万座と並ぶ通年日本最高所の秘湯【濁河温泉】源泉かけ流し|御嶽山7合目・標高1,800mの赤褐色の鉄湯と満天の星
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湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
岐阜県下呂市、御嶽山の飛騨側7合目。
標高1,800メートルの山中に、通年で車でたどり着ける日本最高所の温泉街があります。
「濁河温泉(にごりごおんせん)」。
鉄分による赤褐色のにごり湯が特徴で、泉質は含土類芒硝泉(ナトリウム・マグネシウム・カルシウム・硫酸塩・炭酸水素塩泉)。
霊峰御嶽山の雄大な裾野に広がる原生林の中、明治20年ごろの開湯以来、御嶽山への登山者や旅人たちに愛されてきた秘湯です。
「星降る里」と呼ばれるほどに澄んだ高山の夜空、周囲には仙人滝・緋の滝・白糸の滝が流れ落ち、ニホンカモシカや野生のリスが姿を見せることもある。
そんな大自然の中で、2種類の源泉100%かけ流しの湯に浸かる贅沢が待っています。
目次
御嶽パノラマラインを登る 日本最高所の温泉地へ

濁河温泉へのアプローチそのものが、すでに旅の醍醐味です。
下呂市中心部から国道41号・県道437号・県道441号(御嶽パノラマライン)経由で約120分、高山からは約100分。
山道を登るにつれて、御嶽山・日本一長い溶岩流・北アルプスの峰々が次々と視界に広がります。標高が上がるにつれ気温が下がり、深い原生林に囲まれた別世界へと変わっていく。このドライブ自体が旅の体験です。
なお、大型バス(8メートル以上)は通行不可で、途中1車線区間があるため、アクセスは自家用車またはJR飛騨小坂駅からタクシー(約1時間20分)が基本です。この「ひと手間」がかかる立地が、濁河温泉の秘湯感を守っています。
御嶽山登山と原生林散策 仙人滝・緋の滝・白糸の滝

出典:和歌山県
濁河温泉から御嶽山への登山ルートは、飛騨頂上(五の池小屋・標高約2,800m)まで約3時間。
そこからさらに約100分で山頂・剣ヶ峰(3,067m)に到達できます。
御嶽山は2014年の噴火の記憶が今も生々しく残る霊峰ですが、火山活動の状況に応じて登山道が整備・開放されており、霊峰の荘厳な景観と高山植物の豊かさを求めて登山者が訪れます。
登山をしない旅人には、原生林遊歩道の散策がおすすめです。
温泉街周辺には「仙人滝」「緋の滝」「白糸の滝」と3つの滝が点在しており、原生林の中を流れ落ちる清涼な滝を間近に眺めながらのトレッキングは、高山の空気とともに心身を解放してくれます。
飛騨の山里料理 朴葉みそ・川魚と山の食材

濁河温泉の宿では、飛騨の山里ならではの食材を使った料理が楽しめます。
飛騨の郷土料理「朴葉みそ」は、朴の葉の上に味噌と野菜・山菜・きのこを乗せて焼く料理で、朝食の定番として各宿で提供されています。
高山の渓流で育った岩魚・あまごの塩焼きや甘露煮も、山里の宿ならではの一品です。
秋にはキノコ料理が食卓を飾り、冬はしし鍋・猪鍋など山の幸が体を温めます。
標高1,800メートルの高山という立地から、夏でも涼しく快適に食事を楽しめるのも濁河温泉ならではです。
鉄の赤褐色が物語る 源泉かけ流しの山岳温泉体験

濁河温泉の歴史は江戸時代中期に発見されたとされ、明治20年(1887年)ごろに宿泊施設として整備されました。
標高1,800メートルという高所にありながら、昭和30年代に道路が整備されて以来、通年で訪れることができる日本最高所級の温泉地として知られています。
万座温泉(群馬)と並んで「通年で自家用車でたどり着ける日本最高所の温泉地」です。
泉質は含土類芒硝泉(ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉)・泉温52〜54℃。源泉は湧出時は透明ですが、空気に触れた瞬間から鉄分が酸化して赤褐色に変わっていきます。
この鮮やかな変色が源泉の新鮮さの証であり、各宿・市営露天風呂ともに源泉かけ流しで提供されています。
朝日荘では自家源泉(毎分250リットル)と共同源泉の2種類、合計100%かけ流しを実践。
加水・加温・循環・消毒を一切行わない純粋な山の温泉が楽しめます。
夜は「星降る里」の名に恥じない満天の星空が広がり、標高1,800メートルの露天風呂から天の川を見ながら入浴するという体験は、この温泉地でしかできない格別なものです。
濁河温泉の源泉かけ流し概要

泉質: ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉(含土類芒硝泉)
泉温: 52〜54℃
湯色: 湧出時は透明→空気に触れると赤褐色に変化(鉄分酸化)
源泉かけ流し: 各旅館・市営露天風呂とも源泉かけ流し(主要旅館は加水・加温・循環なし)
効能: 神経痛・筋肉痛・関節痛・五十肩・冷え症・動脈硬化症・高血圧症・胃腸病
旅の余韻

湧き出た瞬間は透明だった源泉が、空気に触れながら色を変えていく。
その酸化の瞬間を目の当たりにしながら、御嶽山の地底からわざわざ届いた熱水の新鮮さを全身で受け取ります。
ニホンカモシカが姿を見せる原生林、仙人滝の轟音、そして天の川が手に届きそうな満天の星。
濁河温泉は、日本にまだこんな場所があったのかと思わせてくれる、最後の秘境温泉のひとつです。



