廃線跡に生まれた道央の名湯【北湯沢温泉】源泉かけ流し|白絹の床・三階滝・きのこ王国と長流川渓谷の湯めぐり


出典:NPO法人だて観光協会
2026年06月16日更新

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

伊達市大滝区、長流川のせせらぎに耳を澄ますと、旅の緊張がふっとほどけていきます。

緑の風リゾートきたゆざわに着くころには、森の匂いがもう一つのごちそう。

北湯沢温泉の源泉かけ流しは、湯が生きていることを教えてくれる存在でした。肩先を包む湯のぬめりと湯けむりの向こうの木立。

日常の音が遠のき、ただ温度と呼吸だけが残る。そんな時間に会いに来ました。

長流川の峡谷へ 廃線跡に生まれた温泉郷の歴史

出典:公益社団法人 北海道観光機構

北湯沢温泉は、北海道伊達市大滝区北湯沢温泉町の長流川沿いに位置しています。

道央自動車道・伊達ICから国道453号を経由して車で約40分、JR室蘭本線・伊達紋別駅からバスで約50分(「北湯沢温泉」または「白絹の床」下車)というアクセスです。

札幌からは道東道・道央道を経由して車で約1時間30〜40分と、道央屈指の好立地です。

開湯は明治15年(1882年)。壮瞥町に入植していた上野梅吉が温泉を開いたのが始まりで、「梅吉温泉」として営業を始めたとされています。

その後数度の名称変更を経て「北湯沢温泉」として定着しました。

温泉地の歴史にユニークな一幕が刻まれているのは1986年(昭和61年)の旧国鉄胆振線廃止です。かつて「北湯沢駅」が存在したその跡地に「緑の風リゾートきたゆざわ(旧・湯元名水亭)」と「きたゆざわ森のソラニワ(旧・湯元第二名水亭)」が建てられ、現在も入口付近に「旧国鉄胆振線北湯沢駅跡」の標柱が立っています。

鉄路の記憶を残しながら道央随一のリゾート温泉地へと変貌したこの場所の歴史は、旅の奥行きを深めてくれます。


白絹の床・三階滝・ホロホロ山登山 大自然を歩く

出典:公益社団法人 北海道観光機構

北湯沢温泉の周辺には、道内でも屈指の自然景観が凝縮しています。

「白絹の床」は、長流川が北湯沢温泉地区を流れる部分だけに現れる特異な景観です。

火山灰が堆積してできた緑色凝灰岩の黄色い岩盤が川底に露出し、その上を白く泡立つ清流が流れる様子が「白い絹を敷き詰めたよう」と形容されてきました。

川沿いに散策路が整備されており、温泉地の目の前でいつでもこの美しさを体感できます。源泉が川底からも湧き出しているため、川の水はほんのりと温かく、夏は素足を浸けながら散歩を楽しむ旅人も多くいます。

「三階滝」は長流川の上流に位置する三段に流れ落ちる美しい滝で、北海道でも指折りの滝として知られています。

新緑・紅葉の季節に特に美しく、滝壺に落ちる水の音と渓谷の緑が旅人を迎えます。

さらに「ホロホロ山(標高1,322メートル)」は温泉郷に名前を冠した山で、山頂からは洞爺湖・ニセコ・支笏湖・有珠山など道央の山と湖が360度のパノラマで広がります。


きのこ料理・ヤマメ・山の幸 北湯沢ならではの食体験

出典:きのこ王国

北湯沢温泉地区は「きのこ料理の聖地」として道内に名が知れ渡っています。

道の駅「フォーレスト276大滝」に隣接する「きのこ王国」は、北湯沢温泉のすぐそばに建つ道内最大級のきのこ料理専門店で、シーズン中(秋)は大行列ができるほどの人気店です。

大きなきのこ汁を1杯無料でいただけるサービスが名物で、地元産のシメジ・マイタケ・ブナシメジをたっぷりと使ったそば・うどん・炒め物などが食べられます。

秋には周辺の山でキノコ採りを楽しむ観光客も多く訪れます。

ホロホロ山荘のバイキングでは、長流川で育ったヤマメの塩焼き・山菜の天ぷら・きのこ料理など地場の食材を活かした料理が並びます。

大型ホテルのバイキングではカニ・ステーキ・寿司など北海道らしい豪華な品揃えで、ファミリーから大人の旅まで幅広いニーズに応えています。


無料シャトルで3館を渡り歩く 源泉かけ流し体験

出典:ホロホロ山荘

北湯沢温泉の最大の楽しみが、無料の湯めぐりシャトルバスを使った3館湯めぐりです。

長流川の東岸に「緑の風リゾートきたゆざわ」「きたゆざわ森のソラニワ」の大型ホテル2軒が、西岸に「ホロホロ山荘」をはじめとする小規模な旅館・民宿が並んでいます。

いずれかの宿に宿泊すると、夕方から15分おきに運行される無料シャトルバスで3館の温泉を自由にはしごできます。

泉質は硫黄泉とアルカリ性単純温泉が主で、源泉温度70〜93℃という高温泉。

長流川の川底からも源泉が湧き出すほどの豊富な湯量を誇ります。

ホロホロ山荘は全長90メートルの浴場に露天風呂・壺湯・立ち湯・香り湯など男女合わせて19の多彩な浴槽が揃い、きたゆざわ森のソラニワには温泉水を使った大型温泉ビーチ(プール)が完備されています。

緑の風リゾートきたゆざわは豊富な湯量で源泉かけ流しの大浴場を誇ります。宿ごとに異なる個性の湯を渡り歩く体験が、北湯沢温泉の旅を際立たせています。


北湯沢温泉の源泉かけ流し概要

出典:公益社団法人 北海道観光機構

泉質: 硫黄泉・アルカリ性単純温泉(宿により異なる)

源泉温度: 70〜93℃(高温泉)

源泉の特徴: 長流川の川底からも自然湧出・豊富な湯量

源泉かけ流し: 各宿で実施(施設により加水あり)

効能: 神経痛・リウマチ・筋肉痛・関節痛・皮膚病・慢性婦人病・冷え性・疲労回復


旅の余韻

出典:NPO法人だて観光協会

無料シャトルに乗って3軒目の温泉を出た後、白絹の床の前に立ちます。夜の闇の中でも長流川の流れる音だけが聞こえ、月明かりに照らされた黄色い岩盤が白く輝いています。

川底から湧き出す源泉のほんのりとした温もりが、素足にじんわりと伝わってきます。

廃線になった鉄道の跡地にホテルが建ち、140年前に開いた湯が今も変わらず峡谷の底から湧き続けている。

秋はきのこ汁の香りが温泉地に漂い、紅葉が長流川を赤く染める。

北湯沢温泉の旅は、道央の豊かさがひとつの渓谷に凝縮された、季節ごとに訪れたくなる旅です。