荘の温泉についてお伺いできますか?

◆鈴木さん:奥津荘は、吉井川の河原に湧く源泉の上に、建物を建て湯船を作りました。

そのため、湯船の底は河原そのものとなっており、足元から温泉が自然湧出しています。

湧出する源泉は、温度が42.3℃から42.6℃と、自然に湧いたままで湯浴びができる希少な温泉です。

温泉施設は全国に35,000軒ほどありますが、このように何も処理をせずに自然のまま湯浴びができる温泉は、僅か30軒程度と言われています。

提供:奥津温泉 奥津荘

◇編集部:希少な温泉なのですね。

◆鈴木さん:通常温泉は、湯船に注がれるまでに空気中の酸素に触れるため、湯船に注がれる時には酸化し劣化しています。

しかし当館の温泉は、川底から源泉が直接湯船に湧くため、この上ない鮮度の温泉を堪能いただけます。

◇編集部:新鮮なお湯に一度浸かるとその気持ちよさが忘れられないでしょうね。

◆鈴木さん:さらに奥津荘は岡山県で唯一飲泉の許可を取得しています。

湯上り処に飲泉場を設け、湧いたお湯をそのまま飲んでいただけます。

中には飲泉が目的で来られるお客様もいらっしゃるほどです。「体の調子が良くなる」など、ご好評いただいております。

◇編集部:鮮度抜群ですから効果も期待できますね。

◆鈴木さん:温泉地へ行く際、泉質で温泉を選ぶ方もいますが、温泉の鮮度も重要であることを知っていただければと思っています。

◇編集部:35,000軒のうち僅か30軒程度では、普通に温泉巡りしていてもなかなか巡り合えそうにありませんね。

◆鈴木さん:源泉を直接湯浴みができる温泉は、約30軒のうち十数件が中国山地に存在しています。そのため、この中国山地周辺を探していただければ巡り合える確率も高くなると思います。

奥津荘の歴史についてお話を伺えますか?

◆鈴木さん:奥津荘の創業者である曾祖父は、もともと岡山市で江戸時代から続く料亭を営んでいました。

その料亭を訪れた犬養毅(いぬかいつよし)氏が、「君はこの店をたたみ、奥津温泉で旅館を営みなさい」と曾祖父に命じたのをきっかけに、料亭から旅館業へと転身したそうです。

昭和2年、現在の場所に奥津荘を開業しました。

登録有形文化財となっているとお聞きしました。

提供:奥津温泉 奥津荘

◆鈴木さん:はい、内装には少し手を加えていますが、外観は創業当時のまま残しています。

◇編集部:著名な方のご利用も多かったとお聞きしましたが、どのような方がいらっしゃるのでしょうか?

◆鈴木さん:まず、江戸時代の津山藩領主・森忠政(もり ただまさ)です。

森忠政が浸かっていたとされる浴場は、当時の趣きはそのままに奥津荘の浴場として使用されています。

この浴場は「鍵湯(かぎゆ)」と呼んでいます。

鍵湯と呼ばれるようになった由来は奥津温泉を気に入った森忠政が小屋を建て、鍵をかけてお殿様専用の湯としたことから鍵湯と呼ばれるようになったようです。

また、創業のきっかけとなった第29代内閣総理大臣の犬養毅氏や、現津山市出身の第35代内閣総理大臣の平沼騏一郎(ひらぬま きいちろう)氏も、度々奥津荘を訪れて頂いています。

美術界からは、日本を代表する巨匠の一人である棟方志功(むなかた しこう)氏も、度々奥津の地を訪れています。当館内に、棟方氏の作品を幾つか展示しています。

提供:奥津温泉 奥津荘(奥津荘に展示されている棟方志功の版画)

どのようなお客様が奥津荘を利用されていますか?

