温泉経営者がおすすめする一度は泊まりたい温泉宿#6 阿蘇内牧温泉-蘇山郷-
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かっきー
江戸の玄関口と言われた宿場町に生まれ育った生粋の江戸っ子。還暦を迎えた今なお、旅とサーフィンをこよなく愛するアクティブシニア。某夕刊紙に勤務していた経歴を持つ。
マイナーな温泉から秘湯まで、気の向くままに温泉へ出かけることが大好きです。温泉の良さはもちろん、分かりやすく温泉や旅館などの良さをお伝えしてまいります。
日本人にとって温泉は古くから馴染み深く、温泉めぐりをしている方も多いのではないでしょうか。温泉旅行を充実させるには、泉質の良さはもちろん、「温泉宿」もポイントの一つになります。
本企画では、魅力ある温泉宿を温泉経営者の方に選んでいただき、リレー形式でご紹介していきます。
今回ご紹介するのは、熊本県にある「阿蘇内牧温泉 蘇山郷(そざんきょう)」です。経営者の方にお伺いした魅力の数々をお届けしてまいります。
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目次
第6回目は熊本県阿蘇市にある阿蘇内牧温泉の旅館「蘇山郷」
提供:阿蘇内牧温泉 蘇山郷
第6回となる今回は、前回インタビューさせていただいた鳥取県の「鷺の湯温泉 さぎの湯荘」の田辺さんがおすすめする、阿蘇内牧温泉「蘇山郷」の経営者へインタビューしました。
阿蘇内牧温泉は熊本県阿蘇市の阿蘇カルデラ内の北部にあり、世界最大級の阿蘇カルデラを形成する外輪山に囲まれた場所に位置します。阿蘇山周辺は阿蘇温泉郷と呼ばれ、温泉地が点在しています。中でも阿蘇内牧温泉は最大規模の温泉街となっています。
隣接する大観峰(だいかんぼう)からの雲海や阿蘇くじゅう国立公園に広がる草千里ヶ浜(くさせんりがはま)など、貴重な光景を目の当たりにできる場所が多く存在します。都会では感じられない自然のエネルギーを存分に吸収できる温泉地です。
また、悠久の大自然の景観にも恵まれた阿蘇内牧温泉は、かつての文豪たちにも愛されたようで、夏目漱石、与謝野鉄幹(よさの てっかん)・晶子夫妻らの文学碑もあります。
老舗旅館の経営と、地域の発展にも尽力する阿蘇内牧温泉「蘇山郷・永田祐介さん」
蘇山郷 3代目館主 永田 祐介さん
◇らくらく湯旅編集部(以降 編集部):特別企画の第6回は、阿蘇内牧温泉「蘇山郷」の館主である永田祐介さんにお話を伺います。
本日はお忙しい中ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
◆永田さん:よろしくお願いいたします。
さっそくお話を伺いました!
蘇山郷がある阿蘇内牧温泉はどのような温泉地でしょうか。
提供:蘇山郷
◆永田さん:阿蘇内牧温泉のある阿蘇市は、阿蘇山をぐるりと囲む外輪山の内側で、カルデラの北側にあり北阿蘇とも呼ばれています。温泉街は黒川の清流沿いにあり、歴史的に登場するのは、120年ほど前からとなります。
和の趣を残す旅館から、ホテル、大規模なスパリゾートや小規模なペンションや民宿などの温泉宿泊施設や、グルメやディナー、お酒が楽しめるお店が多数あります。
◇編集部:蘇山郷をご紹介いただいた「さぎの湯荘」の田辺さんより、阿蘇内牧温泉は周囲を外輪山に囲まれており、日常とは違った空間があると伺いました。
◆永田さん:外輪山の景観は、山の稜線に日が沈み薄暮となる時間帯に、夕日に照らされる陰影が幻想的な雰囲気を漂わせます。気象条件にもよりますが、阿蘇内牧温泉の北側にある外輪山の大観峰に登ればカルデラを覆う雲海を眺めることもできます。
提供:蘇山郷
外輪山は阿蘇くじゅう国立公園に指定されていて、温泉街の南側には、美しい円錐形をした米塚(こめづか)、広大な草千里ヶ浜、それらを取りまく火口原と外輪山など、雄大で素晴らしい風景を連続して体験することができます。
提供:阿蘇市
◇編集部:息を呑むような素晴らしいロケーションですね。
次に温泉について教えてください。
◆永田さん:蘇山郷のもつ源泉から湧出する温泉は、循環や加熱、加水をしていない純粋な本物の温泉を、源泉掛け流しで楽しんでいただけます。温度は約43.5℃です。
◇編集部:温度が43.5℃ではやや熱い気がしますが、温度調節はどのようにされるのでしょうか?
