村上天皇が療養した天皇泉【福地温泉】源泉かけ流し|日本百名湯・平家落人伝説の里と飛騨古民家の宿
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湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷、国道471号から一本細道に入ると、ネオンも高層建築も一切ない別世界が広がります。
福地温泉。平安時代に村上天皇が療養のためお忍びで訪れたと伝わることから「天皇泉」とも呼ばれ、日本百名湯にも選ばれた奥飛騨の秘湯です。
わずか11〜13軒の宿のほとんどが飛騨・新潟などから移築した江戸時代の古民家。
夜になると各宿の行燈の明かりだけがぽつぽつと灯り、平家の落人伝説が今も生きているかのような静けさの中で、源泉かけ流しの湯が旅人の体を温めます。
目次
奥飛騨の山里へ 平家落人伝説と天皇泉の由来

出典:福地温泉観光協会
福地温泉は、標高約1,000メートル、山の静寂に包まれた奥飛騨の里に位置しています。
JR高山駅から濃飛バスで約75分、中部縦貫道・高山ICからは車で約60分。
平湯・新穂高を結ぶ471号線から一本奥に入ったそこには、観光地化されることなく昔ながらの山里の佇まいが残っています。
この地には2つの伝説が今も語り継がれています。
ひとつは平安時代に村上天皇が病気療養のために訪れたという「天皇泉」の由来。もうひとつは、壇ノ浦の合戦に敗れた平家の落人が辿り着いたという伝説です。
村上天皇の毒蛇退治に由来する獅子舞「へんべとり」は高山市の無形民俗文化財に指定されており、古い歴史の息吹が温泉地全体に漂っています。
温泉街では毎朝、野菜や手作り食品が並ぶ朝市が開かれ、旅人と地元の人が気さくに言葉を交わす素朴な光景が広がります。
夜には全宿おそろいの行燈看板だけがほのかに浮かび上がり、その幻想的な光景も福地温泉の名物となっています。
上高地・乗鞍岳・飛騨高山 奥飛騨観光の拠点として

出典:福地温泉観光協会
福地温泉は、奥飛騨の豊かな観光地へのアクセス拠点として申し分ない立地です。
平湯温泉バスターミナルまで車で約10分圏内のため、そこから上高地行きのバスに乗り換えることができます。
日本を代表する山岳景勝地・上高地では梓川沿いの散策や穂高連峰の絶景が楽しめます。
また乗鞍岳へのマイカー規制バスもここを起点に利用でき、高山植物の宝庫・畳平(標高2,702メートル)まで足を伸ばすことも可能です。
城下町の風情が残る飛騨高山は車で約60分。
古い町並・宮川朝市・日下部民藝館など飛騨文化の精髄を体験した後、福地温泉に戻って囲炉裏料理と源泉かけ流しで締めくくる旅は、奥飛騨の豊かさを余すことなく味わう黄金コースです。
飛騨牛・囲炉裏料理と冬の青だる 福地ならではの食と季節

出典:湯元 長座
福地温泉の宿の多くは、囲炉裏端で食事をいただく「囲炉裏料理」が自慢です。
移築した古民家の囲炉裏に炭火が入り、飛騨牛・岩魚・山菜・きのこといった飛騨の食材が炎の前で一品一品丁寧に仕上げられます。
飛騨牛の朴葉焼き・炭火焼きステーキは特に人気が高く、囲炉裏の火と古民家の梁が織りなす空間で味わう食事は、ほかのどこにもない時間です。
冬の福地温泉には特別なお楽しみがあります。厳冬期(1月〜3月頃)に渓谷の岩壁に形成される巨大な氷柱「青だる」のライトアップです。
青と緑に輝く神秘的な氷の造形物は、温泉の湯けむりと雪景色とともに奥飛騨の冬の風物詩として旅人を魅了しています。
古民家に湧く源泉かけ流し 天皇泉体験

出典:湯元 長座
福地温泉の泉質は単純泉と炭酸水素塩泉で、湯上がり後もしばらく体がぽかぽかと温まり続けることから「あったまり湯」とも親しまれています。
効能はリウマチ・皮膚病・婦人病・神経痛・疲労回復・美肌と幅広く、女性に特に人気の美肌効果が高い湯です。
各宿とも自家源泉を持ちながら源泉かけ流しの湯を提供しており、飲泉できる宿もあります。
古民家の趣ある浴室で、重曹と炭酸水素を含んだやわらかなお湯に静かに浸かっていると、江戸時代からこの地の湯治場として人々が癒しを求めてきた歴史の重みが、ひそかに伝わってきます。
宿泊者専用の外湯「舎湯(やどりゆ)」の足湯や、隣の宿に「もらい湯」できる「のくとまり手形」を使った湯めぐりも、福地温泉ならではの楽しみです。
福地温泉の源泉かけ流し概要

出典:湯元 長座
泉質: 単純泉・炭酸水素塩泉
特徴: 湯上がりポカポカが長続きする「あったまり湯」・美肌効果(重曹成分)
源泉かけ流し: 各旅館とも自家源泉かけ流し・飲泉可能な宿あり
効能: リウマチ・皮膚病・婦人病・神経痛・疲労回復・美肌
旅の余韻

出典:湯元 長座
行燈の火がほのかに揺れる夜の山里。
古民家の太い梁の下で囲炉裏の炭火が静かに燃え、飛騨牛の脂が焼ける香りが漂っています。
平安の昔に天皇が療養にわざわざ訪れた湯に、今夜は自分が浸かっている。
平家の落人が辿り着いたという伝説の山里で、炭酸水素の柔らかな湯に体を委ねながら、福地温泉の静かな夜が更けていきます。



