温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#第20回 山代温泉-あらや滔々庵-


提供:あらや滔々庵
更新日:2022年5月10日

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かっきー

江戸の玄関口と言われた宿場町に生まれ育った生粋の江戸っ子。還暦を迎えた今なお、旅とサーフィンをこよなく愛するアクティブシニア。某夕刊紙に勤務していた経歴を持つ。
マイナーな温泉から秘湯まで、気の向くままに温泉へ出かけることが大好きです。温泉の良さはもちろん、分かりやすく温泉や旅館などの良さをお伝えしてまいります。

旅の中で長い時間を過ごす「温泉宿」。
泉質はもちろん、環境や食事などにもこだわりたいものです。温泉経営者がおすすめする温泉宿はきっと素晴らしいはず。
本企画では、温泉経営者が「一度は泊まりたい温泉宿」をリレー形式でご紹介します。

第20回は石川県加賀市の山代温泉にある「あらや滔々庵」

提供:あらや滔々庵(北大路魯山人が描いた衝立が置かれたエントランス)

第20回となる今回は、有馬温泉の「有馬山叢 御所別墅」の金井さんがおすすめする「あらや滔々庵(とうとうあん)」の経営者にインタビューしました。

あらや滔々庵(とうとうあん)は、石川県加賀市の山代温泉にあります。

江戸時代には、政権の中枢を担った加賀・前田家御用達の湯宿でありました。

また、美食家としても名を馳せた芸術家・北大路魯山人(きたおうじろさんじん)ゆかりの伝統と格式ある温泉宿です。


伝統と新しい風を両立させる「あらや滔々庵・永井隆幸さん」

あらや滔々庵・代表取締役社長 永井 隆幸さん

◇らくらく湯旅編集部(以降 編集部):特別企画の第20回は、山代温泉「あらや滔々庵」の当代館主である、永井さんにお話を伺います。

◆永井さん:よろしくお願いいたします。


山代温泉は開湯1300年の歴史ある温泉地

出典:PIXTA(山代温泉の中心地にある公衆浴場「古総湯(こそうゆ)」)

◇編集部:まず最初に、「あらや滔々庵」のある山代温泉はどんな温泉地ですか?

◆永井さん:山代温泉は、加賀温泉郷のひとつで、約1300年前の神亀2年(725年)の開湯と言われています。

◆永井さん:温泉街は、「総湯」と呼ばれる共同浴場を中心とし、街並みが広がります。

ちなみに、当館は総湯の横に位置しています。

◇編集部:放射状に街並みが広がっているので、散策しやすいですね。

山代温泉の開湯とともに歩んできた古い歴史を持つ「あらや滔々庵」

提供:あらや滔々庵

◇編集部:お宿の歩みについて教えていただけますか?

◆永井さん:当館は、山代温泉の中でも一番古く、開湯から間もなくの頃からあったそうです。

江戸初期には、当時の館主が湯元を守る湯番頭(ゆばんがしら)として“荒屋源右衛門(あらやげんえもん)”を拝命。

そのことにより、屋号を”あらや”に改め、以来、私で十八代目となります。

◇編集部:山代温泉の開湯とともにあゆみはじめ、山代温泉の湯を守られてきた歴史があるのですね。

加賀・前田家をはじめ文人墨客にも愛された宿

◇らく湯旅:美食家としても有名な芸術家の北大路魯山人にもゆかりがあると伺いました。

◆永井さん:大正4年頃、魯山人が一時期、山代温泉で過ごしており、その際、当館の15代館主と親しく交流していたようです。

◇編集部:それはすごいですね。

提供:あらや滔々庵(北大路魯山人作のあらや滔々庵の看板)

◆永井さん:あらや滔々庵の看板も魯山人の作品のひとつです。

そのほか、書や絵画、陶芸など、多くの作品が当館には残っています。

提供:あらや滔々庵(北大路魯山人作の陶芸作品のひとつ)

提供:あらや滔々庵(北大路魯山人作の陶芸作品のひとつ)

提供:あらや滔々庵(北大路魯山人作の陶芸作品のひとつ)

◆永井さん:この他にも、お越しいただくお客様にゆかりの作品をお楽しみいただけるよう、館内の様々な箇所に展示しております。

◇編集部:ゆっくりと過ごせるだけでなく、伝統芸術にも触れながら過ごせる時間は格別ですね。

ゆったりと時を楽しめる空間づくりを徹底

提供:あらや滔々庵(畳敷のホール)

◇編集部:お宿のつくりについてお伺いできますでしょうか。

◆永井さん:当館は、館内のほとんどの場所を畳敷としています。

廊下、エレベーターの中、温泉の脱衣所なども畳敷となっていますので、ご滞在中は靴下を履かず、素足でゆったりとお寛ぎいただけます。

提供:あらや滔々庵(畳敷の廊下)

◆永井さん:客室は、露天風呂付きの和洋室から、数寄屋風、そして魯山人が逗留したお部屋を移築した特別室「御陣の間」など全17室をご用意しております。

提供:あらや滔々庵(特別室「御陣の間」)

