温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#23 天草下田温泉-石山離宮 五足のくつ-
この記事を書いた人
かっきー
江戸の玄関口と言われた宿場町に生まれ育った生粋の江戸っ子。還暦を迎えた今なお、旅とサーフィンをこよなく愛するアクティブシニア。某夕刊紙に勤務していた経歴を持つ。
マイナーな温泉から秘湯まで、気の向くままに温泉へ出かけることが大好きです。温泉の良さはもちろん、分かりやすく温泉や旅館などの良さをお伝えしてまいります。
本企画は、旅館・おもてなしのことを知り尽くす、旅館経営者が「素晴らしい!」と大絶賛するおすすめのお宿をリレー形式でご紹介してまいります。今回は、東シナ海に面した異国情緒の漂う美しい景観のなか、歴史や風土文化に触れられ、日常とはかけ離れた空間で、特別なひと時を過ごせる温泉宿のご紹介です。
目次
第23回は熊本県天草市の天草下田温泉にある「石山離宮 五足のくつ」
提供:石山離宮 五足のくつ
第23回となる今回は、かみのやま葉山温泉「名月荘」の菊池さんがおすすめする、「石山離宮 五足のくつ」の経営者にインタビューしました。
石山離宮 五足のくつは、熊本県の下島(しもしま)の西端、東シナ海に面した温泉地である「天草下田温泉(あまくさしもだおんせん)」にあります。
提供:石山離宮 五足のくつ(ヴィラC専用のカフェテラスから眺める夕陽)
天草下田温泉は、雲仙天草国立公園(うんぜんあまくさこくりつこうえん)に指定された地域の中にあり、約700年の歴史がある天草最古の温泉地です。
保養に適した泉質と、名勝・天然記念物に指定された景勝地に囲まれ、国民保養温泉地にも指定されています。
また、周辺には世界文化遺産に登録された「天草の﨑津(さきつ)集落」や隠れキリシタンの歴史や南蛮文化などがあり、異国情緒を味わうことができます。
独自の世界観でによるおもてなし空間を創出する「石山離宮 五足のくつ・山崎博文さん」
石山離宮 五足のくつ オーナー 山崎博文さん
◇編集部:特別企画の第23回は、天草下田温泉「石山離宮 五足のくつ」のオーナーである、山崎さんにお話を伺います。
◆山崎さん:よろしくお願いいたします。
美しい自然に囲まれた天草下田温泉
提供:石山離宮 五足のくつ
◇編集部:まず最初に、天草下田温泉の「石山離宮 五足のくつ」は、どのような場所にありますか?
◆山崎さん:天草下田温泉は、 熊本県の南西部、天草諸島の下島の西海岸に位置する天草有数の天然温泉です。
周囲は美しい海岸地形の海や山で、雲仙天草国立公園に指定された自然に囲まれています。
出典:PIXTA(鬼海ヶ浦展望所からの景観)
◆山崎さん:また、天草は古来から海外からモノ・コト・ヒトなど、さまざまなものが伝来して、独自の文化が形成された場所です。
当館から車で20分ほどの所には、世界文化遺産に登録された「崎津集落」など、異国情緒溢れる風情も満喫できます。
出典:PIXTA(異国情緒溢れる世界文化遺産の崎津集落にある漁村や崎津天守堂)
◇編集部:キリシタン文化のある地として有名ですよね。
ただ、アクセスには、時間がかかると伺いました。
◆山崎さん:天草の下島は、陸路、海路、空路でアクセスできますが、熊本からでも2時間30分ほどかかるので、ちょっと気軽にという訳には行かないですね。
私は、下田温泉で一番の老舗旅館「伊賀屋(いがや)」の六代目として天草で生まれ育ったのですが、宿にご到着されたお客様がよく「あぁ、遠かった」と言っていたのを覚えています。
沖縄や北海道など、距離的に遠い観光地は沢山あります。
ただ、所要時間から言うと、天草下田温泉が日本で一番遠いのではないでしょうか(笑)。
そのおかげもあり、この地の自然や文化、人の温かみも残されているのだと思っています。
◇編集部:まさに「パスポートのいらない海外旅行」が楽しめる場所ですね!
