世界遺産の湯宿が残る【温泉津温泉】源泉かけ流し|石見銀山・重要伝統的建造物群保存地区の湯町を歩く
目次
狸の伝説「元湯」と地震が生んだ「薬師湯」 源泉かけ流し体験

出典:薬師湯 温泉津温泉
温泉の主要な源泉は2か所。1つは1300年以上の歴史を誇る山陰屈指の古湯で、傷を負ったタヌキが湯浴みして傷を治したとの伝説が残る「元湯」。
もう1つは明治初期の浜田地震で突然噴出した「薬師湯」。
古い建物が立ち並ぶ温泉街に、効能が微妙に異なる2つの公衆浴場が向かい合っています。
元湯泉薬湯は開湯時からの源泉を利用しており、他の旅館等へ分湯するほどの湯量がありません。
引湯道を隔てて向かい合う古風な3階建て木造旅館は元湯の直営ですが、館内に内湯はなく、共同浴場に通うという昔ながらの湯治場のスタイルを維持しています。
浴槽の縁や底には長年の温泉成分が積み重なり独特の重みを放っており、成分の濃さがそのまま歴史の厚みとして目に見えます。
薬師湯は1872年に発生した浜田地震により別の源泉が湧出を始めたことから「震湯」とも呼ばれています。
レトロモダンな洋風建築が魅力的な外湯で、温泉津に現存する温泉施設として最古の大正初期に建てられた旧館を利用した「震湯カフェ内蔵丞(くらのじょう)」が、大正ロマンあふれる情緒を感じさせます。
泉質はナトリウム-塩化物泉(元湯)とナトリウム-塩化物泉(薬師湯)。
泉温は約49℃と高く、湧出時は無色透明ですが、空気に触れると淡い茶褐色に変化します。
どちらも100%源泉かけ流しで入浴だけでなく飲泉も行えます。
塩と炭酸ガスのダブルの働きで、湯上がり肌はつやつやになります。
また1957年には九州大学温泉治療学研究所によって、原爆症に対する効能が報告されたという記録も残っています。
温泉津温泉の源泉かけ流し概要

出典:薬師湯 温泉津温泉
泉質: ナトリウム-塩化物泉(元湯・薬師湯それぞれ異なる源泉)
源泉温度: 約49℃
湯色: 湧出時は無色透明→空気に触れると淡い茶褐色に変化
源泉かけ流し: 両外湯とも100%源泉かけ流し・加水加温なし・飲泉可
効能: 神経痛・筋肉痛・リウマチ・慢性消化器病・冷え性・慢性皮膚病・切り傷・火傷・慢性婦人病・疲労回復
旅の余韻

出典:のがわや旅館
石州瓦の赤い屋根が連なる路地を歩き、向かいに並んだ2つの外湯ののれんをくぐります。
どちらに先に入るか迷うのが、温泉津温泉の旅の最初の贅沢です。
1300年前にタヌキが傷を癒した湯と、明治の地震が突然生み出した湯。
同じ温泉街に、まるで異なる物語を持つ2つの源泉が隣り合っている。このことが温泉津温泉のすべてを象徴しています。
湯上がりに湯衣をまとい、龍御前神社の夜神楽を眺めながら温泉津焼の器に熱燗を注ぐ夜。
世界遺産に登録された港町の静かな路地で、日本の温泉文化の原型が今も息づいています。



