平家落人が傷を癒した隠し湯【湯西川温泉】源泉かけ流し|日光国立公園・渓谷の囲炉裏宿と冬のかまくら祭


出典:彩り湯かしき 花と華
2026年05月02日

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湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

栃木県日光市、湯西川の渓谷沿いに茅葺き屋根の宿が点在するこの地には、壇ノ浦の合戦に敗れた平家の落人が逃れ住んだという伝説が今も息づいています。

天正元年(1573年)に平家の落人の子孫が発見したと伝わる湯西川温泉は、400余年の歴史を持つ秘湯です。

鯉のぼりを揚げない・たき火をしない・鶏を飼わないなど、源氏の追討から身を隠した平家の末裔が守り続けた風習が今も残るこの地で、アルカリ性のやわらかな源泉かけ流しが旅人の体を静かに包みます。

平家落人の里へ 渓谷の温泉街と独自の風習

出典:日光市観光協会 

湯西川温泉は、日光国立公園内、標高約750メートルの湯西川渓谷沿いに旅館や民家が立ち並ぶ温泉地です。

野岩鉄道・湯西川温泉駅からバスで約30分、日光宇都宮道路・今市ICから国道121号を経由して車で約70分と、東京から2〜3時間圏内でありながら深い山の静寂に包まれています。

露天風呂の数は温泉地全体で100以上を誇り、渓流を眼下に望みながら源泉かけ流しの湯に浸かれる宿が揃っています。

集落の中央には「平家の里」があり、茅葺きの古民家が再現された展示施設で平家ゆかりの品々や落人の暮らしを体感できます。

また集落では今なお「鯉のぼりを揚げない」「たき火をしない(煙で居場所を知られないため)」「鶏を飼わない(鳴き声で発覚を防ぐため)」「米をとがない(とぎ汁を流さないため)」という、源氏の追討から身を隠すために生まれた独自の風習が受け継がれています。

平安末期の記憶がこれほど日常の中に残る温泉地は、全国でも湯西川だけです。


平家大祭・かまくら祭・紅葉 湯西川の四季

出典:平家の里

湯西川温泉はどの季節に訪れても、それぞれの顔があります。

毎年6月第1土日に開催される「平家大祭」では、武者や姫に扮した総勢250余名が温泉街約1キロを練り歩く「平家絵巻行列」が圧巻です。

秋は10月中旬〜11月中旬の紅葉が美しく、渓谷を染め上げる赤・橙・黄と源泉の湯けむりが重なる露天風呂の眺めは格別。

そして冬(1月下旬〜3月中旬)には河川敷に約1,200基ものかまくらが作られ、ろうそくの明かりが灯る週末の夜景は「湯西川かまくら祭」として全国から旅人を集めます。


囲炉裏料理と落人食 平家ゆかりの山の幸

出典:彩り湯かしき 花と華

湯西川温泉の宿の多くが、囲炉裏を囲んだ郷土料理でもてなします。

名物は「平家お狩場焼」。

イワナ・ヤマメなどの川魚に加え、鹿・熊・山椒魚といったジビエを囲炉裏でじっくり炭火焼きにする豪快な一皿です。

身を潜めて山の中で暮らした平家の落人が、山の幸で命をつないだという歴史がそのまま食卓に乗っています。

山菜・きのこ・みそべら(川ナマズ)なども地元ならではの食材で、都会では絶対に出会えない味が囲炉裏の煙と一緒に旅人を迎えます。