タンチョウが舞う釧路湿原唯一の温泉【茅沼温泉】源泉かけ流し|シラルトロ湖を望む茶褐色の美肌湯と湿原の旅
この記事を書いた人
湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
釧路湿原国立公園の東北端、シラルトロ湖の湖畔。広大な湿原を見渡す小高い丘の上に、この広い釧路湿原国立公園内でただ一か所だけ湧く天然温泉があります。
北海道川上郡標茶町の茅沼温泉は、1975年(昭和50年)に標茶町が深度1,100メートルのボーリングを行い湧出させた温泉です。
泉質はナトリウム塩化物泉(弱アルカリ性高温泉)・源泉温度47.2℃・毎分450リットル。
植物由来の有機成分を含む茶褐色のモール温泉が源泉100%かけ流しで注がれる露天風呂から、シラルトロ湖と湿原の大パノラマを眺める。
そんな体験ができる一軒宿が、2024年9月に隈研吾・原研哉のデザインで生まれ変わった「ぽん・ぽんゆ」です。
国鉄時代から続く「タンチョウが来る駅」として知られる茅沼駅のすぐそばで、野生のタンチョウと温泉が旅人を迎えます。
目次
釧路湿原の奥へ 日本最大の湿原に湧く一軒宿

出典:ぽん・ぽんゆ
茅沼温泉(かやぬまおんせん)は、北海道川上郡標茶町字コッタロ原野茅沼に位置しています。
JR釧網本線・茅沼駅から徒歩約15〜20分(または送迎)、釧路市内から国道391号を北上して車で約45分というアクセスです。
たんちょう釧路空港からは車で約1時間10分。国道391号から道道959号に入り約2.5キロ進んだ終端近く、シラルトロ湖を臨む小高い丘の上に建っています。
かつて「釧路湿原パーク憩の家かや沼」として1978年に開業したこの施設は、2019年に経営破綻で休業状態に入りましたが、2022年に新泉源のボーリングを完工し、2024年9月に大規模改修を経て「釧路湿原かや沼観光宿泊施設 ぽん・ぽんゆ」として生まれ変わりました。
建築家・隈研吾氏が基本設計を手がけ、日本デザインセンター社長・原研哉氏がデザイン設計を担当した総事業費16億2千万円の施設として、釧路湿原の新たな拠点施設となっています。
「ぽん・ぽんゆ」という愛称はアイヌ語の「ぽんゆ(小さな湯)」を重ねた名で、標茶町内の生徒たちのアンケートで選ばれました。
タンチョウが来る駅・SL冬の湿原号・湿原散策 釧路湿原の旅

出典:フォトAC
茅沼温泉の最大の魅力のひとつが、宿のすぐそばにあるJR茅沼駅とタンチョウの存在です。
国鉄時代の駅長がタンチョウへの給餌を始めたことがきっかけで、今も地元の人々が引き継いでタンチョウへの給餌を続けており、冬から春にかけて野生のタンチョウが当たり前のように駅のホームや周辺の道路を歩く光景が見られます。
「施設前で野生の鶴を二羽見てラッキーだった」という旅行者の声が多く、宿の露天風呂から野生の鹿が見えることもある。
そんな稀有な自然体験が日常の温泉地です。
冬期(1月〜3月頃)にはJR釧網本線をSLが牽引する「SL冬の湿原号」が釧路〜標茶間を走り、白煙を上げながら雪原の湿原を走る姿は全国から鉄道ファンを惹きつけます。
夏期(4〜10月頃)には「くしろ湿原ノロッコ号」がゆっくりと湿原を走り、車窓から湿原の四季の自然を眺めることができます。
またシラルトロ湖畔では春秋の渡りの時期にシベリアとの間を行き来する多数の水鳥が飛来し、鳥類の楽園とも呼ばれる湖周辺の散策路で四季の自然観察が楽しめます。
標茶の食の恵み 釧路の海鮮と湿原の食卓

出典:ぽん・ぽんゆ
ぽん・ぽんゆのレストランでは、標茶・道東の食材を活かした料理が楽しめます。
標茶町は酪農と牧畜が盛んな町で、広大な牧場が湿原に接するように広がっています。
良質な乳製品と道東の農産物が食卓の地産地消を支えており、朝食の牛乳・乳製品は評判の高い一品です。
釧路市内まで車で約45分という距離からオホーツクや太平洋の新鮮な海鮮も届き、釧路を代表するシシャモ・花咲ガニ・秋鮭など道東の旬の幸が季節ごとに食卓に上ります。
広大な湿原と牧場に囲まれた静寂の中でいただく食事は、釧路市内のレストランとはひと味違うゆったりとした時間を届けてくれます。
シラルトロ湖を望む茶褐色のモール泉 源泉かけ流し体験

出典:ぽん・ぽんゆ
茅沼温泉の泉質はナトリウム塩化物泉(弱アルカリ性低張性高温泉)・源泉温度47.2℃・毎分450リットル・温泉成分総計9.765g/kg。
淡い黄色〜茶褐色を帯びた湯は植物由来の有機成分(モール成分)を含んでおり、塩辛い味と無臭という特徴があります。飲泉も可能で、慢性消化器疾患・慢性便秘への効能があるとされています。
塩化物成分が肌表面に薄い皮膜を形成して湯冷めを防ぎ、モール成分が肌をなめらかに整える「美肌の湯」として評判が高く、「子供のアトピーに効果があった」「2〜3日後に肌の調子が良くなった」という体験談が多く届く湯です。
露天風呂からは眼下にシラルトロ湖が広がり、四季折々の湿原の景色。
春の新緑・夏の湿原の緑・秋の紅葉・冬の雪景色を眺めながら源泉かけ流しの湯に浸かれます。
釧路湿原国立公園内でただ一か所の天然温泉という希少性と、野生のタンチョウが訪れることもある圧倒的な自然環境が、この温泉を特別な体験にしています。
茅沼温泉の源泉かけ流し概要

出典:ぽん・ぽんゆ
泉質: ナトリウム塩化物泉(弱アルカリ性低張性高温泉)・モール温泉
源泉温度: 47.2℃
湧出量: 毎分450リットル
湧出深度: 1,100メートル(1975年掘削)
湯色: 淡い黄色〜茶褐色(モール成分含有)・塩辛い味・無臭
源泉かけ流し: 源泉100%かけ流し(高温時は一部加水あり)・飲泉可
効能: 神経痛・筋肉痛・関節痛・冷え性・慢性皮膚病・慢性消化器病・婦人病・切り傷・火傷・美肌
旅の余韻

出典:ぽん・ぽんゆ
露天風呂の縁に腕をかけながら眼下のシラルトロ湖を眺めていると、岸辺の葦の向こうに白い大きな鳥の姿が見えます。
タンチョウです。世界の鶴の中でも最も美しいと言われる日本の国鳥が、当たり前のように湿原に立っている。
釧路湿原国立公園の中にただ一か所だけ湧くモール温泉の茶褐色の湯に体を委ねながら、眼前の2,000種の生き物が共生する小宇宙を静かに見渡す。
SLの汽笛が遠く湿原に響き、冬の白い湿原が茜色に染まっていく。この温泉でしか得られない時間が、旅人の記憶に深く残ります。



