レトロな風情を残す「渋温泉」。奈良時代から続くその歴史と楽しみ方

更新日:2022年4月21日

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ともきち

温泉が好きで、年に数回は友人や家族と国内旅行を計画し、色々な温泉地へ出かけています。温泉の中でも、濁り湯の露天風呂が特に好みです。旅先では、有名観光地や絶景スポットをひと通りまわり、地元の名物料理やお菓子の食べ歩きも欠かしません。旅好きならではの視点で、温泉地の情報や温泉にまつわる知識など、魅力あふれる記事をお届けします。

長野県にある「湯田中渋(ゆだなかしぶ)温泉郷」にある「渋温泉」は、ノスタルジックな情緒あふれる石畳の温泉地です。温泉郷内の共同浴場の数は、大分県の「別府温泉」に次ぐ国内第2位の軒数を誇り、9つの共同浴場の湯めぐりが人気を集めています。今回は、始まりが奈良時代に遡ると言われる、渋温泉の歴史、そして、ぜひ訪れたい観光スポットをご紹介します。

新型コロナの影響により、各施設の営業状況は変更の可能性があります。詳細は公式HPをご確認ください。らくらく湯旅では引き続き読んで楽しめる温泉情報を発信していきます。

渋温泉とはどんな温泉?

渋温泉はどんな魅力を持つ温泉地なのでしょうか?

早速、渋温泉の魅力に迫ります。

レトロな街並みに魅了される渋温泉街

渋温泉の大きな魅力は、石畳の細い路地の両脇に木造の温泉宿や食事処、土産物屋、昔懐かしい遊び場が軒を連ねるレトロな街並みです。

小道を散策しながらめぐる外湯は情緒たっぷり。

また、武田信玄にゆかりのある「横湯山温泉寺」やスノーモンキーに出合える「地獄谷野猿公苑」などの観光スポットも見逃せません。

すべての宿で天然かけ流しの温泉に浸かれる!渋温泉の湯

渋温泉の源泉は約40ヶ所もあり、それぞれの源泉が温泉宿や共同浴場に引き込まれているため、宿や浴場の泉質や効能はさまざまです。

すべての宿で天然かけ流しの温泉に浸かれ、また、渋温泉の宿泊者には、無料で外湯(共同浴場)の鍵が貸し出され、苦(九)労を流すと謂われる「九つの外湯めぐり」を楽しむことができます。

「巡浴祈願手拭い」という手拭いにスタンプを押しながらめぐり、9つ集めたら最後は、九番湯の前にある渋薬師庵(しぶやくしあん)に参拝し、満願成就を願います。

渋温泉と湯田中温泉の違い

湯田中温泉も渋温泉と同じく湯田中渋温泉郷の一つです。

渋温泉と隣あっていますが、駅に近い湯田中温泉には近代的な宿も多く渋温泉に比べて都会的な雰囲気があります。

また、渋温泉の湯の色は、白濁・褐色・無色透明などさまざまで、一方の湯田中温泉は透明な湯が中心です。

ちなみに、渋温泉の外湯めぐりは、渋温泉に宿泊した場合にしか利用できません(1ヶ所を除く)。

一方、湯田中温泉には、湯田中温泉の宿泊者だけが利用できる共同浴場が多数あります。

渋温泉の歴史とあゆみ

渋温泉の始まり

渋温泉には、非常に古い歴史があり、およそ1,300年前の奈良時代に仏教僧の行基菩薩(ぎょうきぼさつ)が全国行脚の際に発見したのが始まりとされます。

行基は渋温泉の地が霊泉だと悟ると、自ら薬師如来(やくしにょらい)像を彫刻し守護神として安置したと伝えられています。

行基が発見した源泉は、現在は「九番湯 大湯」となっていますが、幾度となく高台から土砂が流れ込んだため、それをかき出し源泉を守るという繰り返しにより、現在の「九番湯 大湯」は半地下のような作りになっていて、上(地上)には足湯があります(無料)。