◆永田さん:絶えず浴槽に注ぎ込む源泉の湯量を調節して湯浴みに適した温度にしています。源泉は毎分270リットル以上の豊富な湧出量がありますので、浴槽内のお湯の温度が低くなったら源泉の注ぎ込む量を増やし、温度が高くなったら注ぎ込む量を減らすのです。
また、大浴場の温泉は常に新鮮さを保つために毎日全て交換しています。
◇編集部:まさしく自然の恵みそのものが享受できる、上質な温泉なのですね。
泉質にはどのような効果があるのでしょうか?
◆永田さん:泉質は九州では希少な硫酸塩泉です。ナトリウム・マグネシウム・カルシウムが含まれています。ほぼ無色透明ですが、鉄分も含まれていることから、光が差し込むと翡翠(ひすい)色に輝くのが特長です。
美肌効果も高く、肌に保湿力を与えてハリや弾力を回復してくれるアンチエイジングの湯となっています。体を芯から温めて自然治癒力を高めることが期待できます。
提供:蘇山郷
◇編集部:マラソン選手などアスリートの方にも選ばれている温泉ともお伺いしました。
◆永田さん:練習コースに適していたり、受け入れ環境が整っているという面もありますが、温泉の自然治癒力の高さから、過酷なトレーニングによる心身の疲労をケアしていただくのに適した温泉として、30年近くお迎えしています。
◇編集部:お風呂はどのような種類があるのでしょうか?
◆永田さん:大浴場の他、露天風呂、貸切露天風呂、丸太をくり抜いて作った足湯などをご用意しています。24時間源泉掛け流しが満喫できる客室露天風呂を備えたお部屋の用意もございます。
提供:蘇山郷
提供:蘇山郷
◇編集部:まさに身も心も癒される快適さですね。
お宿についてのこだわりや、サービスはありますか?
◆永田さん:和の趣ある宿として、お部屋は基本的に和で統一し、快適な空間のご提供を意識しています。最近ではデザイナーズルームとして、畳敷きのお部屋にベッドをレイアウトして、和の趣を損なわずに快適さと融合を図るなどリニューアルも実施しています。
提供:蘇山郷
◇編集部:バリアフリーの取り組みについては如何でしょうか。
◆永田さん:世代を超えたご家族でのご利用にも配慮して、リニューアルの際、エレベータの設置やフローリングのお部屋を設けました。
提供:蘇山郷
◇編集部:世代を超えたご家族でのご利用とは、具体的にどのようなことなのでしょうか?
◆永田さん:阿蘇には、心と身体を癒す温泉の他に、老若男女まで幅広く楽しめるアクティビティとして、草原での乗馬や熱気球での空中散歩、渓流でのトレッキング、大観山での天空ヨガなど、自然環境に恵まれたロケーションを活かした様々な自然体験のほかゴルフ場など、たくさんのレジャースポットがあります。
宿でも、年齢問わず皆様が快適に過ごせる空間のご提供と、日常と異なる、阿蘇の稀な自然体験を楽しんでいただけるよう配慮しています。
例えば祖父母の方の還暦などのお祝いなどで、お孫さんとその親御様と3世代の皆様でご滞在されても、皆様でのお祝いの会席のほかは、祖父母は温泉湯治や史跡散策、お子様や親御様は別にアクティブな自然体験を楽しむという方々もいらっしゃいます。
◇編集部:とても一泊程度では物足りませんね。
◆永田さん:そうですね、物足りなさもあるかもしれませんが、もしも天候に恵まれなかったことを考えると、満喫して頂くには余裕を持って連泊することをお勧めします。
当館では手軽に連泊いただけるよう素泊まりのプランもご用意しています。冒頭でご紹介した通り、温泉街にはディナーやお酒を楽しめる場所もありますので、ご希望のお客様にはお店のご紹介や事前予約を承っています。
◇編集部:コンシェルジュサービスのようなものですね。ちなみに、今日は宿の食事で、明日は外食などというワガママも聞いてもらえるのでしょうか。
◆永田さん:(笑)もちろん承ります。
その他にも、当宿では焼酎バーやルーフトップバーもご用意しています。焼酎バーでは、熊本の米焼酎のほか、大分の麦焼酎、鹿児島の芋焼酎、沖縄の泡盛を楽しんでいただけます。
提供:蘇山郷
ルーフトップバーは、360°を囲む外輪山の景観を楽しみながら、カクテルなどをご提供しています。カクテルは、朝食でもご提供しているベルギーに拠点を置く International Taste Institute(国際味覚審査機構)に受賞した阿部牧場のASOMILKを使ったカルーア・ミルクが好評です。
提供:蘇山郷
食事は地産地消の食材にこだわった料理を提供していると伺いました。
◆永田さん:熊本を火の国と呼ぶことはよくご存知かと思いますが、水の国とも呼ばれ豊かな水資源があります。阿蘇の周辺にいくつも湧いている水は、環境省が認定する名水百選も選ばれています。
名水の湧く豊穣な地で育つ新鮮な野菜や、阿蘇の広大な草原に放牧されるあか牛、川魚のヤマメなど、阿蘇の恵みをご提供することを心がけて、食材の仕入れ先は生産者がわかることを基準に選んでいます。
提供:蘇山郷
◇編集部:食事でも阿蘇を堪能できますね。地元食材をふんだんに取り入れるほかにこだわっていることはありますか?
