世界遺産の湯宿が残る【温泉津温泉】源泉かけ流し|石見銀山・重要伝統的建造物群保存地区の湯町を歩く
この記事を書いた人
湯あがり ぽか子
温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!
島根県大田市温泉津町に湧く温泉津温泉(ゆのつおんせん)は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、港町でもあるこの地は「石見銀山遺跡とその文化的景観」の一部として世界遺産に登録されています。
温泉津温泉街は、温泉町として全国で唯一、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
泉質はナトリウム-塩化物泉を主体とし、薬師湯は島根県唯一の、全国12か所しかない日本温泉協会の天然温泉の審査でオール5を獲得しています。
世界遺産・重伝建・日本温泉協会オール5という三重の称号を持ちながら、観光地化されすぎない素朴な湯治場としての佇まいを今も守り続けているのが、この温泉地の最大の個性です。
目次
石見の港町へ 銀の積出港から温泉の町へ

出典:薬師湯 温泉津温泉
JR温泉津駅の北、温泉津川に沿って細長く旅館が立ち並ぶ温泉津は、1300年以上前に旅の僧侶が、湯気の立つ水たまりに浸かってひどい傷を癒しているタヌキを目にしたことから発見されたという説が広く知られています。
平安時代には京都までその存在が伝わり、14世紀以降には湯治客が大勢訪れるようになりました。
温泉津へは、JR山陰本線・温泉津駅から徒歩約15〜20分、または路線バスで約5分というアクセスです。
広島駅からは特急やくもとJR山陰本線を乗り継いで約3時間、松江駅からは特急と在来線で約1時間30分。
益田方面から車なら国道9号線から北に入ってアクセスできます。
「石見銀山」は、世界で銀が通貨の基軸となっていた大航海時代、膨大な量の銀が採掘された鉱山でした。
当時、世界に流通する銀の1/3が日本産で、その大部分を石見銀が占めていたともいわれています。
温泉津の港「沖泊(おきどまり)」は、16世紀後半に銀の積出港として栄えました。
江戸時代〜明治時代にかけては北前船の寄港地であったことから賑わい、船乗りが宿泊する旅館が数多く設けられました。
江戸・明治・大正・昭和それぞれの時代の建物が立ち並び、赤い石州瓦が印象的なこの町は、「温泉町」として全国で唯一、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。
日が暮れてオレンジ色の灯りに彩られる町並みは、古き良き日本の温泉街のイメージそのものです。
石見銀山・温泉津焼・石見神楽 世界遺産の懐を歩く

温泉津は中世から近代にかけて隆盛を誇った石見銀山で採掘された銀の輸出港でもありました。
そのため、港町は日本国内の世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」の登録を受けています。
石見銀山の坑道跡(大久保間歩など)へは温泉津から車で約20分、世界遺産の核心部・大森地区の石畳と白壁の街並みを散策できます。
温泉の湧き出す温泉津は「やきものの里」としても知られ、江戸時代から「温泉津焼」として伝わります。
日本最大級といわれる登り窯があり、年に2回春と秋の「やきもの祭り」には火入れを行い、窯出し後に即売されます。
温泉街の散策路沿いには窯元が点在しており、独特の飴色釉薬が特徴の温泉津焼を手に取りながら歩く旅が楽しめます。
絢爛豪華な衣装とダイナミックな動き、テンポが速い八調子のお囃子が心躍る伝統芸能・石見神楽。
毎週土曜の夜8時頃から、温泉津温泉街にある「龍御前神社」で夜神楽が上演されています。
温泉津や近隣地域で活躍する神楽団が、大迫力の演舞を見せてくれます。
湯上がりにゆかたで夜神楽を観る——温泉津温泉でしか味わえない、日本の旅の原型ともいえる体験です。
日本海の幸と石見の食

出典:のがわや旅館
温泉街にはのがわや旅館をはじめ小規模な宿が軒を連ね、日本海の新鮮な海の幸も温泉と合わせて堪能できます。
日本海で獲れたノドグロ(アカムツ)・ブリ・アジ・カレイなどの鮮魚が宿の食卓に並びます。
温泉街のすぐそばにある温泉津港は今もイカ・アジ釣りで釣り人が訪れる漁港で、鮮度の高い魚介は地元の鮮魚店や宿の食卓に直接届きます。
石見地方の郷土料理「あごだし」(トビウオのだし)を使った料理や、石見ポークなど地元食材を活かした素朴な旅館料理が、効能高い温泉とともに旅人の体を整えます。