異国情緒が漂うリゾートを思わせるお宿
提供:石山離宮 五足のくつ
◇編集部:つぎにお宿についてお伺いします。
まず、お宿の名称の「石山離宮 五足のくつ」とは、どのような意味合いがあるのでしょうか。
◆山崎さん:明治時代に天草の南蛮文化について、文壇に影響を与えたと言われる、与謝野鉄幹(よさのてっかん)や北原白秋(きたはらはくしゅう)をはじめとする5人が、九州や天草を旅した紀行文「五足の靴」に因んでいます。
ちょうど20年前、九州の西の果てとも言える、遠い異国のような天草の地に存在することに価値を持つ宿を造りたいと考えて、五足のくつを造りました。
立地には特にこだわって、人工物が視界に入らない場所を探し、この場所に建設いたしました。
雲仙天草国立公園内の東シナ海を望む山の上、1万坪を超える敷地に全室離れとなった造りになっています。
提供:石山離宮 五足のくつ(専用のレセプション)
◆山崎さん:敷地内には、昔の天草ををイメージしたヴィラAゾーン、未来の天草をイメージしたヴィラBゾーン、キリスト教が伝来した16世紀の天草をイメージしたヴィラCゾーンなど、テーマの異なる3タイプゾーンがあります。
客室は、趣が異なる全15室の客室をご用意しています。
ヴィラA・Bのお部屋は、漆喰(しっくい)の塗壁と引き戸の窓など、風通しが良い、昔の日本家屋を意識した造りを基本としています。
提供:石山離宮 五足のくつ
提供:石山離宮 五足のくつ(ヴィラCゾーンの客室の一例)
提供:石山離宮 五足のくつ(ヴィラCゾーンの専用オープンテラス)
◆山崎さん:お客様のプライバシーを重視する点にもこだわり、ヴィラAとB、ヴィラCのエリアはそれぞれのテーマに合わせた意匠の、レセプションやライブラリー、個室のレストランなどがあります。
提供:石山離宮 五足のくつ(ヴィラA、Bゾーン専用の個室レストラン”邪宗門”)
提供:石山離宮 五足のくつ(ヴィラA・Bのメイン棟「ヴィラ コレジオ」にあるライブラリー)
◇編集部:それぞれにガラッと雰囲気が変わり、いくつもの宿があるようですね。
◆山崎さん:連泊でご滞在されるお客様が多いのですが、日によって異なるタイプに移るお客様も多くいらっしゃいます。
全てのお部屋が満室となっても、他のお客様と会うことはほとんどないので、あるがままの自然と異国情緒を感じていただけます。
夜空を眺めて、星や月などを楽しむためのご案内もしています。
◇編集部:潮風や森の香りなど、五感に自然を感じながら過ごせる…心が穏やかになれそうで、すごくいいですね。
プライベート露天風呂で源泉掛け流しで満喫する天然温泉
提供:石山離宮 五足のくつ(露天風呂の一例)
◇編集部:次に温泉について、お伺いします。
◆山崎さん:天草は、昔から水不足に悩まされてきた地域と言われています。
しかし、この天草下田温泉周辺は、周りの山から何本もの清流が東シナ海に流れ込む、豊かな水資源に恵まれた特別な地域となっています。
また、天草下田温泉の周りの山には、品質・埋蔵量ともに日本一といわれる天草陶石(あまくさとうせき)の層があります。
そこに清流が浸透して温められ、毎分2,000Lもの豊富な天然温泉が湧出する、極めてめずらしい温泉なのです。
提供:石山離宮 五足のくつ
◇編集部:陶石に浸透して温められる温泉は初めて聞きました!そのようにして湧出する温泉があるのですね。驚きました。
◆山﨑さん:クレンジング効果がある優しい肌触りの湯で、しっかりと温まって冷めにくいという特長があります。
お客様それぞれの楽しみ方や空間、時間の使い方にこだわる当館では、大浴場を設けておりません。
全客室にプライベートな露天風呂を備えておりますので、24時間いつでも源泉掛け流しの天然温泉を心ゆくまでお楽しみいただけます。
提供:石山離宮 五足のくつ(露天風呂の一例)
◇編集部:温泉に浸かりながら、天草の空気や自然を満喫して…1秒1秒が特別で、忘れられない時間を過ごせそうですね。
旬の地産地消の食材を堪能するお料理
提供:石山離宮 五足のくつ(ヴィラCゾーン専用の個室レストラン”天正”)
◇編集部:次にお料理について、こだわりをお伺いできますでしょうか。
