温泉熱で育てたアワビが名物の秘境一軒宿【貝取澗温泉】源泉かけ流し|奥尻島を望む道南日本海の原生林に湧く赤褐色の温まりの湯
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湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
北海道南西部、道南の日本海沿いを走る国道229号から貝取澗川を遡ること数分。
原生林に抱かれた渓谷の奥に、ひっそりと湯けむりを上げる一軒宿があります。
貝取澗川沿いの山間に位置する貝取澗温泉は、豊かな原生林の中にたたずむ「国民宿舎あわび山荘」に温泉浴場が併設されています。
泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(pH6.5・源泉温度51.2℃・毎分515リットル)。
赤褐色のやや熱めの湯は塩分が体を芯から温め、湯冷めしにくい「温まりの湯」として道南の湯治客に長く愛されてきました。
そしてこの宿ならではの驚くべき名物が、温泉熱を利用して養殖されたアワビとヒラメ。
低価格でいただける新鮮なアワビ料理が全国の温泉ファンをこの秘境へと引き寄せています。
目次
貝取澗渓谷の奥へ 道南日本海の秘境に湧く一軒宿

貝取澗温泉(かいとりまおんせん)は、北海道久遠郡せたな町大成区貝取澗に位置しています。
函館から国道227号・229号を経由して車で約2時間30分、八雲ICから国道277号・229号を経由して車で約1時間30分、JR函館線八雲駅から函館バスで約1時間30分というアクセスです。
国道229号から貝取澗川沿いに少し上った場所に「あわび山荘」と日帰り入浴施設「大成国民温泉保養センター」が棟続きで建っており、宿泊と日帰りの両方で源泉かけ流しの湯を楽しめます。
「貝取澗」という地名はアイヌ語に由来するとされ、かつてこの地はアワビが豊富に採れる海辺の集落として知られていました。
1955年(昭和30年)に久遠村と貝取澗村が合併して大成町となり、2005年にはせたな町に編入されて現在に至ります。
温泉地の周辺は林野庁指定のレクリエーションの森にも選定された豊かな自然に囲まれており、町営キャンプ場も隣接。
春は桜・秋は紅葉と渓谷の四季が旅人を迎えます。
奥尻島・三本杉岩・せたな岬 道南日本海の絶景を巡る

出典:せなた観光協会
貝取澗温泉がある道南日本海沿岸は、北海道の中でも特に個性的な景観が続く海岸線です。
晴れた日には日本海の水平線上に奥尻島のシルエットが浮かびます。
1993年の北海道南西沖地震で被害を受けながら復興を遂げた奥尻島への定期フェリーはせたな港から運航されており(約2時間20分)、貝取澗温泉を起点に奥尻島観光を組み合わせることも可能です。
また道の駅「てっくいランド大成」周辺では、日本海に突き出た奇岩群が連なる景観美が楽しめます。
せたな町の海岸線に点在する「三本杉岩」は日本海に3本の岩柱が屹立する景勝地で、夕日との組み合わせが圧巻です。
「せたな岬」からは水平線に沈む夕日が眺められ、北海道本島最西端に近いこの地ならではの日没の光景が旅人を魅了します。
温泉熱で育てたアワビ・ヒラメ ここだけの食体験

貝取澗温泉を訪れる旅人が口をそろえて語るのが、アワビ料理の美味しさです。
あわび山荘では51℃という温泉の熱を利用してアワビとヒラメを養殖しており、食卓に上る海産物の鮮度と品質は格別のものがあります。
活アワビのお造りはコリコリとした歯ごたえと磯の旨みが際立ち、天ぷら・焼き物・踊り焼きなど多彩な調理法でいただけます。
温泉という資源をそのまま食に活かすという発想は、この宿ならではの独自の取り組みです。
「この地区のアワビは日本一美味しい」と語る地元ファンも多く、アワビ料理目当てに遠方から訪れるリピーターが後を絶ちません。
朝食の朝獲りイカソーメンも絶品と評判で、日本海の恵みをとことん楽しめる食卓が魅力です。
赤褐色の温まりの湯 源泉かけ流し体験

貝取澗温泉の湯は赤褐色を帯びた個性的な色合いが特徴です。
これは温泉成分の鉄分が酸化することで生まれる自然の発色で、浴槽の縁や底には温泉成分が長年堆積した独特の風格が漂っています。
泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(中性低張性高温泉)・pH6.5・源泉温度51.2℃・湧出量毎分515リットル(自噴+動力)。
塩化物イオンが肌表面に薄い皮膜を形成して熱を逃がさず、炭酸水素塩が肌を穏やかに整えます。
やや熱めの湯は長湯すると汗が噴き出るほどの温浴効果があり、神経痛・筋肉痛・関節痛・冷え性などへの効能が高く評価されています。
内湯は大きなガラス張りで渓谷の緑が一望でき、屋根付きの露天風呂では貝取澗川のせせらぎを聞きながら四季折々の景色を楽しめます。
日帰り入浴は大人450円というリーズナブルな価格で、地元のせたな町民にも長年愛されてきた生活温泉です。
貝取澗温泉の源泉かけ流し概要

泉質: ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉(中性低張性高温泉)
pH: 6.5(中性)
源泉温度: 51.2℃
湧出量: 毎分515リットル(自噴・動力)
湯色: 赤褐色(鉄分の酸化による)
源泉かけ流し: 掛け流し方式(季節により加水あり)
効能: 神経痛・筋肉痛・関節痛・冷え性・慢性消化器病・皮膚病・疲労回復
旅の余韻

51℃の源泉が赤褐色の湯を浴槽に満たす中、川のせせらぎが屋根越しに聞こえています。
ガラス越しに見える原生林の緑が揺れ、遥か向こうの日本海には奥尻島の影がかすんでいます。
温泉の熱で育てられたアワビをコリコリと噛みしめながら、「温泉をここまで活かした宿は他にない」と思います。
塩と重曹の湯が体の芯まで温まった後も、その熱がじんわりと長続きする。
道南の秘境で、温泉と食と自然が三位一体になった旅の醍醐味が、貝取澗温泉にはあります。