◇編集部:特別室は、漆が施された柱と加賀ならではの美しい朱壁で、文人墨客に愛された理由がわかりますね。

◆永井さん:四季折々の風情とともに閑静なひと時をお過ごしいただけます。

また、現在、改築を進めているお部屋「有栖川山荘」もございます。

こちらは、2022年夏頃にご利用いただける予定です。

提供:あらや滔々庵(客室として改装を進める有栖川山荘)

◆永井さん:明治時代、皇族方が山代に逗留された折に使われるために建てられたお部屋で、離れの客室としてご利用いただけるようになります。

◇編集部:特別室とはまた違った、気品な香り漂うお部屋ですね。

良質な源泉が滔々とふんだんに湧く温泉

提供:あらや滔々庵(大浴場「瑠璃光(るりこう)」)

◇編集部:次に温泉についてのこだわりなどをお伺いします。

◆永井さん:当館の源泉は、わずか30メートル程度の地下から、高温の温泉が湧く珍しい温泉です。無色透明で匂いもほとんどなくクセもありません。

1日に約10万リットルの豊富な湯量が滔々と豊富に湧いていますので、温泉はすべて源泉かけ流しとなっています。

温泉通と言われるような目の肥えたお客様にも高く評価いただいています。

◇編集部:それだけ素晴らしい温泉ということですね。

提供:あらや滔々庵(特別浴場「烏湯(からすゆ)」)

提供:あらや滔々庵(大浴場「原泉閣(げんせんかく)」)

◆永井さん:当館では3つの大浴場をご用意しています。

それぞれ趣の異なる浴場となっており、思う存分ご満喫いただけるように趣向を凝らした作りにしています。

◇編集部:神秘的のような烏湯、ぜひ入ってみたいです。

◆永井さん:温泉は入浴だけでなく、飲泉もできるようになっています。

飲泉で一番喜ばれるのが、二日酔いに良いという点です。

常連のお客様などはペットボトルに入れてお持ち帰りになりますよ。

◇編集部:二日酔いに良いとわかれば、お酒も進んでしまいますね。

恵まれた食材と器を愉しむ芸術作品かのような料理の数々

提供:あらや滔々庵(毎年11月〜3月まで橋立漁港で水揚げされる蟹を食材とした料理)

◇編集部:次にお料理についてのこだわりなどをお伺いできますでしょうか。

◆永井さん:美器佳肴(びきかこう)をコンセプトとしたお料理で“食器は料理の着物“という魯山人の言葉を大切にしています。

加賀の恵まれた食材に、器は加賀発祥の九谷焼や山中塗、魯山人写しなどの器を使用しています。

目も舌もお愉しみいただけるかと思います。

提供:あらや滔々庵(春の食材の料理一例)

提供:あらや滔々庵(夏の食材の料理一例)

提供:あらや滔々庵(秋の食材の料理一例)

提供:あらや滔々庵(冬の食材の料理一例)

◇編集部:食器の美しさとお料理の色合いがとてもよく、見惚れてしまいますね。

お料理も含めての芸術の一品といった感じがします。

◆永井さん:春夏秋冬のお料理に合わせたお酒にもこだわっています。

北陸の地酒やワインなど、常時百種類以上のお酒を用意しております。

あらや滔々庵 永井さんがおすすめする温泉宿

◇編集部:「らくらく湯旅」ではリレー形式で温泉宿を紹介していきます。

永井さんがおすすめする一度は泊まりたい温泉宿をご紹介いただけないでしょうか?

◆永井さん:そうですね、私がおすすめする温泉宿は、広島県の宮浜温泉「庭園の宿 石亭」です。

厳島神社のある宮島の対岸に位置していて、目の前の瀬戸内海から採れた、豊富な食材を使用したお料理を愉しめます。

<施設情報>
宮浜温泉「庭園の宿 石亭」
・住所:広島県廿日市市宮浜温泉3-5-27
・電話:0993-23-2211
・アクセス:
<電車>山陽本線 大野浦駅より車5分、宮島口駅より車15分(送迎車にて)
<飛行機>広島空港より車で約60分、岩国空港より車で約45分
<車>山陽自動車道 大野ICより約10分

温泉好き「らくらく湯旅」ユーザーへのコメント

◇編集部:最後に、「らくらく湯旅」ユーザーへ一言おねがいします。

◆永井さん:この加賀ならではの伝統と文化、そして滔々と湧き続ける温泉での一時をお過ごしに、当宿にお越しいただけましたら幸いです。

◇編集部:本日はありがとうございました。

温泉はもちろんのこと、日本の伝統文化に包まれた贅沢な時を過ごしに、あらや滔々庵を訪れてみてはいかがでしょうか。

<基本情報>
山の宿・霊泉 あらや滔々庵
・住所:石川県加賀市山代温泉18−119
・電話: 0761-77-0010
・ホームページ:http://www.araya-totoan.com/jp/
・アクセス:
<車>北陸自動車道の加賀ICより約15分、片山津ICより約20分
<電車>JR北陸本線-加賀温泉駅から、送迎バス・タクシーで約10分
<飛行機>小松空港からタクシーで30分、または小松空港から路線バス→JR小松駅→JR加賀温泉駅→送迎バス・タクシーで約40分