「一浴玉の肌」元祖美肌の湯【沢渡温泉】源泉かけ流し|草津の仕上げ湯として名高い群馬・中之条の秘湯


出典:まるほん旅館
2026年05月10日

この記事を書いた人

湯あがり ぽか子

温泉大好き40年のベテラン。「一湯一会」を逃さないために、常に手ぬぐいを持ち歩いています。長年の経験で、お湯を触っただけで大体の泉質がわかる特技を持ちます。温泉好きが高じて、温泉ソムリエ・温泉観光アドバイザーの資格を取得。日本の宝である「温泉文化」を皆さんにお伝えできることが喜びです!

草津温泉の強酸性の湯で荒れた肌を、この湯に浸かることで癒してきた。

群馬県吾妻郡中之条町、四万川の支流・上沢渡川沿いに十数軒の旅館が静かに湯けむりを上げる沢渡温泉は、「一浴玉の肌」と称される元祖美肌の湯です。

縄文時代にはすでに湯が湧いていたとされ、源頼朝・木曽義仲が入浴したとの伝説も残る古湯。

江戸時代には草津への道中に旅人が立ち寄り、帰りには草津の酸性泉で荒れた肌をこの湯で整える「草津のなおし湯・仕上げ湯」として広く知られてきました。

上沢渡川の谷間へ 秘湯らしさが残る小さな温泉街

出典:沢渡温泉組合(中之条町観光協会内)

沢渡温泉は、日本ロマンチック街道(上信越高原国立公園と日光国立公園を結ぶ道)沿いに静かに佇む温泉地で、旅館11軒と共同浴場1軒がコンパクトにまとまっています。

昭和20年(1945年)の大火で温泉街はほぼ壊滅状態となり、さらに新道の整備で往来が変わったことで観光地化の波から外れ、今では「秘湯」と呼ばれるようになりました。

しかしその静けさこそが魅力で、長期滞在の湯治客が今も絶えず訪れます。

宿はエコノミーな料金で家庭的なもてなしをする小ぢんまりとした旅館が中心で、料理は地元の山菜・川魚を使ったあたたかな家庭料理が主流です。

温泉街の坂の途中にある共同浴場は大人300円(宿泊者無料)で地元の人と肩を並べて浸かれる昔ながらの湯小屋で、熱めとぬるめの2槽から選べます。


四万温泉・チャツボミゴケ公園との湯めぐり

出典:群馬県

沢渡温泉は単独で訪れるもよし、周辺の名所と組み合わせるもよしの立地にあります。

車で約15分の「四万温泉」は日本国内でも屈指の名湯で、四万川の渓谷沿いに旅館が立ち並ぶ情緒ある温泉地です。

「四万ブルー」と呼ばれる四万川ダム湖の幻想的なコバルトブルーは近年SNSで人気を集めています。

また、沢渡温泉から車で約30〜40分の「チャツボミゴケ公園(六合赤岩)」は、国の特別天然記念物・チャツボミゴケが群生する幻想的な湿地帯で、翡翠色の苔が酸性の温泉水に覆われた岩肌を埋め尽くす光景は唯一無二の美しさです。

草津温泉も車で約40〜50分圏内にあり、草津で湯浴みをしてから沢渡で仕上げるという定番の湯めぐりルートが今も健在です。


蘭学者・高野長英と若山牧水 文人が愛した温泉

出典:沢渡温泉組合(中之条町観光協会内)

沢渡温泉には、著名人との縁が数多く残っています。

江戸時代後期の蘭学者・高野長英は、天保2年(1831年)に吾妻の医師たちに招かれてこの地に滞在し、沢渡温泉を拠点として吾妻に西洋医学を広めました。

その後、「蛮社の獄」で指名手配となった長英をこの地の門人たちが匿ったとも伝えられ、温泉街には長英にまつわるエピソードが複数残っています。

また旅を愛した歌人・若山牧水、詩人のサトウハチロー、十返舎一九なども沢渡温泉に足を運んだ記録があります。

作家・嵐山光三郎は「極上の泉質、ベスト5に入る。

軀を湯のなかに分解してしまうようななめらかさがある」と絶賛しており、温泉通の間での評価の高さがうかがえます。