◆鈴木さん:年間を通じて、滞在されるお客様のほとんどが奥津荘を目的とされています。

秋の紅葉シーズンになると、当館から2kmほどの所にある岡山県屈指の紅葉の名所「奥津渓(おくつけい)」の紅葉を目的に来られるお客様も多くいらっしゃいます。

また、2019年度からお一人のお客様も1年を通してお受けするようになりました。一人でご利用されるお客様も多いです。

いろいろな目的やお好みでくつろいで頂ける様、お部屋は和室・洋室の8部屋をご用意しています。

提供:奥津温泉 奥津荘

また、2020年12月に完全個室の離れをリニューアルし、「清間亭(せいかんてい)」としてオープンしました。

リニューアルをきっかけに、もともと和室だった部屋を和洋室へと変更しております。

サービスのこだわりについて教えてください。

◆鈴木さん:お料理を選ぶことも楽しんで頂けるよう、年間を通じて十数種類のお料理をご用意しています。

地産の山の幸や、日本海・瀬戸内海のどちらも近い地の利を活かした新鮮な海の幸を準備しています。

提供:奥津温泉 奥津荘

献立にもこだわり、量は少なめでも上質な食材を提供するなど、様々なご要望にお応えしてお客様に選んでいただけるよう配慮しています。

また、出汁やお米を炊く水のほか、魚を焼くグリルの下にも温泉を張り、温泉の成分を蒸気として焼き物にいきわたるよう調理しています。

提供:奥津温泉 奥津荘

奥津荘・鈴木治彦さんがおすすめする温泉宿

◇編集部:「らくらく湯旅」ではリレー形式で温泉宿を紹介していきます。鈴木さんがおすすめする一度は宿泊してみたい温泉旅館をご紹介いただけたらと思います。

◆鈴木さん:実はちょうど今、その旅館に来てしまっているのですが…(笑)

私がおすすめする温泉ということで、島根県にある鷺の湯温泉の「さぎの湯荘」です。

◇編集部:そちらの旅館をおすすめするポイントをお伺いできますか?

◆鈴木さん:さぎの湯温泉はその昔、白鷺が足の傷を癒したとされる温泉地です。

さぎの湯荘は、その地に築200年位の古民家を奥出雲から移築した、とても趣のある宿です。宿内にはとても素晴らしい日本庭園が作り上げられており、日本庭園を通して四季の自然の美を感じていただけます。

また、オーナーである田辺社長はもともと料理人で、若いころから大阪の有名店で修業をしていました。今でもオーナーシェフとして、自ら包丁を振るい、お料理も高く評価されています。

<施設情報>
さぎの湯温泉「さぎの湯荘」
住所:島根県安来市古川町478-1
電話:0854-28-6211
アクセス:
<電車>JR安芸駅から車で約15分(無料シャトルバス運行)、JR米子駅から車で約20分
<車>山陰道 安芸ICから約10分
<飛行機>出雲空港・米子空港から車で約50分

温泉好き「らくらく湯旅」ユーザーへのコメント

◇編集部:最後に、「らくらく湯旅」ユーザーへ一言おねがいします。

奥津荘は全国に30軒ほどしかない足元湧出の温泉を持つ宿です。ぜひ温泉業界でも日本屈指と言われる鮮度の高い上質な温泉を実感して頂きたいと思います。

コロナ渦の状況ではありますが、このような時期だからこそ、自然治癒力を高めるとされる奥津温泉に入っていただきたいです。

湯治を目的として足を運んでいただき、健康で丈夫なお身体を作っていただければと思います。

◇編集部:本日はお忙しい中お時間を頂戴いたしましてありがとうございました。

温泉大国日本の数ある温泉のなかでも、足元自然湧出の鍵湯はとても希少です。鮮度の高い上質な温泉で、身も心も癒されてみてはいかがでしょうか。

<基本情報>
奥津温泉  奥津荘
住所:岡山県苫田郡鏡野町奥津48
電話:0868-52-0021
ホームページ:http://okutsuso.com/
アクセス:
<電車>
JR津山線 津山駅より中鉄バスで約60分
<車>
岡山駅からは国道53号/国道179号線で約100分
岡山空港からは約90分
※複数ルートがあるので、カーナビで「奥津荘」または住所を登録