鎌倉時代から戦国時代

京都の東福寺や南禅寺の住職を鎌倉時代後期から南北朝時代にかけ歴任した高僧の虎関師練(こかんしれん)が、渋温泉の地に温泉寺を建て、渋温泉と臨済宗(りんざいしゅう)を広めました。

戦国時代には、温泉寺を庇護(ひご)した武田信玄が渋温泉を開発させ、永禄4年(1561年)の川中島の戦いで負傷した家臣達を養生させました。この事から渋温泉は、「信玄の隠し湯」とも言われました。

江戸時代

渋温泉は、草津温泉(群馬県吾妻郡草津町)と上信濃(善光寺)を結ぶ草津街道の宿駅として、湯治客だけでなく旅人や物資の運搬者など多くの人々が利用するようになりました。

江戸時代後期には、さらに大きく発展し、飯盛女(めしもりおんな:宿場に存在した私娼)も認められました。

兵学者・朱子学者・思想家の佐久間象山(しょうざん)、俳人の小林一茶、浮世絵師の葛飾北斎などの文人もこの地を訪れています。

明治以降から現代まで

明治を過ぎると渋温泉の外湯めぐりが有名となり、小説家田山花袋(かたい)も渋温泉を訪れています。ちなみに、田山花袋は、著書である「温泉めぐり」では「信州の渋温泉は渋のようにベタベタする」と評しました。

さらに、歌人若山牧水(ぼくすい)、小説家夏目漱石など文人墨客(ぼっきゃく)も数多く湯治で訪れました。

渋温泉は行楽的な大きな開発がなかったため、今でも細い路地のような石畳の道に木造の温泉宿が軒を連ねたレトロな温泉街の風情を残しています。

歴史を感じる!渋温泉のおすすめ観光スポット9選

1. 昔ながらの情緒たたずむ温泉街の散策

渋温泉は、夜間瀬川(よませがわ)支流・横湯川(よこゆがわ)沿いに木造3層から4層建ての旅館が建ち並び、懐かしい格子窓や土壁があったり、廊下の欄干が張り出していたりと、昔ながらの情緒が佇む温泉街として知られています。

石畳を外湯めぐりの下駄を鳴らして散策するには、これ以上の風情はない温泉街の姿を残しています。

小道の両脇には、昔懐かしい射的場や無料の卓球場、地元の民話を集めた紙芝居のギャラリーなども並びます。

情緒あふれる温泉街の夜のそぞろ歩きもおすすめ。

次に紹介する「金具屋」をはじめとする旅館のライトアップされた姿は昼間とはまた違う魅力がたっぷりです。

外湯は22時まで、土産物屋や射的屋は21時過ぎまで開いているので、夜も時間を持て余すことなく楽しめます。

2. 千と千尋の神隠しのモデルと言われている宿「金具屋」

提供:金具屋

「金具屋(かなぐや)」は、宝暦8年(1758年)創業という長い歴史を持つ、由緒ある温泉宿。

江戸時代から地域の方々の心身を整える療養、遊興のために営業していました。

昭和初期からは交通手段の発展により観光客が増えましたが、太平洋戦争の最中には疎開の目的で、戦後は療養目的で、時代ごとに多くの方が訪れてきた歴史があります。

提供:金具屋

昭和4年(1929年)に建てられた「金具屋」の旧臨仙閣(りんせんかく)本館や旧臨仙閣浴堂、昭和11年(1936年)に建てられた斉月楼(さいげつろう)と大広間は、優れた温泉旅館建築が認められ、国指定有形登録文化財に指定されています。

宿泊客は毎日17時半から、金具屋の最大の魅力である建築や源泉、歴史的な話を聞ける「金具屋文化財巡り」に参加できます。

「金具屋」は、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」に出てくる湯屋のモデルとも言われている場所です。

<施設詳細>
・施設名:金具屋
・住所:長野県下高井郡山ノ内町平穏2202
・電話番号:0269-33-3131
・宿泊料金(1泊2食、2名利用時):17,600円〜