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天然温泉とは?湧き上がる原理や人工温泉との見分け方、おすすめの温泉地をご紹介

更新日:2020年12月04日

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猫とワインと温泉が日々の癒し。自然の営みや偉大さを感じられる温泉が身近にある環境に感謝しつつ、その恩恵を堪能しています。後世まで大切に温泉とそれに伴う文化、歴史などを伝えていけるよう、独自の視点から日々執筆中。

何気なく入った温泉で「天然温泉」という表記を見かけたことはありませんか?実は温泉の定義は法律によって定められており、どんな温泉でも天然温泉と名乗れるわけではないのです。 ここでは天然温泉とはどんなものか、その定義や人工温泉、掛け流しとの違い、見分け方などについて紹介しましょう。

天然温泉とはどんな温泉?その原理もチェック

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天然温泉とは

温泉大国である日本では、「温泉法」という温泉に関する法律があります。

温泉法によると、温泉は指定成分を一定量以上含む地中から湧き出る温水や鉱水、水蒸気やガスであるか、もしくは温泉源から採取される源泉の温度が25℃以上であるものと定義づけられています。

厳密にいうと、温泉法においては「温泉」の定義はあるのですが、「天然温泉」の定義は現状ではありません。

そのため現在では一般的に温泉法で定められた条件を満たしている天然由来の温泉のことを天然温泉と指している、といえるでしょう。

天然温泉が湧き上がる原理とは

温泉は、火山性の温泉と非火山性の温泉の2種類に大きく分けられます。

◇火山性温泉

火山地帯の地下に存在するマグマを熱源とする温泉のことを火山性温泉といいます。

火山帯の地下数十キロの深部で生成されたマグマは、徐々に上昇し地下数キロから10キロ程度の浅い部分で滞留、マグマ溜まりと呼ばれる状態になります。マグマ溜まりの部分は1,000℃を超す高温となっており、この熱で地下水が温められ、地表に何らかの理由で湧き出してきたものが温泉です。

断層など、自然の地下構造によって湧き出るものもありますが、人工的にボーリングしポンプでくみ上げたものも多く存在しています。

◇非火山性温泉

地球では地下深くになるにしたがって地温が高温になります。マグマ溜まりではなく、地熱によって温められた深層地下水が温められた温泉が深層地下水型の非火山性温泉です。

マグマが冷えた後、高温を保ったまま固まった高温岩帯と呼ばれる岩石が地下にあり、その高温岩帯によって地下水が温められ、温泉となるケースもあります。

また、非火山性温泉には地殻変動など何らかの理由によって太古の時代に海水が地中に閉じ込められ、温められて湧き出る化石海水型もあります。

この場合、温泉の温度は低いこともありますが現行の温泉法では湯温が25℃以下であても塩分を多く含むため、温泉法上は温泉に該当することになります。

「人工温泉」や「掛け流し」との違いとは

人工温泉とは温泉法上の温泉と定義される基準を満たしていない水に対し、加温したり成分を人工的に加えたりしたものを指します。自然に湧き出したものではなく人工的に掘削しているから、ポンプで汲み上げているから人工温泉というわけではありません。

人工的に汲み上げていたとしても、温泉そのものが温泉法に定義された条件を満たしていれば天然温泉といえます。

また、温泉では「掛け流し」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。

掛け流しとは、浴槽に新しいお湯が常に注がれている状態でお湯は常に浴槽からあふれ出しており、なおかつそのあふれたお湯を再利用しないことを指す言葉です。

「源泉掛け流し」は、源泉がそのまま上記の「掛け流し」の状態であることを指しますが、加水・加温に関する見解は団体や温泉を管理する地方自治体によって異なっているのが現状です。

天然温泉と人工温泉の見分け方

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天然温泉と人工温泉の見分けは難しい

お湯そのものを見て、その温泉が天然温泉か人工温泉かを見分けるのは非常に難しいといえます。

「人工温泉」と明記している場合はすぐに見分けがつきますが、特にそういった表記をしていない温泉も多く存在しているからです。

見分け方のポイントは「天然温泉表示看板」

そこで天然温泉か人工温泉かを見分けるヒントとなるのが、日本温泉協会が発行している「天然温泉表示マーク」、「天然温泉表示看板」です。

参考:日本温泉協会 温泉名人|天然温泉表示マークと天然温泉表示看板

「天然温泉表示マーク」のある温泉は現在の温泉法に記載された規定を満たす天然温泉であることを示しています。「天然温泉表示看板」は、その温泉が温泉法の規定によって利用許可を受けている天然温泉であることを示す看板となっています。

「天然温泉表示看板」には源泉や泉質などについての記載もあるため、その温泉についての情報を確認することも可能です。温泉に行ったら、「天然温泉表示看板」をぜひチェックしてみてください。

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関東から気軽に行ける「静岡県:熱海温泉」

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日本には数多くの温泉地がありますが、熱海温泉はその中でも屈指の古い歴史を誇る温泉で、徳川家康が湯治のために逗留(とうりゅう)したことでもよく知られています。

明治時代には多くの要人や文人が別荘を構えました。現在でも都心から気軽に行ける温泉地として高い人気があります。

熱海温泉の泉質は多くが塩化物泉、中には硫酸塩泉の源泉もあるようです。

1300年もの歴史を持つ「栃木県:那須温泉

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那須温泉は1,300年以上の歴史を持ち、奈良時代にはすでにその名が遠く離れた当時の都、奈良にまで知られていたことがわかる記録が残されています。

源頼朝や日蓮上人(にちれんしょうにん)が湯治に訪れていたほか、俳人・松尾芭蕉が「おくのほそ道」の道中でこの那須温泉に入湯していたと伝えられ、歴史上の人物にも多く愛された温泉であることがうかがえるでしょう。

那須温泉の泉質は温泉毎に異なるため、さまざまな泉質の温泉が堪能できるのも那須温泉の魅力のひとつ。那須温泉で最も古い歴史を持ち、九尾の狐伝説でよく知られている殺生石の近くにある「鹿の湯」では、独特の入浴方法が伝えられています。

<鹿の湯の入浴方法>

まず、かぶり湯を200回行います。

「かけ湯」ではなく、頭からお湯をかぶる「かぶり湯」です。その後は41℃、42℃、43℃、44℃、46℃、48℃(48℃は男湯のみ)と、温度の異なる6種類の湯船から好きなものを選んで浸かります。

浸かり方にも決まりがあり、腰まで浸かって1分、胸までで1分、首までで1分を繰り返します。一回の入浴時間は約15分程度、一日の入浴回数は4回までにしてください。入浴後は身体を冷やさないように気を付けましょう。

豊かな山々に囲まれた自然いっぱい「熊本県:黒川温泉」

温泉としては江戸中期には湯治の場として知られる存在ではあったようですが、現在のような温泉郷としての歴史がスタートしたのは第二次世界大戦後と、比較的新しい温泉地です。泉質は硫黄泉。

一時期は衰退が激しかったようですが、山里であることを活かした野趣あふれる露天風呂の形成や、黒川温泉内のすべての露天風呂の利用が可能な「入湯手形」を発行するなどさまざまな工夫を重ねたこと、さらに当時の秘境温泉ブームもあり1990年頃には全国区での人気温泉地となった経緯があります。

「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」(ミシュラン社によるレストランではなく観光地を評価するガイドブック)で2つ星として掲載されたことにより、その人気は日本国内のみならず世界にも知られるようになりました。

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