◆山崎さん:お食事は、ヴィラA・Bゾーンにひとつ、Cゾーンにひとつの、計2つの個室レストランで、美しい景色を眺めながら召し上がっていただきます。
天草の海でとれる豊かな天然の魚介類を中心とした食材を、五足のくつならではの料理として、ご提供することにこだわっています。
提供:石山離宮 五足のくつ(とれたての新鮮な食材ならではの”生たこのお造り”)
提供:石山離宮 五足のくつ(南蛮文化を凝縮した高級魚”アコウのオランダ煮”)
提供:石山離宮 五足のくつ(カワハギの薄造り)
◇編集部:新鮮だからこその味わいが堪能できるのですね。
お写真を見るだけでも、ぷりぷり感や肉厚感がわかり、新鮮さがわかりますね。
◆山崎さん:また、あまり流通することのないブランド牛の「天草黒牛」や、日本最大級の地鶏「天草大王」といった食材を、五足のくつ流に調理したお料理も人気があります。
提供:石山離宮 五足のくつ(天草黒牛の朴葉焼き)
提供:石山離宮 五足のくつ(天草大王の石焼蒸し鍋)
提供:石山離宮 五足のくつ(天草大王の蓮の葉蒸し)
◇編集部:天草大王は幻の地鶏としても称されていますよね。天草黒牛は食べたことがないので、ぜひ味わってみたいです。
◆山崎さん:お料理とペアリングするお酒もいろいろと取り揃えています。
中でも、この地ならではの地酒として、倉岳という地域で町おこしのために植えられた「シモン芋」で作られた、芋焼酎が人気です。
◇編集部:綺麗な景色を目の前にして食べる食事は、極上な気分にさせてくれること間違い無いでしょうね。
「石山離宮 五足のくつ」山崎さんがおすすめする温泉宿
◇編集部:「らくらく湯旅」ではリレー形式で温泉宿を紹介していきます。
山崎さんがおすすめする一度は泊まりたい温泉宿をご紹介いただけないでしょうか。
◆山崎さん:私がおすすめするのは栃木県にある、那須温泉「那須別邸 回」です。
◇編集部:こちらのお宿をおすすめする理由はどこでしょうか。
◆山崎さん:こちらの宿のオーナーが、人的・物的の両面から、常に宿の改革に取り組んでいる姿勢に、感銘を受けていることが、一番の理由です。
また、歴史のある温泉地で、すぐ近くに那須御用邸もあることから、折り紙付きの素晴らしい環境にあることが伺える点もポイントです。
<施設情報>
那須温泉「那須別邸 回」
・住所:栃木県那須郡那須町湯本206
・電話:0287-76-3180
・アクセス:
<車>東北自動車道 那須ICより約12km
<電車>東北新幹線の那須塩原駅から車で約30分(路線バスもあり)
<高速バス>バスタ新宿の那須・塩原号 新那須から徒歩約5分
温泉好き「らくらく湯旅」ユーザーへのコメント
◇編集部:最後に、「らくらく湯旅」ユーザーへ一言おねがいします。
◆山崎さん:はるばる遠い天草にお越しくださるお客様には、世界文化遺産の崎津集落や、南蛮文化の歴史などを勉強される方が多くいらっしゃいます。
お迎えする私たちも、お客様の旅が良い旅となるように、この天草の歴史や天草の良さを表現した宿となるよう、より一層研鑽を積むことが必要だと感じています。
エキゾチックでプライベートな空間と、美味しいお料理で、心を込めておもてなしいたしますので、是非この天草にお越しください。
◇編集部:本日はお忙しい中、お時間を頂戴いたしましてありがとうございました。
異国情緒溢れる自然と、文化や歴史など、天草の魅力を凝縮することにこだわり抜いた、おもてなしや空間を創出する取り組みは素晴らしいものと感じました。
東洋と西洋が融合した独自の文化が残る天草で、エキゾチックな時間を過ごせる天草下田温泉「石山離宮 五足のくつ」を訪れてみてはいかがでしょうか。
<基本情報>
天草下田温泉 石山離宮 五足のくつ
・住所:〒863-2803 熊本県天草市天草町下田北2237
・電話:0969-45-3633
・ホームページ:https://rikyu5.jp
・アクセス:
<車>九州自動車道松橋ICより約2時間
<電車>JR三角駅から車で約1時間30分
<飛行機>天草空港から車・タクシーで約40分
<船>
長崎方面から ー 島鉄フェリー・鬼池港から車・タクシーで40分
鹿児島方面から ー 三和商船フェリー・牛深港から車・タクシーで45分