◆永田さん:当館では、安心して食べていただける旬の素材を使ってお料理をご提供しています。
有機無農薬の採れたての野菜を並べたサラダバーは、ドレッシングがなくても美味しくいただけますし、豊かな水源で育った阿蘇高原コシヒカリも、昔ながらのかまどと羽釜で炊き上げています。他にも地元産の大豆で作った納豆やざる豆腐など、従来の和食スタイルをベースにお客様に安心して食べていただける朝食をご用意しています。
熊本地震で大きな影響もあったかと思いますが、現在の内牧温泉へのアクセスはどのようになっていますでしょうか?
◆永田さん:熊本空港から車で約40分、電車ではJR阿蘇駅からバスで15分ほどのところにあります。2016年の熊本地震の影響で道路の通行規制がかかったり、電車が運休することもありました。しかし、地域一丸となって復興にあたり、現在では開通することができました。
今では、飛行機や電車を利用して日本全国から、老若男女の方がご滞在にいらっしゃいます。
阿蘇の大自然を体験する目的で、海外から来られる方も全体の3割くらいいらっしゃいます。
阿蘇内牧温泉 蘇山郷 永田さんがおすすめする温泉宿
◇編集部:「らくらく湯旅」ではリレー形式で温泉宿を紹介していきます。永田さんがおすすめする一度は泊まりたい温泉宿をご紹介いただけないでしょうか。
◆永田さん:どこも色々な魅力があり、ひとつに決めるのは難しいのですが、あえて言うなら別府温泉の「悠彩(ゆうさい)の宿 望海(ぼうかい)」をおすすめします。
◇編集部:そちらの旅館がなぜ、おすすめなのでしょうか。おすすめするポイントをお伺いできますか?
◆永田さん:「望海」は、別府湾に面したオーシャンビューのロケーションにあります。山に囲まれた景観の蘇山郷と全く正反対なところに惹かれますね。
それから、料理が本当に素晴らしいのです。豊後水道で獲れる関あじ・関さばやふぐといった高級魚を食材としたお宿の料理は、一度は味わう価値があると思います。
<施設情報>
別府温泉 「悠彩の宿 望海」
住所:大分県別府市北浜3-8-7
電話:0977-22-1241
アクセス:
<電車>JR別府駅より約15分、タクシー約4分
<車>別府I.Cより約15分
温泉好き「らくらく湯旅」ユーザーへのコメント
◇編集部:最後に、「らくらく湯旅」ユーザーへ一言おねがいします。
◆永田さん:3〜4月の阿蘇は、一面が野焼きで一旦は黒くなります。そこからすぐに、新緑が芽吹き一年でもっとも美しくなる季節になります。
阿蘇地震で被災した阿蘇周辺も同じように一旦は交通やライフラインまでが分断しましたが、地域が一丸となり復興しています。アクセスも以前のように便利となりました。阿蘇の自然のように新たに生まれ変わったこの阿蘇内牧温泉は、以前にも増して皆様をおもてなしさせていただきますので、この機会に是非ともお越ししていただければと思います。
◇編集部:本日はお忙しい中、お時間を頂戴いたしましてありがとうございました。
雄大な大自然のなか、本物を提供することに徹底してこだわり、震災という大きな困難を乗り越えるには言葉に尽くせない苦難があったことと思います。
地元の方々の復興へ向けたみなぎる活力と、古来より変わらない阿蘇の大自然の息吹を触れに、この地を訪れてみてはいかがでしょうか。
<基本情報>
阿蘇内牧温泉 蘇山郷
住所:熊本県阿蘇市内牧145-1
電話:0967-32-0515
ホームページ:http://www.sozankyo.jp/
アクセス:
<バス>
JR阿蘇駅より内牧温泉行きバスで商工会前バス停にて下車(約15分)、バス停より徒歩2分
<車>
熊本ICよりR57を阿蘇方面へ70分(ミルクロード経由)